日本市場において、キャデラック エスカレードは宣伝が不要なのだという。なぜなら、アメリカのヒッポホップ・アーティストのMV(ミュージックビデオ)にばんばん登場するから。この手のクルマに興味がある層はヒップホップを好む傾向にあるらしく、MVを通してエスカレードがラッパーたちの憧れの的だということをよく知っているそうなのだ。
エスカレードとはフルサイズ、つまり最大クラスで最上級のSUVを意味しており、「いつかはエスカレード」という存在になっている。ではアメリカン・フルサイズのSUVの実力とはどのようなものか。試乗しながら確認した。全長5195mm、全高1910mmのエスカレードのパッと見の印象は、小山のようにデカい、というもの。
ただし運転席に座ってみると、外見ほど巨大には感じない。それは、視界がよく、ボディの四隅が把握しやすいからで、これだけのサイズでありながらいざ走り出すと不安を感じない。いかにも大きなクルマを設計するのに慣れている、という感じがする。
しかも、駐車時には車体を真上から俯瞰するような映像がモニターに映しだされるサラウンドビジョンのおかげで周囲を認識できるし、障害物に接近しすぎるとシートに内蔵されたバイブレーターが振動で危険を知らせてくれるセーフティアラートドライバーズシートを搭載。
他社製品では経験したことがないけれど、直感で危機を察知できる優れた安全装備だと感じた。最新のテクノロジーで運転のしやすさや安全性能を高めているキャデラック。最先端の技術がドライバーにベネフィットをもたらすというのは、パフォーマンスの面でも同じだった。
走り出すとその快適さに感心。大船に乗った気持ちにさせられる。サスペンションがゆったりと大きく動き、路面からのショックを吸収してくれるのだ。この快適な乗り心地をもたらすのは、マグネティックライドコントロールと呼ばれるサスペンションシステム。路面状況を1秒間に最大で1000回も読み取り、路面のコンディションや走行状態にあわせてセッティングを自動で調整するのだ。「考えるサスペンション」と呼びたくなる。
速度域の低い市街地ではふわんふわんと柔らかい乗り心地を提供する一方で、高速道路ではダンピング(走行時の振動を減衰)が効いてビシッと車体の姿勢を抑え込み、フラットな姿勢を維持する。状況に応じて最適化する、賢い足回りだ。
排気量6.2リッターのV型8気筒エンジンは、いまでは貴重になったOHV(オーバー ヘッド バルブ)。分厚いトルクがじわじわと湧き出てくるフィーリングはちょっと懐かしく、OHVならではの滋味深さがある。けれども決して古臭さを感じないのは、インテリジェント オートマチック トランスミッションと名付けられたトルコン式の8速ATが洗練されているからだ。
たとえば加速が必要なときにアクセルを踏み込み、キックダウンでギアを落とす。ここで、トルクが大きく加わるから変速ショックも大きいだろうと身構えるが、その必要はまったくない。8速ATは上手にショックを逃し、ドライバーは大トルクに身を委ねて安楽にドライブすることになる。
高速道路では、エスカレードの最先端のメカニズムが全方位をケアしながら快適・安全に走行してくれる。車線キープをアシストしながら安全な距離を保って先行車両を追従する仕組みや、斜め後方の車両に注意喚起するシステムなどがドライバーを防護。走行に伴うノイズと逆位相の音を流して車内を静かに保つなど、ハイテクの塊なのだ。
ドライバーが感銘を受けるのは、どちらかといえばレザーの滑らかな肌触りだったり、そこに施された美しいステッチだったりするかもしれない。見えないところにハイテクを使い、見えるところには伝統的なプレミアム感を配置している。よく「クラシック・ミーツ・モダン」という言い方をするけれど、エスカレードは実に上手にこの言葉を体現しているように思える。
おおらかな乗り心地と、余裕しゃくしゃくの加速感。この古きよきアメリカン・ラグジュアリーを、新しいテクノロジーで表現しているエスカレード。欧州の高性能SUVがポインターなどの猟犬だとしたら、エスカレードは気のいい大型牧羊犬。こちらに憧れる人も多いことは、大いに納得できる。
CADILLAC ESCALADE
車両本体価格:13,770,000円(税込)
- ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
- ※価格には保険料、税金(消費税除く)、自動車リサイクル料金、その他登録等に伴う費用等は含まれておりません。
- ボディサイズ | 全長 5195 X 全幅 2065 X 全高 1910 mm
- ホイールベース | 2950 mm
- 車両重量 | 2670 Kg
- エンジン | V型8気筒 OHV
- エンジン排気量 | 6153 cc
- 最高出力 | 426 ps(313 kW)/ 5600 rpm
- 最大トルク | 623 N・m / 4100 rpm
- Text : Takeshi Sato
- Photographer : Koichi Shinohara
- 取材協力 : 富里ゴルフ倶楽部
お問い合わせ先
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ゼネラルモーターズ・ジャパン フリーダイヤル:0120-711-276
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