2020年11月、レクサス「IS」がマイナーチェンジした。13年にデビューした初代から数えて3世代目。間もなく“8歳”となるわけで、通常ならフルモデルチェンジを受けてもまったくおかしくないタイミングなのに、なぜISはマイナーチェンジを選んだのか。最新モデルに試乗すると、その理由が見えてきた。
新しいレクサス ISを見ると、従来型より明らかに彫りの深い造形になっている。Dセグメント(全長約:4600 ~4800 mm)に位置する、メルセデス・ベンツ「C クラス」やアウディ「A4」といった強豪と戦うにはただ美しいだけでなく、ライバルと差別化する明らかな個性が必要だ。
その点ISは、マイナーチェンジでありがちな、ちょこちょこっと顔をイジったレベルではなく、全体のフォルムがシャープでモダンになっている。特許出願中という世界初のプレス工法まで用いて、手が加えられた新型の造形。フェンダー、あるいはリアビュー、ヘッドランプまわりなど、従来型の面影を残しつつ、2021年にふさわしい現代的な外観になっている。このカッコウならDセグメントで戦える!
走り出すと感心させられるのが、2.5リッターの直列4気筒エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムが提供する心地よい加速だ。力強いだけでなく、アクセル開度に対しリニアに反応するから、自分の足でコントロールしている実感が得られる。これは、クルマを操る楽しさやパワートレーンのプレミアム感に直結する。
どこかドライバーと距離を感じた従来型から、身体の一部になったかのようなフィット感に変わった理由は、エンジンとモーターの連携や、加速時のエンジンノイズの低減など、微妙なチューニングによるものだと思われる。ガラッと変えるのではなく、コツコツと積み上げることで生まれる進化も存在するのだ。パワートレーン以上に驚くのが、サスペンションションがよく動く足まわり。突起状の障害物を乗り越えた瞬間にショックを上手に吸収してくれて、乗り越えた後の上下方向の揺れもシュッと収まる。
従来型より繊細に感じる乗り心地をもたらしているのは、パワートレーンと同じく微妙なセッティングを見直したことにある。ホイールにボルト締め方式のハブを採用したことも、大きな効果を生んでいるひとつだ。ボルト締め方式のハブには、締結剛性が高まるうえに、バネ下重量が軽くなる利点があり、乗り心地や運動性能の向上に大きく貢献している。一方で、既存のホイールとの互換性がなくなり、組付け工程の作業負荷が大きくなるデメリットも存在する。両者を天秤にかけた結果が、バネ下を軽くして乗り味を向上させることだった。
といったように、レクサス IS は細かな変更を重ねてリファインされたが、フルモデルチェンジのほうがコストや時間的にも容易だった部分もあると思う。正直な話、SUV全盛のいま、小型プレミアムFR車用のプラットフォームで新規開発することが難しいという理由が根底にあるかもしれない。
それでも、スクラップ&ビルトでゼロからやり直すのではなく、既存のモデルを熟成させる手法に可能性を感じた。これまでの資産を活用しながら前に進むことは、ある意味でいまの時代を反映した開発手法なのかもしれない。
レクサス IS 300h(2WD)
車両本体価格:5,260,000円(税込)
- ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
- ※価格には保険料、税金(消費税除く)、自動車リサイクル料金、その他登録等に伴う費用等は含まれておりません。
- ボディサイズ | 全長 4710 X 全幅 1840 X 全高 1440 mm
- ホイールベース | 2800 mm
- 車両重量 | 1690 Kg
- エンジン | 直列4気筒ハイブリッドシステム
- 排気量 | 2493 cc
- 最高出力 | 178 ps(131 kW)/ 6000 rpm
- 最大トルク | 221 N・m / 4200-4800 rpm
- モーター最高出力 | 143 ps(105 kW)
- モーター最大トルク | 300 N・m
- システム総合出力 | 220 ps(162 kW)
- Text : Takeshi Sato
お問い合わせ先
-
レクサスインフォメーションデスクフリーダイヤル:0800-500-5577
lexus.jp/models/is/