
2002年にスタートを切ったBMWプロデュースのMINI。個性的なキャラクターだけでなく、実用性の高さも広く認知され、熱心なファンに支持されている。現行モデルは昨年3月に本邦デビューした4世代目。その中で今回はBEV(電気自動車)の3ドア「MINIクーパーSE」に試乗した。ガソリンモデル(ICE)と電動モデル(BEV)が用意され、外観はよく似ているが、ホイールベースや細部の仕様が異なる。
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「MINIクーパーE」の最高出力が184psに対し、試乗したSEは218psを発揮する。伝統にのっとり前輪駆動を採用。床下には54.2kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載し、一充電航続距離はWLTCモードで446kmと公表されている。

4世代目となっても、そのスタイリングは紛れもなくMINIだ。ただし、フロントグリルの大部分がパネルで埋められていることでBEVだとわかる。グリル内の「S」エンブレムは、このモデルが伝統の「クーパーS」の電動版であることを示す。リアのデザインもフロントと呼応し、ツルッとした曲面でまとめられているが、ひと目でMINIと分かるアイコニックな造形だ。

インテリアのハイライトは、ダッシュパネル中央の9.4インチ有機ELディスプレイ。この円形モニターがほぼすべての情報を集約し、下に並ぶ物理スイッチとともに機能的な操作性を提供する。ドライバー正面には小型のヘッドアップディスプレイが備わる。

試乗車にはオプションのジョンクーパーワークス仕様のシートが装着され、スポーティな雰囲気は十分。スイッチを入れ、静かに走り出すと、まず驚かされるのはその滑らかさ。ロードノイズは極めて少なく、路面の細かな凹凸をいなしながらも、MINIらしいダイレクトな感覚がしっかりと残る。初代から続く「ゴーカートフィーリング」は健在だが、BEVならではのスムーズなパワーデリバリーと、しっとりした乗り味が絶妙に融合している。

走行モードをTIMELESS(標準)からGO-KART(スポーツ)に切り替えると、スロットルレスポンスが鋭くなり、ワインディングでも軽快な走りが楽しめる。加速時には演出としてエンジンサウンドのような効果音が響き、スポーティな雰囲気を高める。一方、GREEN(コンフォート/エコ)モードでは、より穏やかな加速と静粛性を活かし、リラックスしたドライブが可能だ。

半日ほど走らせてみて、これまでのMINIらしい引き締まったドライブフィールや、取り回しの良さはそのままに、BEV化によって長距離ドライブ時の快適性が格段に向上していることを実感した。「MINI史上最も上質」と言っても過言ではないほど、走行中のノイズや振動が抑えられ、高級車的な乗り味を楽しめる。

コンパクトなボディはそのままなので、キャディバッグの搭載には工夫が必要。従来と同様、リアシートを倒して斜めに積み込む形になるが、それでも3ドアのバランスの良いデザインを支持するファンは多いはずだ。

ガソリンモデルでもしっとり感が増した4世代目だが、BEVモデルの方がより高級感を味わいやすい。MINIの伝統を愛する人はもちろん、小さな高級車を求める人にもおすすめしたい一台だ。

MINIクーパー3ドアSE 車両本体価格: 531万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 3860 X 全幅 1755 X 全高 1460 mm
- ホイールベース | 2525 mm
- 車両重量 | 1640 kg
- システム最高出力 | 218 PS(164 kW)
- モーター最大トルク | 330 N・m
- 一充電走行距離 | 446 km(WLTCモード)
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Text : Takuo Yoshida








