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アストンマーティン初のSUVに勝算は? 「DBX」の実力を測る

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アストンマーティンで初めてのSUVモデル「DBX」が2020年、日本に導入された。その時に感じたのは、「椅子取りゲームの椅子はまだ残っているのか」ということだ。SUV市場は大盛況で、ラグジュアリーSUVからスーパーSUVまで出揃っている。いくら“ブリティッシュサラブレッド”の渾身作とはいえ、参入する余地は残されているのだろうかと思った。

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ひと目でアストンマーティン一族だとわかるハンサムな外観だが、より強くアストンらしさを感じるのはインテリアだ。ドライバーズシートに収まって周囲を見渡すと、パッと見の印象を「地味」という人は多いかもしれない。鮮やかな色使いもなければ、飾りもない。けれどもよく見ると、レザーの色艶や繊細なステッチ、クローム部分の輝きやメーターの数字のフォントなど、細部まで徹底的に作り込まれていることがわかる。高度なデザイン性と吟味した素材によって、見かけの印象は地味なのに高級感を漂わせるあたりが、いかにもこのブランドらしい。

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走り出して感じるのは、ドライバーの意思を忠実に反映してくれるエンジンのレスポンスだ。4.0リッターのV型8気筒ツインターボユニットは、提携するAMGから提供されたもの。「ひとりの職人が、ひとつのエンジンを組む」というAMGの“手組み”のポリシーに則り、このクルマでもエンジンルームにはマイスターのサインを記したプレートが輝いている。

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このエンジンはただパワフルというだけでなく、回転数が3500rpmあたりを超えると、音の高まりとともに回転計の針が盤面を駆け上がる速度も速くなり、「もっと回せ」というメッセージが伝わってくる。ただ速いとかレスポンスがいいというだけではなく、こうして意思を伝えてくるようなエンジンは、世界を見渡してもごく限られている。もちろんAMGの手柄でもあるけれど、9速ATのトランスミッションとのマッチングなど、アストンマーティンが施した細部のチューニングがこの気持ちよさを実現している。

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ワインディングロードでも、背の高いSUVとは思えない一体感を味わえる。ハンドルを切った瞬間に、わずかな遅れもなくスパッと向きを変えようとする。しかも、ハンドリングはシャープなのに乗り心地は上質だ。

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その理由は、一般的なSUVとは異なり、基本構造にボンデッドアルミニウム工法を用いていることにある。特殊な接着剤で軽量のアルミニウムを組み合わせる骨格は、アストンマーティン「DB 11」などのスポーツカーに使われる手法。ボンネットを開けると、そこに特別なアルミ構造を確認することができ、このクルマがアストンマーティンが誇るスーパースポーツのノウハウを注入したSUVであることがわかる。

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軽くて堅牢なボディ骨格に加えて、スーパースポーツと同じように、エンジンをドライバーに近くて低い位置に搭載し、重心をなるべく車体の中央付近に寄せて低くする。この凝った構造によって、キメの細かいハンドリングを実現しているのだ。

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手組みのエンジンとスーパースポーツ由来のボディ構造のあわせ技で、いかにも“ブリティッシュサラブレッド”らしい、速くて高貴なスーパーSUVが生まれた。 このクルマの登場を一番喜んでいるのは、アストンマーティンのオーナーたちだろう。彼らは、アストンのSUVに乗りたかったけれど、存在しないから仕方なく他社製のSUVでゴルフに出かけていたに違いない。広々とした荷室と快適な乗り心地を持ち合わせるDBXがあれば、これを選ぶはずだ。

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また、わかる人にはわかる本物の高級感を備えているあたり、アストンマーティンのオーナー以外でもアンダーステイトメント(「控えめな表現」という意味で英国人が好む)を美徳とする方々には支持されるだろう。アストンマーティンDBX、勝算アリと予想する。

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アストンマーティン DBX   車両本体価格:22,995,000円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 5039 X 全幅 1998 X 全高 1680 mm
  • ホイールベース | 3060 mm
  • 車両重量 | 2245 Kg
  • エンジン | V型 8気筒 DOHCツインターボ
  • 排気量 | 3982 cc
  • 変速機  |9速 A/T
  • 最高出力 | 330 ps(234 kW)/ 3600 - 4200 rpm
  • 最大トルク | 700 N・m / 1200 - 3200 rpm
  • 最高速度 | 291 Km / h
  • 0 - 100 km/h| 4.5 秒

 

  • Text : Takeshi Sato

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