
BYDが日本市場に投入する5番目のモデル「シーライオン6」。全長4775mmのクロスオーバーSUVというサイズ感は、メルセデス・ベンツでいえば「GLC」クラスにあたり、いわばファミリーカーの王道ど真ん中に位置する。だが、このモデルが注目を集める理由は、ボディサイズでも装備でもない。BYDが日本で初めて“ハイブリッド”を導入したという一点に尽きる。
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これまで日本ではBEV専業のイメージが強かったが、シーライオン6ではプラグインハイブリッド(PHEV)を採用した。今回試乗したFF(前輪駆動)に加え、AWD(四輪駆動)もラインアップされる。

注目すべきは航続距離だ。レギュラーガソリン対応で、ガソリンと電気を満タンにした状態で最大1200km。床下には18.3kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載し、EV走行のみでも約100kmをカバーする。日常はほぼ電気、遠出はガソリンで不安なし。数字が語るのは、余裕そのものだ。

価格設定も相変わらず強烈だ。他ブランドではオプション扱いになりがちな装備を標準で揃え、FFモデルは398.2万円、AWDでも448.8万円。このサイズ、この内容で400万円を切るという事実は、無視できない。

「シーライオン」という名はアシカを意味し、海洋生物をモデル名に用いるBYDの流儀にのっとったもの。エクステリアは切れ長のヘッドランプにBYDらしさを残しつつ、主張は控えめ。良く言えばクセがなく、悪く言えば印象に残りにくい。だが、このクラスのファミリーSUVにおいて、それはむしろ正解だろう。

インテリアも同様で、大型センターモニターを据えた現代的な構成ながら、シフトレバーはあえてセンターコンソールに配置。奇をてらわず、誰でもすぐに理解できる。

前席・後席ともに空間は広く、とくに後席の足元は、シートバック形状の工夫もあって余裕がある。一方でラゲッジは縦長傾向のため、キャディバッグは斜め積みが現実的。使い勝手は平均点だが、不満も少ない。

では走らせてみよう。スタートボタンを押してもエンジンは目覚めない。まずクルマを動かすのはモーターだ。静かに、そして滑らかに車体が前へと出る。この瞬間、PHEVというより“電気自動車寄り”の感覚が強い。1.5リッター、自然吸気エンジンは最高出力98psと、スペック表だけを見れば心許ない。だが実走では、その印象は完全に裏切られる。アクセルを踏み増せば、モーターが即座にトルクを立ち上げ、ストレスなく速度を乗せていく。

BYDが「DM-i(デュアルモード・インテリジェンス)」と呼ぶこのPHEVシステムは、あくまでモーターが主役。エンジンは発電と補助に徹する黒子的存在だ。 強めにスロットルを踏み込むと、遅れてエンジンが始動するが、その介入は唐突ではない。「エンジンが頑張る」のではなく、「必要なときだけ仕事をする」。その割り切りが、走りを自然なものにしている。

乗り心地は、厚みのあるタイヤが路面のショックを丁寧に吸収する穏やかなもので、このあたりは上質な国産車を思わせる。一方、ステアリングは中立付近がシャープで、軽く切り込むと素直にノーズが向きを変える。このあたりには、ヨーロッパ車的な味付けも感じられる。決してスポーティではないが、退屈もしない。家族を乗せて走るクルマとして、必要十分なバランス感覚を備えている。

ADAS(先進運転支援システム)の完成度も高い。ステアリングスポークのスイッチで操作する運転支援は、レーンキープの制御も穏やかで違和感がない。突出した個性はないが、「足りない」と感じる場面もほぼない。そして最後に残るのは、やはり価格だ。このサイズ、この走行性能、この航続距離で400万円を切る。数字だけを並べれば簡単だが、実際に走らせると、そのコストパフォーマンスの高さがよりリアルに伝わってくる。

昨年、BYDはハイブリッドを460万台、BEVを226万台販売した。BEVの販売台数ではテスラを上回り、世界一となった。日本市場でも前年比7割増という伸びを記録している。 今年は話題のBEV軽自動車を含む2台の新型を加え、計8モデル体制で展開予定。性能、価格、そして勢い——。2026年の日本市場において、BYDはもはや“無視できない存在”ではなく“基準のひとつ”になりつつある。

BYD シーライオン6 車両本体価格 398.2万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4775 X 全幅 1890 X 全高 1670 mm
- ホイールベース | 2765 mm
- 車両重量 | 1940 kg
- エンジン | 直列4気筒+電動ターボ
- 排気量 | 1489 cc
- エンジン最高出力 | 98 ps(72 kW)
- エンジン最大トルク | 122 N・m
- モーター最高出力 | 146 ps(72 kW)
- モーター最大トルク | 300 N・m
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Text : Takuo Yoshida








