アウディ「RS3セダン」人気の理由がどこにあるか確かめてみた

新型のアウディ「RS3」シリーズが日本上陸を果たしたのは2021年暮れのこと。あれから1年以上の時間が経っているが、今なおコンパクトなボディに強烈なパフォーマンスを秘めたアウディ「RS」の“末っ子”人気は高まり続けているという。その魅力の根源を探るべく、いま一度「RS3セダン」のステアリングを握ってみた。

RS3にはスポーツバック(5ドアハッチバック)と4ドアセダンという2種類のボディタイプがある。リアに独立したトランクを備えたRS3セダンは、メルセデス「AMG CLA35」やBMW「M2クーペ」といった強力なライバルたちと肩を並べる存在だ。

現行のアウディRS3にはいくつかのトピックがあるが、初対面で目を引くのはスタイリングだろう。黒いパネルが強調されたフロントマスクと、太いタイヤを覆うブリスターフェンダーのおかげで、ひと目で特殊なモデルとわかる。 もうひとつはアウディクワトロの象徴ともいえる直列5気筒エンジンである。2.5リッター・5気筒ターボユニットの最高出力は400psにも達する。この大パワーはSトロニック(7速DCT)とクワトロシステム(AWD)を介して4輪に伝えられる。

だが今回のRS3の機構面における最大のトピックは、リアの駆動系にある。リアのドライブシャフトの根元にトルクスプリッター(電子制御クラッチ)が仕込まれており、左右のリアタイヤにかかるトルクを積極的にコントロールできる。「RSトルクリア」と呼ばれるこの機能により、状況次第でより曲がるクルマにも、直進安定性の高いクルマにも変貌するのである。 さらにトルクスプリッターの機能を最大限に生かすことで、ドリフトモードが可能になるという点も現行RS3の売り文句のひとつ。フロントタイヤ幅265、リアタイヤ幅245という、フロントの方が太いセッティングもドリフトモードを可能にする要因になっているようだ。

アウディRS3セダンのスペシャリティは見た目のみならず、重めのステアリングやホールド感の高い専用シートなどからもひしひしと伝わってくる。走り出してすぐに感じたのはコンパクトなボディを加速させるパワーだ。また5気筒エンジンの音色は、4気筒の野太さと6気筒の高音のちょうど中間くらいで、ついついエンジンを回して排気音を楽しみたくなる。 ポテンシャルの核となるトルクスプリッターや、それに紐づいたドリフトモードを公道レベルのスピードで試すことは難しい。それでも太いタイヤと引き締まったサスペンションのおかげで、コーナーに鋭くターンインすることができるし、コーナーからの脱出加速も豪快だ。

走行路面がドライでもウェットでも盤石のスタビリティを誇り、またサーキットを走らせてもめっぽう速いことも証明されている。RS3セダンはデビュー当時、ドイツのニュルブルクリンクの北コースで、クラス最速のタイムを記録したほどのスピードモデルだ。 現行のRS3セダンは、純粋なガソリンエンジンを搭載した最後のRS3となるようだ。電動化がテーマとなっている今だからこそ、優れた性能が凝縮されているRS3セダンの人気は衰えることがないだろう。

アウディ RS3セダン  車両本体価格: 839万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4540 X 全幅 1850 X 全高 1410 mm
  • ホイールベース | 2630 mm
  • 車両重量 | 1600 kg
  • エンジン | 直列5気筒 DOHC ターボ
  • 排気量 | 2480 cc
  • 変速機 | 7速 AT(Sトロニック)
  • 最高出力 | 400 ps(294 kW) / 5600 - 7000 rpm
  • 最大トルク | 500 N・m / 2250 - 5600 rpm

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Text : Takuo Yoshida

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