ポルシェ「カイエン ターボGT」は驚異的なスペックの持ち主だ。4.0リッター・ V8ツインターボエンジンはスポーツエグゾーストシステムが追加され、最高出力はベースの「カイエン ターボ」より90ps増しの640ps。この大きなパワーを路面に伝えるタイヤは専用開発の「ピレリPゼロ」で、22インチが標準装備されている。
<関連記事>ポルシェ創業者の理想形がここに!シャシーも入念にアップデートされた。ボディは全高が低い「カイエン クーペ」をベースに、ルーフをカーボンパネルに置き換えて軽量化した。エアロはフロントこそリップスポイラーの追加のみだが、リアはカーボン製のエンドプレート付きルーフスポイラーと下部のアダプティブリアスポイラーで、高速域におけるダウンフォース増大を狙った。
サスペンションは当然のようにPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント)を備えたエアサスペンションを採用し、アクティブに動いてロールを打ち消す電動スタビライザーも標準で装着されている。つまりカイエンクーペのボディに最高レベルの装備を全部載せしたのがカイエン ターボGTだ。
とはいえ、実用的な荷室を備えたSUVに目いっぱい武装して、ポルシェは何がしたかったのか?
それはハイパフォーマンスカーを計るステージとして有名な、ドイツのニュルブルクリンクサーキットにおいてSUV最速タイムを記録することだった。実際カイエン ターボGTは7分38秒93をたたき出し、見事“SUV世界最速の座”を奪取した。
では公道で乗るとどうなのか?
コクピットはブラックにまとめられ、SUV的なゆとりのようなものは一切感じられない。標準装備されているバケットタイプのスポーツシートが、ドライバーの体をホールドする。エンジンを掛けた瞬間の音量は盛大だ。普通のカイエンの2倍と言っても大げさではない。ところが走りはじめると、乗り心地は驚くほど当たりが柔らかく、ロードノイズも低い。攻撃的な見た目とのギャップが大きいのだ。
カイエン ターボGTは、最強のエンジンを積んだ、見た目が厳ついだけのカイエンではなかった。ステアリング上のダイヤルで走行モードを「ノーマル」から「スポーツ」にすると、レーシングカーさながらのどう猛さが浮き彫りになる。排気音がさらに唸りレスポンスが上がる。ステアリングは重みを増し、車高が下がってサスペンションが硬くなる。
こうなるといよいよSUVらしいイメージは吹き飛んでしまう。少し強気なスピードでコーナーに入っても、背の高いSUVのような斜め方向のロールは一切ない。車体は傾くのではなく、水平を保ったまま路面に吸い付くような印象だ。ブレーキングも同様で、標準装備されたセラミックコンポジットブレーキの制動力は強烈だが、前につんのめるような危うさはない。涼しい顔をして機敏に動いてみせる様子はまさにトップアスリートのごとし。
運動性能だけで言えば、カイエンのカタチをした「911 GT3」に例えられる。だが実際の911 GT3ではカイエン ターボGTが秘めるラグジュアリーからレーシングまでのカバレッジの広さは望みようがない。あくまでカイエンのカリスマ性を高めるために生まれた“最強のカイエン”なのである。
究極のポルシェを駆り、涼しい顔をしてゴルフ場へのドライブを楽しみたい人にこそおすすめしたい一台だ。
ポルシェカイエン ターボGT 車両本体価格: 2851万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4940 X 全幅 1995 X 全高 1635 mm
- ホイールベース | 2895 mm
- 車両重量 | 2274 kg
- エンジン | V型8気筒 ツインターボ
- 排気量 | 3996 cc
- 変速機 | 8速 AT
- 最高出力 | 640 ps(471 kW) / 6000 rpm
- 最大トルク | 850 N・m / 2300 - 4500 rpm
- 0-100km/h | 3.3 秒
- 最高速度 | 300 km / h
お問い合わせ先
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ポルシェ・ジャパン
porsche.com/japan/jp/
Text : Takuo Yoshida