レクサス GS F、最強ハイパフォーマンスセダン

国内最強のプレミアムセダン、レクサス「GS F」。477psの5リッターV8エンジンを搭載するこのクルマは、レクサススポーツの頂点に位置するモデルで「RC F」と並ぶ、レクサス最強モデルといえる。国内のセダンとしては走行性能が高く、高価なハイパフォーマスセダンだ。サーキットでガチに鍛え上げられた性能は、日常においていかがなものかレポートしよう。

自動車メーカーは、遠くからひと目見ただけでどのブランドかを識別できるデザインを目指す。ドイツのプレミアムブランドは、昔からそのことに心を砕いてきた。例えばメルセデス・ベンツやBMWはどのモデルを見ても、ひと目でそれとわかる。対して日本メーカーは、昔ほどではないにせよ、統一性のないデザインのおかげで近づいてエンブレムを見ないとどのブランドかわからないことが多い。

ただし、外国のブランドと競合するレクサスは、早くから統一性のあるデザインの重要性に気づき、ハッチバックのCTからフルサイズSUVのLXまで、スピンドルグリルと、先鋭なヘッドランプユニットといった大胆なデザインを共通して採用してきた。そのかいあって、遠くから見ても、メルセデス・ベンツでもBMWでもアウディでもなく、レクサスだと識別することができる。

レクサスはいち早くハイブリッド・テクノロジーを投入したプレミアムブランドだが、ハイブリッド一本足打法のブランドと思われたくないのか、これまでにスポーティなモデルを多数投入してきた。その中でも特別なモデルには、車名の末尾に「F」を付け、ほかと差別化した(LFAは特別)。現在ラインナップされている“F”モデルは2ドアクーペのRC Fと4ドアサルーンのGS Fの2種。今回はGS Fに試乗した。

乱暴に言ってしまえば、GS Fは通常3.5リッターV6エンジンや2.5リッター直4エンジン、あるいはそれらとバッテリーおよびモーターを付け加えたハイブリッドシステムを搭載するモデルに、5リッターV8エンジンを搭載した最上級のGSだ。近頃はこのクラスのプレミアムモデルは4リッター前後の過給器(ターボチャージャーやスーパーチャージャー)付きエンジンが搭載されることがほとんどだが、レクサスは高回転まで回る大排気量V8の自然吸気エンジンを、2007年登場のIS F以来、こだわりをもって使い続けている。

パフォーマンスモデルだからといって、これみよがしのエアロパーツが装着されるようなことはないが、フロントフェンダーに開けられたエアアウトレットや4連テールパイプ、それに専用デザインのバケットレザーシートなど、見る人が見れば“タダモノ”ではないとわかるディテールが散りばめられている。この控えめな主張が、格別なクラス感を与えてくれる。

他ブランドが過給器付きエンジンを選ぶのは、現在の技術ではそのほうが燃費に有利であると同時にパワーも得やすいからだ。レクサスは絶対的なパワーよりもドライバーが感じる心地よさを重視した。レクサスは「『サウンド』『レスポンス』『伸び感』を重視した」と表現している。

実際、GS Fのエンジンサウンドは、高回転に達すれば達するほど澄んだ官能的な音となってドライバーに「もっと(エンジンを)回せ」「もっと(アクセルペダルを深く)踏め」と訴えかけてくる。エンジンが発する原音だけでなく、調整音をスピーカーから発することで官能性を高めている。そう、まさに感覚器官を刺激してくれるのだ。また、ほとんどの過給器付きエンジンよりレスポンシブであることも間違いない。アクセルを踏むことでドライバーの意志を伝えると、即座に挙動となって現れる。伸び感もそうだ。過給器付きエンジンは低回転から強大なトルクを発する代わりに頭打ちになるのも早いのに対し、GS Fの自然吸気エンジンは、7100rpmに至るまで、回すほどにパワーが上積みされる。

その自然吸気エンジンが生みだす官能性を心ゆくまで楽しめるよう、ボディや足まわりにも手が加えられている。ボディにはサーキット走行でも音を上げることのないよう、スポット増し打ち(溶接ポイントを増やすこと)や構造用接着剤を併用するなど、剛性を高める工夫がなされている。その剛性感はわざわざサーキットまで行かずとも、街中での日常的な走行でも十分に感じることができる。足まわりはノーマルのGSよりは明確に硬いが、快適性とのバランスが考慮されている。

街中をゆっくり走らせた時、高速道路をハイペースで走らせた時、それにワインディングロードをキビキビと走らせた時……。GS Fは場面に応じて快適でジェントルなサルーンのように走らせることも、刺激的なスポーツカーのように走らせることもできる。二面性、いや多面性をもったクルマなのである。その変貌具合がドライブする者を飽きさせず、またそれは紳士的かつ攻める男としてのゴルファーの魅力として表れるのだ。

ゴルフ場のクルマ寄せに停め、キャディバッグ(4個は入るであろうサイズが確保されているのがうれしい)を下ろすついでに、少し離れて眺めてみた。高温で青白く光る炎をイメージしたヒートブルーに塗装されたGS Fは、色も形も派手な存在のはずだが、シックな日本建築のクラブハウスにも不思議とマッチしていたので、“あぁ、やっぱりレクサスは日本のプレミアムなんだな”と妙に納得してしまった。そう、日本にも世界に通用するプレミアムブランドが、ここにまごうことなく存在するのである。レクサス GS Fに乗るという選択肢は、ゴルファーのクラス感を確実に高めてくれるのだ。

  • レクサス GS F
    車両本体価格:11,000,000円(税込)

    • ボディサイズ|全長4,915×全幅1,855×全高1,440mm
    • ホイールベース|2,850mm
    • エンジン|5リッター V型8気筒DOHC 無鉛プレミアムガソリン
    • 排気量|4.968cc
    • 最高出力|477ps(351kW)/7,100rpm
    • 最大トルク|54.0kg・m(530N・m)/4,800~5,600rpm

    bruder.golfdigest.co.jp

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    • レクサスインフォメーションデスクフリーダイヤル:0800-500-5577http://lexus.jp/
     
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