「ゴルフを改めて考え直す」 パーリーゲイツが今“無地”をだす理由

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思いもよらなかったコロナ禍での葛藤を経て2021年春夏ウェアのデザインにたどり着いた、パーリーゲイツのディレクター兼チーフデザイナー酒井昭征さん(38)へのインタビュー。デザインに込められた熱い言葉が次々とあふれ出します。今回のウェアは「必要不可欠、必要最低限」をテーマにしたコレクション。“ゴルフを改めて考え直す”をキーに、普段はなかなか窺いしれないデザイナーの頭の中をのぞいてみましょう。(聞き手:染野つぐみ=BRUDER編集)

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―ゴルフ業界の変えていきたいと思う部分はありますか?

「良くも悪くも、やったことがない人のゴルフのイメージは、バブリー、大人のスポーツ、オジサン、お姉ちゃん、政治家、朝早い、ビール飲みながら…みたいな(笑)。でも、初めてゴルフに行ったときの整備された森の中の気持ち良さとか、仲の良い友達とはしゃげることとか、僕は本当に良いスポーツだなと思うんです。海外出張でゴルフ場に行ったときに、海外の人はゴルフをもっと気楽に、ただ楽しんでいるということを知りました。キャンプやピクニックのような、子どもや、お爺さんも孫と一緒に行くような。下手でも構わず、コースによっては芝もボウボウな感じのくだけた自由さを感じたんです。ゴルフの本来あるべき“いいもの”が、日本にもあったらいいなと思いますね。」



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―いまゴルファーやゴルフ業界に伝えたいことはありますか?

「比較的“密”にならないゴルフのブームが来ていて、景気は少し良いのかも知れませんが、この機にもう一度ゴルフというものを見返した方がいいのではないかと思います。日常で人と対面することもどんどん少なくなって、一回一回のゴルフはより貴重になったと思うんですね。『ゴルフに行くなら仲の良い人としか行きたくないな』と思った人もいるでしょう。それを忘れちゃいけないと思いますね。ゴルフブランドも今までみたいに『楽しいよね』だけではなく、もう少し考えて、ブランドとして“ゴルフの素晴らしさ”をもう一度ちゃんと伝えるべきなんじゃないかと思います。」



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「自分がこの春一番言いたいのは、“改めてゴルフについて考えたい”ということです。それを体現したのが、これまでのパーリーゲイツには珍しい、ロゴ以外は何もないベージュの無地アイテムです。パーリーゲイツとしてゴルフという枠を超え、『必要不可欠な存在でいられるために出来ることは何か』一度立ち止まって、現在を見つめ直す最中で生まれました。周囲に溶け込むベージュは、この春のトレンドでもありますが、ゴルフウェアって全身ベージュのコーディネートはあまり見かけないと思うんです。ある意味、そんなベージュのコレクションを出すことでパーリーゲイツに興味を持ってもらえる色なんじゃないかと思いました。そしてそれを機に、パーリーゲイツが発信するメッセージ“ESSENTIAL”(必要不可欠)と繋がる、ゴルフをするための必要最低限のものとして選んでもらいたい。そんな想いで作りました。」



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ニット¥33,000、スウェット¥22,000/税込

―無地のデザインに熱い思いが込められているんですね。

「変化していくライフスタイルに、パーリーゲイツらしくポジティブに前へ進むために掲げたテーマである“ESSENTIAL”。いま必要不可欠、必要最低限といえるアイテムとは何かを考え生まれたコレクションは、これまでのパーリーゲイツにはなかったものです。糸からオリジナルで作られたポリエステルのニットは本当に滑らかで、程よいストレッチが効いているので動きにストレスを感じません。スウェットは3層構造の生地によるクッション性とレーヨン混の柔らかな風合いが素材の良さを引き立てています。」



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パンツ 左¥28,600、右¥29,700/税込

「TEXBRIDという高ストレッチタイプのポリエステル糸を採用したパンツは、ほどよい肉厚で美しいシルエットをキープします。生地の持つ軽やかさとしなやかさに加え、耐風性と通気性を併せ持っています。ベージュとともにラインアップしたアイデンティティカラーのネイビーには、力強くゴルファーを応援したいという想いを込めています。」

「そして、今回のコレクションが出来た背景を元に、この春パーリーゲイツが発信するメッセージムービー“これから”というものを作りました。これまでに経験も、想像もしていなかった苦しい状況から生まれた感情を、あえて記憶に残し形にすることで、“これから”という言葉の力を信じ、次の第一歩を踏み出す糧となればいいなと思います。」



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上からキャップ¥6,820、サンバイザー¥6,600、キャップ¥7,260、キャディバッグ 手前¥63,800、奥¥68,200/全て税込

―今後のパーリーゲイツの課題や目指すところとは?

「もともとパーリーゲイツは“ゴルフ・イズ・ファッション”を掲げていました。それは当たり前として、、、僕は、誰にも追いつけない、ゴルフブランドの域を越えたもっと素晴らしいブランドにしたいと思っています。パーリーゲイツが掲げる目標は“ザ・パーリーゲイツ”。パーリーゲイツがすることはすべてパーリーゲイツみたいな考えです。伝わりますかね? それはある意味、ゴルフのすべてだと思っています。もう少し先のことを慎重に考え、本来のゴルフの素晴らしさをちゃんと伝えていく。そうすべきだなと思います。そうでないと存続していけませんからね。」



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「ゴルフブランドもいちアパレルブランドですが、いわゆる企業におけるCSR活動にはまだまだ鈍感で、遅れていると思います。パーリーゲイツでは表立ってではないですが森林活動をやっています。そうでないと業界の遅れたブランド群みたいになってしまうのではないかと思うんです。私の願いはパーリーゲイツを通じ“ゴルフっていいよね、素晴らしいよね”という部分を、全ての人に発信できればと思っています。」

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