2021年にフルモデルチェンジをしたメルセデス・ベンツのCクラスに、“ワイルド”な個性を持つ「C220d 4MATICオールテレイン」が加わった。ステーションワゴンの車高を少し高めてロードクリアランスを確保し、バンパーやホイールアーチ、サイドシルガードを無塗装の黒い樹脂パーツで覆いクロスオーバーとして仕立て直す。この手のリフトアップモデルの人気に火をつけたのはボルボ「XC70」が最初だろう。アウディなら「オールロードクワトロ」。メルセデスからは、17年にEクラス「オールテレイン」が登場した。
今回のCクラス オールテレインを車名から読み解くと、2.0リッターの直列4気筒ディーゼルを搭載し、駆動はAWD(全輪駆動)。全てのモデルの電動化を宣言している現行Cクラスなので、もちろん48Vのマイルドハイブリッド(MHEV)システムが盛り込まれている。
Cクラス初のクロスオーバー仕様となるオールテレイン化に、どんなメリットがあるのか。まず見た目の部分は、ステアリングを握るオーナーを若く見せる効果があるように思う。というのもSUVが幅を利かせる昨今にあって、素のCクラスは落ち着きすぎている印象があるからだ。
そこでモノをいうのが、オールテレインの象徴ともいえる黒いホイールアーチだ。アウトドア、週末感、アクティブといったオーナー像を匂わせてくれる。また、メルセデスのSUVシリーズに共通するシングルルーバーのフロントグリル、バンパー下に装着されたアンダーライドガードも、普通のCクラスとは違うワイルドな雰囲気を強調してくれる。
オールテレインには物理的なメリットもある。専用の18インチタイヤ&ホイールと、サスペンションの設定変更で車高が4センチ高められているため、乗り降りや荷物の積み下ろしが楽になるし、コックピットからの視界もいくぶん広くなる。車高が上がったことで、不整地を走行する際の前後バンパーに接触しない最大角度も増している。たかが4センチと思うかもしれないが、深いワダチがある林道で車体下を擦るか擦らずに済むかの境目が、このわずかな違いにある。
またオフロード寄りのキャラクターの仕上げとして、ドライビングモードに「オフロード」と「オフロード+」という2つのモードが追加されている。オフロード走行はしなくても雪道は走るというオーナーにとって、オフロード+ではヒルディセントコントロール(下り坂を安定して下ることができる)も含まれるので頼もしい。
センターモニターに車体の前後左右の傾きをリアルタイムで表示できる機能もオールテレインの専用となっている。Eクラス オールテレインのようにエアサスペンションで車高を上げることはできないが、それでも今回のオールテレインは近ごろ多い“なんちゃってクロスオーバー”とは一線を画す本格派なのである。
実際にステアリングを握ってみると、完成度の高さに驚かされる。2.0リッター、ディーゼルのMHEVユニットは、ディーゼルであることやハイブリッドであることを忘れるくらいに静かで滑らかでありながら、とにかくパワフル。動力性能への不満はまったくない。
一方、フワッと優しい乗り心地や、思いのほかシャープなコーナリングに関して、4センチ高められた車高による普通のCクラスとの違いはほとんど感じられなかった。ストローク感がちゃんと確保されているのだが、腰高でフラつくような感じはしなかった。
忘れてはならないのが、これらオールテレインの頼もしい性能やスタイリングは、新型Cクラスという完成度が高いフォーマットの上に成立している点である。メルセデスのフラッグシップであるSクラスに匹敵する進化を遂げた新型Cクラスは、第2世代のMBUX(音声認識)やレーダーセーフティ、360度カメラシステム、ARナビゲーションといったメルセデスが誇る最新機能を満載している。ACC(前車追従走行支援)のレベルもトップクラスだ。
オールテレインのワイルドな見た目さえ気にならなければ、何も悩むことはない仕上がりといえるだろう。
メルセデス・ベンツ C220d 4MATICオールテレイン 車両本体価格: 7,960,000円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4760 X 全幅 1840 X 全高 1495 mm
- ホイールベース | 2865 mm
- 車両重量 | 1870 Kg
- エンジン | 直4ディーゼルターボ+48V MHEV
- 排気量 | 1992 cc
- 変速機 | 9速 AT
- 最高出力 | 200 ps(147 kW) / 3600 rpm
- 最大トルク | 440 N・m / 1800 - 2800 rpm
- Text : Takuo Yoshida
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