ドイツ・ニュルブルクリンク7分38秒、新型ポルシェ パナメーラターボの実力

速さ自慢のクルマがタイムを競うドイツ・ニュルブルクリンク北コース。一般的に1周8分を切れば相当なハイパフォーマンスカーの部類に入るなか、新型ポルシェ・パナメーラターボは7分38秒という記録を打ち立てた。ノーマルの911よりも速いタイムだ。一級の速さを備えたパナメーラは、速さ以外のサルーンとしての実力はどうなのか? 実際に走らせてチェックした。

長らく“ポルシェといえば911(だけ)”という時代が続いたが、気付けばスポーツカーの911、718、SUVのカイエン、マカン、そしてサルーンのパナメーラと、実に多くのモデルをラインナップするようになった。さすがにミニバンをラインナップすることはないだろうが、もうスポーツカー以外のポルシェが出てきても驚くことはなくなった。今回取り上げるのは、7年ぶりにモデルチェンジして2代目となったパナメーラ。試乗したのはハイパフォーマンスモデルのターボだ。

初代パナメーラは4ドアのフルサイズサルーン(正確には5ドアハッチバック)として2009年に登場した。長年、このカテゴリーはメルセデス・ベンツSクラスとBMW7シリーズが市場を牛耳り、そこへ割って入ろうとするアウディ、ジャガー、マセラティ、キャデラック、レクサス……という図式だが、ポルシェもパナメーラで参入したというわけだ。新型は、VWグループが高級車(エンジン縦置きモデル)用に新たに開発したMSB(モジュラースタンダードドライブトレーンプラットフォーム)を用いてつくられる。MSBは今後、アウディやベントレーなどにも活用される。

新型は、先代の面影を残すものの、ところどころ現代性を帯びたスタイリングになった。ポルシェが「フライライン」と呼ぶ、ルーフが後ろへいくにしたがって緩やかに下がっていく特徴は継承されている。全長5049mm、全幅1937mm、全高1423mmとサイズは先代とほぼ変わらない。前後タイヤ間の距離を指すホイールベースが30mm伸びて2950mmとなったのと、ルーフの頂点の位置が先代よりもわずかにリア寄りになったのは、ともに室内空間拡大、特に後席の空間を拡大するため。911の後席が狭くても文句を言う人はいないが、サルーンのパナメーラには4人が快適に過ごすことができる空間が求められる。

渡されたキーをポケットに入れて乗り込む。ポルシェのシートはつくりが華奢に見えるが、試しにわざと背中を強く背もたれへ押し付けてみてもクッションの範囲でしか動かないほど剛性が高い。シートの剛性が高いとドライバーは安心感に包まれる。運転席まわりは一気にモダンになった。センターパネルには横長のディスプレイが埋め込まれ、カーナビはもちろん、オーディオや車両の設定などを表示させることができる。AppleカープレイやAndroidオートにも対応している。ATセレクターの周囲のピアノブラックの加飾パーツは、それ自体がさまざまな機能を操作するためのパネルでもある。使いやすいか? ……慣れれば大丈夫と報告しておこう。

レバーをひねってエンジンを始動する。ハイパフォーマンスカーらしい低いエンジンサウンドが響くのかと思いきや、アイドリング時にはほとんどエンジン音は聞こえない。搭載されるのは新開発の4リッターV8ターボエンジンで、最高出力550ps/5750-6000rpm、最大トルク770Nm/1960-4500rpm。8速ATとの組み合わせ。派手なスペックとは裏腹に街中をゆっくりと走らせる限り、非常にスムーズで静かだ。多段のATは激しく変速を繰り返すが、ショックを感じないので煩わしさはない。ちなみに、このエンジンは低負荷時には8気筒のうちの4気筒が休止し、燃費を稼ぐ。

高速道路へ。ETCゲートを通過し、周囲に車両がいないのを確認し、アクセルを強く踏み込む。即座に身体がシートに押し付けられる。航空機の離陸時のような加速だ。回転の上昇に伴いエンジン音は高まるが、それでも音量は控えめ。もう少し迫力ある音を車内に響かせてほしい気がしないでもないが、パナメーラは911とは違ってサルーンなので、静粛性を優先させているのだろう。

今回は都心の一般道と首都高での試乗だったので、シャシー性能を確かめることはできなかったが、その点は昨秋ミュンヘン郊外の山道とアウトバーンで確認済みだ。パナメーラターボはいつなんどきも車体の安定性を損なわない。その高い安定性は、彼らが「4Dシャシーコントロール」と呼ぶ足まわりの電子制御システムによるところが大きい。リアアクスルステアリング(後輪操舵システム)、エアサス、PDCCスポーツ(ロール抑制システム)、PTVプラス(コーナーで外側の車輪により多くのパワーを配分することで曲がりやすくするトルクベクトリングシステム)、そして4WDシステムを統合制御し、コーナリング性能を高めている。フロント275/35ZR21、リア315/30ZR21の極太タイヤが装着されているわりに乗り心地がよいのは、エアサスの仕事によるものだろう。

新型には随所にハイテクが散りばめられている。例えば、ヘッドランプユニット内に計109のLEDが備わる。そのうちの84がナビゲーションやフロントカメラからの情報などをもとに、独立して照射量や照射方向を変化させ、対向車や先行車を眩惑することなくハイビームを保つ。また普段格納されているリアスポイラーは、スピードが上がるとせり出してくるのだが、途中で2分割され、それぞれが両端へ移動し、最終的にその下にあった部分とツライチになって大きな1枚のウイングとなる。このモビルスーツのような動きを見せるだけで、後続車はきっと戦意を喪失するはずだ!? 

最後にラゲッジスペースについて。開口部の大きなリアハッチを開ければ容量500リッターの広大なスペースが広がる。リアシートバックを倒せば1300リッターに。ワゴンのように使えるのは5ドアハッチの強みだ。言ってみれば、パナメーラターボはゴルファーズ911ターボなのかもしれない。

Porsche Panamera Turbo
車両本体価格:23,770,000円(税込)

  • ボディサイズ|全長5,049 ×全幅1,937×全高1,423mm
  • ホイールベース|2,950mm
  • エンジン|4リッターV8ターボエンジン
  • 排気量|3,996cc
  • 最高出力|550ps(404kW)/ 5,750-6,000rpm
  • 最大トルク|770 N・m / 1,960-4,500rpm
  • Text : Satoshi SHIOMI
  • Photographer : Koichi Shinohara
  • Golf Course : Grandfields County Club

bruder.golfdigest.co.jp

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問い合わせ先

ポルシェ・ジャパン
フリーダイヤル:0120-846-911http://www.porsche.com/japan/jp/models/panamera/

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