新型「UX」が示す レクサスならではの“乗り味”

レクサス「UX」に試乗して、これまでレクサスに対して抱いていたイメージが覆されるほどの感動を覚えた。UXは同ブランドのSUVラインアップにおいて、「LX」「RX」「NX」に続く“末っ子”の位置づけだ。だがステアリングホイールを握れば、レクサスの未来は、この“末っ子”が開拓していくのではないかとさえ思えてくる。

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今回試乗したのは2.0 リッター・直列4気筒ガソリンエンジンを搭載する「UX200」、グレードは“Fスポーツ”。ちなみに、UXにはハイブリッドモデルの「UX250h」と電気自動車の「UX300e」もある。まず感銘を受けたのは乗り心地だ。足まわりを固めて俊敏に動くクルマもあれば、路面の凸凹をなかったことにするようなやわらかい足まわりのクルマもあるが、「UX200 Fスポーツ」は、この2つが非常に高いレベルでバランス良く調和していると感じた。サスペンション、ボディ、ステアリングホイールやシートを通じて、ドライバーに伝わってくる路面の凸凹の情報は、タイヤがキャッチした衝撃をダイレクトに感じつつも、まるで角が取れたような滑らかな感覚がある。海外ブランドとは異なるレクサスならではの乗り味を見つけたような気がした。

では、この“レクサス味”はどんなレシピで生まれたのだろうか。現在のレクサスは「Always on」というコンセプトで車両を改良しているという。マイナーチェンジやフルモデルチェンジといったタイミングにこだわらずに、その時々でできる改良やアイデアを加え、クルマの進化を追求するという考え方だ。

2018年にデビューしたUXも、こうして熟成を図ってきた。そして今回、少し大がかりなマイナーチェンジを行った。具体的には、ボディ開口部のスポット溶接打点を計20カ所追加して、ボディ剛性を強化した。これにより、コーナリング中のねじれや歪みが少なくなり、すっきりとしたハンドリングを実現した。また、従来はオプションだったパフォーマンスダンパーが、標準装備になったことで、乗り心地と静粛性が向上した。

パフォーマンスダンパーとは、ボディ後部に配置された振動や変形を吸収する装置で、ヤマハ発動機が開発したものだ。さらに電動パワーステアリングや、AVSと呼ばれる電子制御式のサスペンションの設定を見直した。「なんだ、パフォーマンスダンパー以外のことは当たり前のことばかりじゃないか」と思ったけれど、良いクルマというのは一発芸の仕掛けから生まれるのではなく、あたりまえのことを徹底することで生まれるものなのだろう。

2.0リッター・直列4気筒ガソリンエンジンとCVT(無段変速機)の組み合わせは、文句のつけどころがないほど静かでスムーズだ。このパワートレーンにスペシャルな魅力が備われば、Fスポーツはメルセデスベンツの「AMG」や、BMWの「Mシリーズ」に匹敵するような存在になるはずだ。

これまでのレクサスは上品で静か、高品質で、意識の高い人が好むブランドというイメージだった。実際、2021年の日本におけるレクサスUXの販売台数のうち、ハイブリッド車と電気自動車が約8割を占めている。だがUX200 Fスポーツは、このブランドの新境地を見せてくれたと言っても過言ではない。5年か10年後、「そういえば、UXからレクサスは変わったよね」と振り返る日が来るかもしれない。

レクサス UX200 Fスポーツ   車両本体価格: 468.5万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4495 X 全幅 1840 X 全高 1540 mm
  • ホイールベース | 2640 mm
  • 車両重量 | 1500 kg
  • エンジン | 直列4気筒ガソリン
  • 排気量 | 1986 cc
  • 変速機 | CVT(無段変速機)
  • 最高出力 | 128 ps(174 kW) / 6600 rpm
  • 最大トルク | 209 N・m / 4000 - 5200 rpm

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Text : Takeshi Sato

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