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重力を捻じ曲げる頂上SUV ランドローバー「レンジローバー スポーツSVエディションツー」

ラグジュアリーSUVというジャンルを切り拓いたパイオニア、「レンジローバー」。英国王室の足として、あるいは週末のカントリーライフを彩る高貴な存在として、特別な地位を築いてきた。その伝統にスポーツマインドを融合させたのが「レンジローバー スポーツ」シリーズだ。

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現行型は2022年に登場した第3世代。なかでも今回試乗した「SVエディションツー」は、BMW製の4.4リッター、V8ツインターボエンジンを搭載し、最高出力635ps、最大トルク750Nmを誇る頂上モデルである。

ランドローバーには特殊車両開発を担う“SV=スペシャルビークル”部門が存在する。これまで幾多の特別仕様車を手がけてきたが、今回のSVエディションは、その中でも特筆すべき完成度を誇る。ポルシェ カイエンを筆頭とするスポーティSUVの台頭と、シャシーやエアサスペンションといった電子制御技術の進化が、重心の高いフルサイズSUVにも鋭敏な身のこなしを可能にした。

骨格にはフラッグシップの「レンジローバー」と同じアルミ主体のモノコックシャシーを採用。ひと目で“スポーツ”とわかる引き締まったデザインが与えられ、シャープなヘッドライトやリアへと向かって絞り込まれたシルエットが、動的性能の高さを物語る。だが、SVエディションはそのポテンシャルを誇示しない。外装での主張は控えめで、リアに白いSVバッジがぽつんと添えられているだけ。逆に、コクピットに乗り込むとフロントに備わる「SVパフォーマンスシート」がただならぬ存在感を放つ。

スタートボタンを押すと、炸裂音のような咆哮がキャビンに響き渡る。小ぶりなシフトレバーを操作して走り出した途端にまず軽やかさに驚かされる。車重2.6トン近い巨体とは思えないほどの軽快さ。これはアルミ製シャシーの効果もあるが、それ以上にBMW製V8エンジンの強烈なトルクが、車体を“軽く感じさせている”のだ。

だがこのクルマの真価は、直線ではない。コーナーにある。ステアリングを切り始めた瞬間から、車体は一切ロールせず、フラットなままスッと旋回姿勢に移る。まるでスポーツカーのような動きに戸惑いさえ覚える。さらにステアリング上の「SV」ボタンを押せば、パワートレイン、シフトプログラム、車高、足まわりの設定が瞬時に切り替わり、クルマは戦闘態勢に入る。

驚くべきは、新開発の「6Dダイナミクスサスペンションシステム」だ。左右のサスペンションを油圧で繋ぎ、セミアクティブ機構としてボディの動きを瞬時に制御。従来の電動スタビライザー以上のスピードと繊細さで姿勢を制御し、まるで重力すら捻じ曲げているかのような“異次元のフラット感”を実現する。

ある中速コーナーで、半信半疑のままスロットルを踏みながらターンインしてみた。フロントがスッと向きを変えたと思った次の瞬間、ボディ全体が地面に吸いつくように旋回を完了。これがSUVなのかと、思わず息を呑んだ。タイヤと地面の接地感、シートに伝わるG、どれもが精密機械のような反応を返してくる。

これほどの動的性能が、果たしてフルサイズSUVに必要なのか。そんな疑問を抱くのは、凡人の発想かもしれない。なにしろこのクルマのオーナーは、すでに数台のスーパースポーツカーを所有している可能性が高いのだ。だが、家族での移動やゴルフ、あるいは美食を求める週末のドライブに、退屈なSUVでは物足りない。そんな“粋人”たちにとって、SVエディションは「唯一無二の選択肢」となる。

価格は確かにラグジュアリーそのものだ。しかしその中には、スペシャルモデルにしかない静かなオーラ、ラグジュアリーSUVの品格、そしてスーパーカーにも匹敵するパフォーマンスが凝縮されている。そう、これは“実用を装った快楽”なのだ。

ランドローバー レンジローバー スポーツSVエディションツー  車両本体価格: 2474万円(税込)

    • ボディサイズ | 全長 4970 X 全幅 2025 X 全高 1815 mm
    • ホイールベース | 3000 mm
    • 車両重量 | 2590 kg
    • 排気量 | 4394 cc
    • エンジン | V型8気筒 ツインターボ(BMW製)
    • 最高出力 | 635 PS(467 kW)
    • 最大トルク | 750 N・m

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Text : Takuo Yoshida

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