クセは強いが走りは繊細 ジープ「グラディエーター ルビコン」の意外な個性

このクルマでクラブハウスの車寄せに乗りつけたらおもしろいのではないか?そんなことを思わせてくれるのが、ジープ「グラディエーター ルビコン」だ。一言で説明すると、ジープ「ラングラー」のピックアップトラック版。本格的な悪路走破性能とネイキッドなスタイリングで人気を集めるラングラーは、日本での年間販売台数が7000台以上と、本国のアメリカも驚くほど売れている。

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ラングラーのホイールベース(前後の車輪の間隔)を480mm、全長を730mm伸ばして荷台を加えたのがこのグラディエーターというモデル。「荷台」と書いたけれど、「ベッド」と呼んだほうが本場アメリカのピックアップトラックっぽいので、以下ベッドと表記したい。

「さすがにピックアップトラックのベッドに大事なキャディバッグは載せられないでしょ」と思われるかもしれない。けれども心配ご無用。ハード、ソフト、ロールアップタイプのトノカバー3種類がオプションで用意されている。ちなみにベッドサイズは、奥行き1531mm、横幅1442mmとたっぷりある。クラブハウスの車寄せでベッドからキャディバッグを下ろすシーンを想像すると、思わず笑ってしまいそうになる。

グラディエーターを検討する時に、いくつか気をつけておきたいことをアドバイスしたい。まず、ボディサイズがかなり大きいので、駐車場選びに困ることだ。全長5600mmで、アメリカでフルサイズと呼ばれるピックアップトラックのフォード「F150」やトヨタ「タンドラ」よりはやや小さいけれど、それでも日本で見かけるビッグサイズのキャデラック「エスカレード」より200mmも長い。しかもホイールベースが3490mmもあるから、小回りが利かない。現行のメルセデス・ベンツ「Sクラス」ロングのホイールベース3216mmを思い浮かべれば、どれだけ長いかが想像できるだろう。

次に、乗り心地とハンドリングのクセが強いことだ。その理由は、昔ながらのオフロード4駆のボディ構造を採用しているから。屈強なはしご型のフレームに、サスペンションが直接取り付けられているボディ構造を「ラダーフレーム構造」と呼ぶ。悪路に強く、耐久性に優れ、ボディが破損してもフレームが被害を受けていなければ、そのまま走り続けることができるタフな構造となっている。シャシーとボディが一体化されているモノコック構造に比べると、ゴツゴツとした乗り心地で、ハンドルを切り0.8秒ぐらい経ってから曲がりはじめるような感覚がある。最近のモノコック構造のSUVに慣れた方には、グラディエーターの“クセ”が気になるかもしれない。

その一方で、パワートレーンは意外と繊細だ。排気量3.6リッター・V型6気筒ガソリンNA(自然吸気)エンジンは、アクセルペダルの微妙なオンとオフにもきちんと反応する。トルクコンバーター式の8段ATは変速時のショックも小さく、滑らかな走行感覚をもたらしてくれる。実はタフなオフローダーこそ、繊細なパワートレーンが必要。岩場や泥濘地では、丁寧なアクセルワークに対応できないと、命に関わるからだ。

そして普通貨物自動車として1ナンバーの登録となることも知っておきたい。自動車税や重量税は、普通乗用車よりも減額となるが、保険料や高速料金は割高となる。さらに、新車登録から初回の車検は2年間で、以降は毎年受ける必要がある。

ヘビーデューティな足まわりに、丁寧に練られたパワートレーンを組み合わせたグラディエーター。価格は920万円で、2000万越えのスーパーSUVと比べても存在感は上回るかもしれない。弱点はあるけれど魅力も大きいSUVだ。

ジープ グラディエーター ルビコン   車両本体価格: 920万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 5600 X 全幅 1930 X 全高 1850 mm
  • ホイールベース | 3490 mm
  • 車両重量 | 2280 kg
  • エンジン | V型6気筒 DOHC
  • 排気量 | 3604 cc
  • 変速機 | 8速 AT
  • 最高出力 | 284 ps(209 kW) / 6400 rpm
  • 最大トルク | 347 N・m / 4100 rpm

Text : Takeshi Sato

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