2021年11月より国内販売を開始したベントレー「ベンテイガ ハイブリッド」に試乗。日本で初めて導入されたベントレーのプラグインハイブリッド(PHEV)の実力を検証する。
スペックをおさらいしておくと、3.0リッターのV型6気筒ツインターボエンジンにモーターと、外部電源から充電できるリチウムイオン電池を組み合わせている。満充電の状態であれば約50kmのEV走行が可能となる。
システムを起動すると、バッテリーに余裕があればデフォルトで「EVドライブモード」が選ばれる。幸いにも借り出した車両には電気がたっぷりだったので、まずは市街地でのEV走行を試みた。
これがいい。なんの抵抗もノイズもないまま、透明な大巨人に押し出されるように発進する。ベントレーは、どのモデルに乗っても振動や騒音、路面からのショックが驚くほど小さい。豪華なインテリアのしつらえとあいまって、俗世間から隔絶しているような印象を受けるけれど、その“浮世離れ感”をさらに強く感じる。タイヤと路面の間に、2センチぐらいの隙間があるのではないかと思えるほどの浮遊感と滑らかさを味わえる。
電力が減るとV6エンジンが始動するけれど、モーターだけではなくエンジンも上品に仕立てられていることがわかる。多くのPHEV車は、EV走行のスムーズさに対してエンジンの野蛮さが際立つ傾向にある。「あぁ、さっきまで静粛で滑らかだったのにガサガサうるさいな」という気持ちになることも少なくない。
けれども、トゥルルルルとハミングするこのV6は、そういうネガティブな感情を与えない。モーターと直接比較されるPHEV車こそ、エンジンが大事なのだと思い知らされる。もちろん、遮音にも万全を期しているのだろう。
このモデルが発表されてすぐの頃は、ベントレーが開発しただけに単に効率を追求したモデルではなく、優雅に、力強く走るハイブリッド車になるはずだと想像した。その予想通り、モーターは効率向上をもたらすと同時に、クルマの振る舞いを洗練させた。
一番わかりやすいのは前述した「EVドライブモード」であるけれど、モーターとエンジンが連携する「ハイブリッドモード」でも、モーターが果たす役割は大きい。ある程度、回転数を上げないと力を発揮しないエンジンの弱点を、モーターがしっかりと補っている。
たとえば合流車線から本線に入るとき、すっと寄り添うようにモーターがアシストしてくれるから、無闇にエンジンの回転が高まることなく、温和に加速することができる。V8エンジンを積んだベンテイガが、カーンというエンジンの快音を響かせながら加速するのも、あれはあれで気持ちがよいものだ。一方で、ラグジュアリーなキャラクターを望むのであれば、ハイブリッドのしなやかな加速のほうがふさわしいと感じるはず。
実はベンテイガV8とベンテイガ ハイブリッドは、ともに2280万円とまったくの同価格。それでいて、ドライバーに与える印象はまるで異なるのがおもしろい。同じモデルの中に、同じ価格で、真逆の性格を持つ仕様をラインアップするあたりに、まさに現在が自動車業界の「100年に一度の転換期」にあることを実感させられる。
ハイブリッドとV8は、パワートレーンの印象は異なるけれど、重厚で安らぎをもたらす乗り心地と、小山のような巨体を感じさせないハンドリングを両立させているのは両者共通だ。特に不思議なのは、高速を巡航しているときにはどっしりとした重厚感があるのに、ワインディングロードに入ると2690kgの重量を忘れさせる軽快感が現れる。このあたりは、20世紀初頭の自動車の黎明期から、常にドライバーズカーを作り続けてきたベントレーの“秘伝のタレ”の味なのだろう。
ベントレー ベンテイガ ハイブリッド 車両本体価格: 22,800,000 円(税込)
- ボディサイズ | 全長 5125 X 全幅 1995 X 全高 1740 mm
- ホイールベース | 2995 mm
- 車両重量 | 2690 Kg
- エンジン | V型6気筒 ツインターボ + モーター
- 排気量 | 2994 cc
- 変速機 | 8速 AT
- エンジン最高出力 | 449 ps(330 kW)
- エンジン最大トルク | 700 N・m
- 最高速度 | 254 km/h
- 0-100 km/h | 5.5 秒
- Text : Takeshi Sato
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