ボルボ V90、最も安全性の高いクルマ

昔から安全性能を重視することで知られるスウェーデンのボルボ。その最新作であるV90クロスカントリーは現在市販されているなかで最も安全性の高い乗用車と言える。安全性の高さのみならず、スタイリッシュさ、使い勝手のよさ、頼もしい悪路走破性と、すべてを盛り込んだボルボのフラッグシップに試乗した。

スウェーデンというと、ゴルファーなら全英オープン・チャンピオンにしてリオオリンピック銀メダリストのヘンリック・ステンソンを思い浮かべるだろうか。2008年に引退したメジャー10勝の女子プロゴルファー、アニカ・ソレンスタムも記憶に新しい。ゴルフに限らず、ウインタースポーツやテニスなどでも世界的なプレーヤーを多数輩出してきた。クルマとなると、ボルボをおいてほかにない。かつてはサーブという航空機由来のブランドもあったのだが、時代の波に飲まれて消滅してしまった。

ボルボといえば、かつては四角四面のスタイリングが特徴で、見た目の通り質実剛健だった。レースにも四角いクルマで参戦し、それでいて速かったものだから、彼らのマシンには「フライング・ブリック」(かっ飛ぶレンガ)という賞賛と揶揄が入り混じったあだ名がついていた。安全意識が非常に高いメーカーとしても有名。例えば3点式シートベルトは1959年にボルボが発明した安全装置だ。特許を取得したものの、安全に関する装備を独占すべきではないとの考えから、彼らはこの特許を無償公開した。おかげで今では世界中のほぼすべてのクルマに備わっている。

現在のボルボのラインナップはわかりやすい。小さいほうから40シリーズ、60シリーズ、90シリーズと3つのシリーズがある。わかりやすくいえば、40がVWゴルフクラス、60がメルセデス・ベンツCクラスやBMW3シリーズのクラス、90がEクラスや5シリーズのクラスだ。各シリーズにS、V、XC、クロスカントリーと4種類のボディタイプが設定される(40シリーズのみVとクロスカントリーの2種類のみ)。3×4ー2=10。10種類のモデルが存在するということだ。Sはセダン、Vはワゴン、XCはSUV、クロスカントリーはVの車高を上げ、ワゴンのまま悪路走破性を高めたモデルだ。

レンガと揶揄されたのも今は昔、近頃のボルボはどれもスタイリッシュだが、V90クロスカントリーは文句なくカッコいい。V90をベースにしているが、ただ車高を高めて悪路走破に適したロードクリアランスを確保しただけではなく、随所に専用の意匠が施されている。例えばフロントマスク。バンパー中央下部にラリーカーのようなアンダーガードを思わせるつや消しクロームのパネルが装着されるほか、フロントグリルもスタッド付きの縦リブの専用デザインが採用された。

歴代クロスカントリーに共通する、フロントバンパーからフロントフェンダー、サイドシル、リアフェンダー、そしてリアバンパーまで、ボディ下部をぐるりと囲む濃いチャコールカラーの樹脂モールも健在。これがあるおかげで、V90と同じ形状でありながら、大きく異なる印象を受ける。もちろん、見た目のためだけでなく、悪路でタイヤが跳ね上げた小石などからボディを守るためでもある。おかげで躊躇なく悪路へ足を踏み入れることができるのだ。

ちなみに、悪路に強いクルマかどうかを調べる場合、4WDかどうかも大事だが、最もチェックすべきは最低地上高。目安は200mm。これを超えていれば悪路に強いと言える。カタログの写真でたくましく悪路を駆け抜けていたとしても、スペック表の最低地上高が200mm未満だったら、それなりだと考えておこう。V90クロスカントリーは210mm。下手なSUVよりも走破性が高い。

ベースのV90同様、V90クロスカントリーも通常時に560リッター、リアシートを倒せば1600リッターと広大なラゲッジ容量を誇る。なおかつ手前部分の左右がえぐられた形状となっているのでキャディバッグを真横に積載しやすいのはありがたい。もちろん、斜めに重ねるように置けば複数個のバッグも楽々と積載でき、加えて隙間にボストンバッグなどを入れることもできるはずだ。荷物が少ない場合には床板の一部を立てて固定できる。リアバンパー下に足をかざすだけでリアハッチを開閉できるので、両手がふさがっている際にはありがたい。

現状、V90クロスカントリーには、2リッター直4ターボのT5エンジンと2リッター直4ターボ+スーパーチャージャーのT6エンジンの2種類が用意される。全長4940mm、全幅1905kg、車両重量1850~1870kgと決して小さくもなければ軽くもないV90クロスカントリーを、過給器付きとはいえ2リッターの4気筒エンジンで痛痒なく走らせることができるのか? クルマに詳しい人であればあるほどそんな不安を抱くかもしれない。

だがそれはまったくの杞憂だ。ベーシックなT5が最高出力254ps、最大トルク35.7kgm、上級のT6が同320ps、同40.8kgmと、十分な力強さを発揮する。近頃のターボエンジンはやみくもにパワーを追求するのではなく、燃費も意識したチューニングが施されるため、V90クロスカントリーはT5搭載車が12.9km/L、T6搭載車が11.5km/LのJC08モード燃費を誇る。このサイズとしては健闘していると言っていい。

フラッグシップとして、V90クロスカントリーには乗用車として最高レベルの安全性能が盛り込まれている。前方にいるクルマ、歩行者、サイクリストのみならず、大型動物であっても検知して自動ブレーキが作動するのは、ヘラジカが道路に出てくることがあるスウェーデンのクルマならではだろう。常に高い安心感に包まれながらドライブを楽しむことができるはずだ。

VOLVO V90 Cross Country T5 AWD
車両本体価格:7,540,000円(税込)

  • ボディサイズ|全長4,940 × 全幅1,905 × 全高1,545mm
  • ホイールベース|2,940mm
  • エンジン|DOHC水冷直列4気筒16バルブ、インタークーラーターボ
  • 排気量|1,968cc
  • 最高出力|254ps(187kW) / 5,500rpm
  • 最大トルク|350N・m / 1,500-4,800rpm
  • Text : Satoshi SHIOMI
  • Photographer : Koichi Shinohara
  • Golf Course : Caledonian Golf Club

 

 

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