ジャガー Fペイス、SUVとは思えないほどのスポーティな走り

今回紹介するクルマはジャガー「Fペイス」。見た目はSUVだが、挙動はSUVとは思えないほどスポーティで、ステアリングはクイック。足まわりは明らかにオンロード優先。コーナーでは外側のサスペンションがしっかりと踏ん張り、安定した姿勢のままワインディングロードを駆け抜けることができる。Fペイスは実用性を大幅に向上させたスポーティサルーンで、一台ですべてを満たすことを求められる都市部の人間にとってはありがたい存在だ。走行距離が長く経済性を重視ならディーゼルを、パフォーマンスを優先するならガソリンをオススメしたい。

先般、ジャガーFペイスでロングツーリングする機会を得た。Fペイスはこれまでスポーツカー、サルーンおよびステーションワゴンのみをつくってきたジャガーが初めて開発したSUVだ。ただ、初めてとはいうものの、ジャガーは現在SUV専業メーカーのランドローバーと同じグループに属する。このため、グループ内にSUVのノウハウはイヤというほどあるはずなのだ。問題は、人気のSUVをラインナップすることで、利益は上がるだろうが、ジャガーの創業以来のスポーティなブランドイメージが曖昧になってしまう可能性があることだ。ジャガー・ランドローバーがジャガー・ブランドでSUVを出す意味があるのか……。2013年秋にコンセプトカーのC-X17が出てから、ちょうど2年後の15年秋にFペイスという車名の市販バージョンが発表されるまで、じつに多くのジャガーファンがやきもきしながら注視していた。
日本で発売されたのは16年の初め。実際に見たFペイスは想像するより少しコンパクトだった。全長4740mm、全幅1935mm、全高1665mmというサイズは、日本車でいうと、マツダCX-5よりもひとまわり大きく、レクサスRXとほぼ同じ大きさ。これよりも大きいと、迫力は増し、荷物はたくさん入るかもしれないが、狭い道路などでの運転に気を使うようになる。Fペイスのサイズは見た目の迫力と運転しやすさがバランスされたちょうどよいサイズといっていいだろう。

切れ長のヘッドランプに大きなメッシュのラジエターグリルの組み合わせは、ジャガーのサルーン各モデルとファミリーであることを強く意識させるデザインだ。このアイコン的フロントマスクをひと目見れば、だれでもジャガーと気付くだろう。リアコンビランプのデザインも他のモデルに似ている。そしてSUVとしてはショルダーラインが高く、その分ウインドウグラフィック(サイドウインドウの面積)が小さい。端的に言えば、ジャガーのサルーンがそのまま背だけ高くなったようなデザインだ。

Fペイスには3種類のパワートレーンが設定される。ガソリンエンジンが2種類。どちらも同じ3リッターV6スーパーチャージャーだが、チューニングが異なり、最高出力が340psのバージョンと380psのバージョンがある。それから2リッター直4ターボのディーゼルエンジンがあり、こちらは最高出力180ps。今回試乗したのは340psバージョンのガソリンV6エンジンを搭載したR。849万円のグレードだ。

外観のみならず、インテリアのデザインもジャガーのサルーンに似ている。Fペイスはサイズとしてはひとまわり大きいレンジローバー・スポーツと基本骨格を共有する。最も近いのは今春発表されたばかりのレンジローバー・ヴェラールで、メカニズムの面では兄弟車といえる。だが、見た目上は内外装ともにまったく共通点はなく、丁寧に、完全に、ジャガーとしてつくり分けられているのだ。

では走りはどうかというと、乗ってすぐに見た目以上にレンジローバー・スポーツとの違いが鮮明に感じられる。レンジローバー・スポーツは見た目がSUVで挙動もまさにSUVのそれだが、Fペイスは見た目こそSUVだが、挙動はSUVとは思えないほどすこぶるスポーティだ。ステアリングはクイックで、交差点を曲がっただけでキビキビとした動きを感じ取ることができる。レンジローバーが悪路を重視して当たりのソフトな足まわりになっているのに対し、Fペイスの足まわりは明らかにオンロード優先で硬め。コーナーでは外側のサスペンションがしっかりと踏ん張り、安定した姿勢のままワインディングロードを駆け抜けることができる。前後重量配分がほぼ50:50で、必要に応じて内輪のみにブレーキをかけて回頭性を増すトルクベクタリング・システムが備わるなど、スポーティなハンドリングを実現するためにさまざまな対策が施されている。

アイドリング時のエンジン音は非常に静かだが、高速道路でアクセルペダルを深く踏み込んでみると、レスポンシブにクォーンと澄んだ音を響かせた。それと同時に、背中がシートバックを押し付けられるほどの力強い加速を味わうことができる。スーパーチャージャーはターボチャージャーよりも反応遅れが少ないとされる過給器で、ジャガーは昔からターボよりもスーパーチャージャーを好んで用いる。最高出力340psという絶対値はスポーツカーとしても第一級のスペックを誇る。1980kgと決して軽くはない車重をものともせず、どの回転域からでも鋭い加速を見せじつに爽快だ。

オンロード重視と書いたばかりだが、電子制御技術を駆使した4WD技術のおかげで悪路走破性も決して低くない。4WDの前後トルク配分は通常90%がリアに配分されるが、リアのスリップを検知すると(実際にはクルマがスリップを予測し、スリップする前に)フロントにもトルクが配分され、トラクションが確保される。また、ジャガーが「オール・サーフェイス・プログレス・コントロール」と呼ぶ、悪路で使える低速専用のクルーズコントロールが備わるため、ドライバーは悪路でアクセル&ブレーキ操作から解放され、ステアリング操作だけに集中できる。

ゴルファーにとって気になるラゲッジスペースについてだが、容量は508リッターとこのクラスとして標準的。形状は凹凸が少なくスクエアで、スーツケースを4個積むような用途に最適だ。ただしラゲッジ手前、向かって左部分にえぐれた部分があり、そこを利用すればキャディバッグ1個を真横に入れることができる。もちろん、その上に斜めに積み重ねれば2個、コンパクトなバッグなら3個を積載することも可能だ。さらに40:20:40の分割可倒式リアシートを活用すれば4個積み込むこともできる。これはゴルファーにとってはありがたい。

300km以上を走らせてみた感想は、Fペイスは実用性を大幅に向上させたスポーティサルーンだということだ。SUVを選んでもスポーティな走りを諦める必要がないのは、一台ですべてを満たすことを求めるアーバンBRUDER男にとってはありがたい。もちろん、スポーティなだけでなく、乗り心地や装備の面でロングクルージングがまったく苦にならないだけの快適性も備わる。設定速度の範囲内でシステムが先行車との距離を一定に保ってくれるACCを使えば、格段に疲労を減らすことができる。走行距離が長く経済性を重視する人にはディーゼルを、パフォーマンスを優先する人にはガソリンの選択がいいだろう。ジャガー・ランドローバーグループにおいて、ここまで完璧に性格を分けられるのなら、ランドローバーとは別にわざわざジャガー・ブランドでSUVをラインナップする意味が十分にあるのである。まさに羊の皮を被ったオオカミのごとく、SUVでありつつスポーツカー。このチョイスこそ、一味違うゴルファーであることを印象づけてくれる。

JAGUAR F PACE 35t R SPORT
車両本体価格:8,490,000円(税込)

  • ボディサイズ|全長4,740×全幅1,935×全高1,665mm
  • ホイールベース|2,875mm
  • エンジン|3.0 リッター V6 スーパーチャージド ガソリンエンジン
  • 排気量|2,994cc
  • 最高出力|340ps(250kW)/ 6,500rpm
  • 最大トルク|45.9kg・m(450N・m)/ 3,500rpm

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