ジャガーが2015年に自社初のSUVとなる「F-ペイス」を発表した時に、ライバルたちとどのように差別化を図るのかという点に興味を持った。すでにプレミアムSUVは世の中にあふれており、少なくともSUV市場への参入という意味では、ジャガーは後発といって間違いなかったからだ。
思った通りに止まり、曲がり、加速する。それがほかのプレミアムSUVとの違いだった。特に心に響いたのは、乗り心地が全然硬くないのに、まるでスポーツカーのようにクイックにコーナリングをすること。しなやかな身のこなしは、まさに地を駆ける“ジャガー”のように思えた。 レーシングドライバー出身のジャーナリストが、見事なドリフトを決めていたことが鮮烈に記憶されている。ドリフトをするSUVなんて!
インテリアも、レザーの色艶やステッチの美しさで華美ではないシックな高級感を醸し出し、英国車ならではの味わい。なるほど、ジャガーのSUVはライバルとは確かに違うし、存在する意味があると腑(ふ)に落ちたものだ。
後発でありながらしっかりと個性的なSUVを送り出せるのは、やはり歴史のなせる技だろう。もともとジャガーは、1950年代のル・マン24時間レースを席巻し、その実績でスポーツカーをヒットさせたブランドだ。ただ速いだけでなく、ドライバーの感性に寄り添うF-ペイスの操縦性には、レーシングマシンとスポーツカーづくりで培ってきたノウハウが詰め込まれていた。
また、趣味のいいインテリアには、1960年代後半以降にジャガーの世界的な評価を確定させた、高級スポーツサルーン「XJ」が培った50年来の知見が生かされている。ちなみにジャガーは、英国王室御用達を意味する「ロイヤルワラント」を与えられている。これは形式だけの名誉ではなく、王室が本当に愛用している製品やサービスだけが受けられる認可でクオリティはまさにお墨付きだ。
もうひとつ大事なことは、21世紀に入ってからジャガーとランドローバーが同じ会社になったという事実である。タフな四輪駆動車を作り続けてきたランドローバーの経験を、ジャガーは自社初のSUVに存分と注ぎ込むことができた。
スポーツカーと高級車、そしてSUVのエキスパートが開発したドリームカー。きらりと光るF-ペイスの個性は、このような背景から生まれたのだ。2月から日本でも予約開始された2021年モデルの F-ペイスは、フロントグリルの大型化やスリム化したLEDヘッドランプでよりシャープな表情に生まれ変わった。
外観のお色直しよりも印象的なのはインテリアがモダンになったこと。ダッシュボードの中央には11.4インチのタッチスクリーンが鎮座し、オンラインサービスを強化した「Pivi Pro」を標準装備する。インターネットに接続したり、自動運転に近い運転支援装置を備えたり、現在のクルマは高度な操作が必要であるけれど、そうした新テクノロジーを直感で操作できるインターフェイスだ。
マイルドハイブリッドシステムを備えた2.0リッターのディーゼルターボエンジンが加わったこともトピック。これでパワートレーンは、既存の2.0リッターのガソリンンターボ、5.0リッターのスーパーチャージドガソリンを含めた三本立てとなった。
歴史と伝統をバックボーンに、電動化や周辺機器などネットワークへの接続のしやすさといった自動車の最新トレンドをおさえながら、ジャガー F-ペイスは進化を続けている。
ジャガー F-ペイス 車両本体価格:7,100,000円(税込)
- ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
- ※価格には保険料、税金(消費税除く)、自動車リサイクル料金、その他登録等に伴う費用等は含まれておりません。
- ボディサイズ | 4755 X 全幅 1935 X 全高 1655 mm
- ホイールベース | 2875 mm
- 車両重量 | 1930 Kg
- エンジン | 直列4気筒 DOHC ターボ
- 排気量 | 1995 cc
- 最高出力 | 250 ps(184 kW)/ 5500 rpm
- 最大トルク | 365 N・m / 1300 - 4500 rpm
- Text : Takeshi Sato
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