使い勝手がさらに向上　すべてのニーズに応えるフォルクスワーゲン「パサートオールトラック」

市街地走行からグランドツーリングまで、何でもこなすという条件でクルマを選ぶとしたら、フォルクスワーゲン「パサートオールトラック」が最有力候補かもしれない。今回は、2021年にマイナーチェンジをした新型モデルに試乗し、その万能性を紹介する。

まずパサートオールトラックは、ステーションワゴンである「パサートヴァリアント」をベースに、足まわりとタイヤを変更することで25mmほど全高を上げたモデルだ。ワゴンとSUVのいいとこ取りをした、クロスオーバーと呼ばれるタイプ。車体床下の最低地上高も高くなっているから、雪道など悪路の走破性も向上している。

パワートレーンと駆動方式は、2.0リッターのディーゼルターボエンジンとフルタイム4輪駆動（4MOTION）の組み合わせのみ。ベーシックタイプの「TDI 4MOTION」と、アラウンドビューモニターや駐車支援システムが備わる「TDI 4MOTION Advance」の2つのグレードを用意する。

エンジンを始動して走り出すと、市街地での走行感覚が以前よりもスムーズになっていることがわかる。というのも、従来型のトランスミッションが6速DSG（デュアルクラッチトランスミッション）だったのに対し、マイナーチェンジで7速DSGに多段化されたからだ。

トランスミッションの多段化が、具体的にどのような効果を生むのか？エンジンパワーを6つよりも7つのギアに振り分けたほうが、きめ細やかに制御できる。たとえば1速から2速にシフトアップした時に、エンジン回転数の変化が小さくなることで、より滑らかな走行感覚を生み出せる。

従来型パサートオールトラックのトランスミッションは、もともと高速巡航に適した滑らかで静かなセッティングだったけれど、マイナーチェンジによって市街地でも楽しく、快適に走ることができるようになった。そこに加えて、安全運転支援装置が大幅に進化した。

車線を維持しながら前のクルマに自動で追従するACC（アダプティブクルーズコントロール）とレーンキープアシストが、これまで渋滞時の速度粋のみで連携していた「トラフィックアシスト」から、0〜210km/hの速度域で作動する「トラベルアシスト」へと移行。すべての車速でロングドライブが大幅に楽になると同時に安全性も増した。フルタイム4駆だからタイヤさえ換えれば雪道でも安心だし、もともと高かったグランドツアラーとしての能力に磨きがかかったのだ。

また、このクラスのステーションワゴンとして荷室が最大級の広さであることは、ひとめ見れば誰にでもわかるはず。加えて出っ張りや段差がないスクエアな形状なので、荷物が積みやすく、もちろんゴルフにも好適だ。細かいところではあるけれど、マイナーチェンジによって空調やカーナビのインターフェイスも向上している。

「だったらSUVでも？」という声があるかもしれないが、ポイントはSUVに比べて低めに設計された1535mmという全高にある。一般的には1550mmが上限のタワーパーキングが多いため、都市部のどこにでもパッと停められる利便性を考えると、この背の低さが意外と役に立つ。街中からアクティビティ目的の遠出まで、すべてを高レベルでこなせるのがこのクルマなのだ。