フェラーリのプラグインハイブリッド車、「296GTB」の日本への導入が始まった。まだテストドライブは実現していないので、今回は確認すべきポイントや楽しみな部分を挙げたい。
初めに確認したいポイントは、ハイブリッドのパワートレーンだ。車名の296GTBとは、排気量2.9リッターのV型6気筒エンジンを意味する。そこに、1基の電気モーターと、リチウムイオンバッテリーを組み合わせて、プラグインハイブリッド(PHEV)システムを構成。フル充電の状態であれば、約25kmのEV走行が可能だという。レイアウトはエンジンをドライバーの背後に積むミドシップで、駆動方式は後輪駆動となる。
V6エンジンはレーシングカーで採用した例があるものの、フェラーリの市販モデルでは1960年代の名車「ディーノ206GT/246GT」以来、約50年ぶりとなる。ディーノとは創始者エンツォ・フェラーリの早逝した息子アルフレッドの愛称で、正式にはフェラーリの名で呼ばれなかった。また、ディーノには跳ね馬のエンブレムも付けられなかった。
諸説あるが、当時のエンツォはV型12気筒エンジンを積むモデル以外は、フェラーリとは別ブランドで展開する腹積もりだったらしい。したがってフェラーリというブランドの市販車としては初となるV6エンジンが、どのようなフィーリングを伝えるのかが興味深い。フェラーリのリリースによると、開発陣の間では「ピッコロV12(ミニV12)」と呼ばれるほど官能的なサウンドを発するという。
また、エンジンとターボとモーターをトータルしたシステム出力は830psで、3.9リッターのV8ツインターボエンジンをミドシップするフェラーリ「F8トリブート」の720psをしのいでいる。
フェラーリの宿命として、ただ速いだけでは認められず、パワートレーンにはドラマも求められる。296GTBの官能性とパフォーマンスが、楽しみでならない。 既に日本に導入されているフェラーリ初のプラグインハイブリッド車である「SF90ストラダーレ/SF90スパイダー」が、4.0リッターのV型8気筒エンジンと3基の電気モーターを組み合わせた4輪駆動モデルであることに比べると、296GTBはシンプルな構造だ。
SF90は4輪駆動ということもあり、地面に吸い付くような安定感を見せた。そして、3基の電気モーターによるアシストによって、静かに滑らかに、けれども爆発的に加速する。未来のスーパースポーツという雰囲気は、少しホンダNSXにも似ていた。
一方の296GTBは、SF90ストラダーレよりも軽量でコンパクトな2輪駆動であることから、軽快にひらひらと舞うような走りと推測できる。その予想が当たっているのか、答え合わせの日が待ち遠しい。 もうひとつ心待ちにしているのが、実車のスタイリングを確認することだ。やはり美しくなければフェラーリではない。
写真を見る限りは、わかりやすくシャープなキャラクターラインや、複雑な面の構成を使わずにシンプルに造形美を表現する、近年のフェラーリのデザイン手法を踏襲しているように感じる。たとえばフェラーリ「ローマ」で顕著であるけれど、1960年代の優美なラインを再定義しているように見えるが、クルマの場合は写真と実車ではまるで別物、というケースもある。こちらも実車を見て答え合わせをすることになる。
インテリアに関してはSF90ストラダーレ/SF90スパイダーのレイアウトを踏襲している。助手席側にも液晶パネルを備えることでパッセンジャーもドライブに参加できるような配慮も、最近のフェラーリに共通している。 「アセット・フィオラーノ」と呼ばれる、サーキット走行を想定したオプションパッケージが用意されていることもSF90ストラダーレと同じだ。
フェラーリのニューモデルは常に、その美しさや音、ハンドリングや加速フィールで乗る者の心を震わせてくれる。296GTBは、心のどんな部分に刺さるのだろうか。
フェラーリ 296GTB 車両本体価格:36,780,000円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4565 X 全幅 1958 X 全高 1187 mm
- ホイールベース | 2600 mm
- 車両重量 | 1470 Kg
- エンジン | V型6気筒 ターボ+電気モーター×1
- 排気量 | 2992 cc
- 変速機 |8速 DCT
- 最高出力 | 830 ps(234 kW)/ 8000 rpm
- 最大トルク | 740 N・m / 6250 rpm
- 最高速度 | 330 Km / h
- 0 - 100 km/h| 2.9 秒
- Text : Takeshi Sato
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