BMWの特徴が、切れ味の鋭いスポーティな走行性能にあることはみなさんご存知だろう。なかでも、“M”の肩書が与えられたモデルは特別だ。今回はBMW M340i xDriveを題材に、“M”の世界を取り上げたい。
BMW M社はモータースポーツ活動を行いながら、極限のバトルを通じて蓄積した技術力やノウハウを注入した市販のハイパフォーマンスモデル開発も手かげている。“M”の肩書を持つモデルは、大きく分けると以下の3種類となる。まずは、公道も走れる究極のレーシング・スポーツカーに位置づけられる「M モデル」で、BMW M3などが該当する。
次に、サーキットも走れる高性能スポーツカーである「M パフォーマンス」で、エンジンのパワーアップや足まわり強化がしっかり施される。3つ目が、内外装のデザインやエアロパーツ、モデルによっては足まわりにもM社の知見を反映した「M スポーツ」となる。
BMW M340i xDriveは「M パフォーマンス」に該当するモデルで、3.0リッターの直列6気筒ターボは最高出力387psを誇る。ちなみに、現行の3シリーズではいまのところ唯一の直6エンジン搭載モデルだ。
このエンジンがいい。低回転域からトルクに厚みがあり、滑らかに回転を上げる。昔からBMWの直6エンジンは、そのスムーズな回転感覚から「シルキーシックス」と呼ばれていたが、このエンジンはさらに目が詰まった上質なシルクのフィーリングをドライバーに感じさせる。
ターボエンジンは NA(自然吸気)エンジンに比べて面白みに欠けるというのがこれまでの常識だったが、この直6ターボは「トゥルルル」と楽器のような快音が高まるのと同時に、力感もスムーズにみなぎっていく。アクセル操作に対するレスポンスも俊敏で、パワフルなだけでなく、エンジン回転にドラマがある。
ある程度回転を上げていくと、かつての高性能NAエンジンとは趣を異にしたターボならではのドラマチックさでパワーが盛り上がり、エンジンの表情の変化を楽しむことができる。1800rpmから500Nmという厚いトルクを発生するスペックを見てもわかるように、低回転域からドライバビリティは優れているため、扱いにくさや気難しさを感じさせることは一切ない。BMWらしく、いかにも丁寧にチューニングされている印象。このあたりが「M パフォーマンス」の面目躍如なのだろう。
エンジンの好印象には、コンビを組む8ATも大いに貢献している。マッチングのよさは抜群で、加速がほしいときにアクセルを踏む右足に力を込めると、ちょうどよいタイミングでキックダウンしギアが落ち、望むだけの加速を手に入れることができる。変速は電光石火でありながら実にスムーズ。エンジン単体ではなく、ATも含めたパワートレーン全体が精緻で上質な印象を与えてくれる。
387psを受け止めるために足まわりはそれなりに固められていると想像していたが、乗り心地の滑らかさも特筆モノだった。快適であってほしいシチュエーションではしなやかで、高速コーナーなど踏ん張ってほしいところでは足まわりがしっかり引き締まる。荒っぽいところが一切ない、この魔法のような乗り味は、標準装備されるアダプティブサスペンションの可変ダンパーの効果と、やはりエンジンと同じく“M”の入念なチューニングの賜物だろう。フルタイム4駆システムであるxDriveが、車両を安定方向だけでなく、“曲げる”方向にもトルク配分を行っていることも見逃せないポイントだ。
試乗を終えてしみじみと感じるのが、「強力なパワー vs. 繊細なエンジンフィール」、「強靭な足まわり vs. しなやかな乗り心地」といった本来なら二律背反するものの両立だ。二兎を追う難しい仕事を丁寧にこなすことこそが“M”の真骨頂。高性能と快適性、実用性が高度にバランスのとれた、理想のスポーツセダンを余韻も含めて味わった。
BMW M340i xDrive
車両本体価格:9,870,000円(税込)
- ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
- ※価格には保険料、税金(消費税除く)、自動車リサイクル料金、その他登録等に伴う費用等は含まれておりません。
- ボディサイズ | 全長 4720 X 全幅 1825 X 全高 1445 mm
- ホイールベース | 285 mm
- 車両重量 | 1730 Kg
- エンジン | 直列6気筒 DOHC ターボ
- 排気量 | 2997 cc
- 最高出力 | 387 ps(255 kW)/ 5800 rpm
- 最大トルク | 500 N・m / 1800-5000 rpm
- 0-100km/h | 4.4 秒
- 最高速度 | 250 km/h
- Text : Takeshi Sato
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