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主人公のCEOは宇宙人?前代未聞の衝撃的な結末『ブゴニア』

🄫2025 FOCUS FEATURES LLC.

慌ただしい日常から一瞬で別世界へと誘ってくれる映画。毎月たくさんの作品が世に送り出される中で、BRUDERの読者にぜひ観てほしい良作を映画ライターの圷 滋夫(あくつしげお)さんに選んでいただきました。

『ブゴニア』/2月13日(金)公開

『哀れなるものたち』(2023)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞やアカデミー賞4冠に輝いたヨルゴス・ランティモス監督の新作で、韓国映画の怪作『地球を守れ!』(2003)を大胆に再構築した一筋縄ではいかないエンタメ作品です。主演はランティモスと『女王陛下のお気に入り』(2018)以降5作連続(短編を含む)でタッグを組むオスカー俳優エマ・ストーンと、近年著しい活躍を見せランティモス作品は前作『憐れみの3章』(2024)に続く出演となるジェシー・プレモンスの二人。物語が進むにつれて印象が変化していく役柄を完璧に演じています。特にストーンは、大企業のCEOという颯爽(さっそう)とした姿や、実際に頭を剃ってスキンヘッドになる場面もあり、圧倒的な存在感に魅了されます。

大手製薬会社のカリスマCEOが拉致監禁され、「CEOは地球を滅ぼす宇宙人」という陰謀論に取り憑かれた話の通じない誘拐犯と、それをなんとか言いくるめようとする人質との丁々発止の駆け引きが描かれます。形勢が二転三転する中で、少しずつ犯人と会社、そしてCEOとの過去の関係が明らかになってゆきます。やがて誰も予想できない怒とうの展開を見せ、前代未聞の衝撃的な結末を迎えます。

監督はこれまで、人間が本質的に備えている醜さや欲望など内面の暗部をあぶり出してきました。本作ではそれを踏襲しながら、外側にも視線を向けて、行き過ぎた資本主義社会と人間との関係を風刺的なブラックコメディとしてスリリングに描いています。それは政治的な左右の対立でも貧富の格差でもなく、何かを盲信する者とそれを信じない者(そこには観客も含まれるでしょう)の相容れなさの話です。不安や孤立感が肥大し、誇大妄想や陰謀論と結びついて現代社会の巨大な病巣となっていく様には、笑いと表裏一体のジリジリとした恐怖を感じるでしょう。

登場人物の関係は、現代社会のリアルを鏡のように映し出しており、その隔たりには、理論や知性では対抗できない得体の知れない感覚があります。これはランティモス作品の最も特徴的な要素ですが、過去の作品では不条理な規則や状況をフィクションとして描いてきました。ところが本作では、現実社会がその感覚に追いつき歪んだ世界観のまま成立しています。もはや架空の設定をする必要がないのです。同じことが、製作者として参加しているアリ・アスター監督の最新作『エディントンへようこそ』にも言えるでしょう。そうした浅薄な分析をあざ笑い、安易な先入観をぶち壊すかのように、ランティモスはまったく予測不能な混沌の中へと、いきなり観客を突き落とします。さらに先を行く荒唐無稽でアナーキーな不条理感こそが、ランティモス作品の醍醐味であり、心震わす面白さなのです。

本作は今年のゴールデングローブ賞で作品賞、プレモンスとストーンが主演男優賞、主演女優賞にノミネートされました。さらに注目したいのが、映画初出演ながら重要な鍵を握るエイダン・デルビスです。独特な空気をまとった内気で繊細そうな姿は、悲しみや切なさまで感じさせ、3人の見事なアンサンブルを見せてくれます。

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『ブゴニア』 https://gaga.ne.jp/bugonia/
配給:ギャガ ユニバーサル映画
PG12



圷 滋夫(あくつ・しげお)/映画・音楽ライター

映画配給会社に20年以上勤務して宣伝を担当。その後フリーランスになり主に映画と音楽のライターとして活動。鑑賞マニアで映画とライブの他に、演劇や落語、現代美術、コンテンポラリーダンス、サッカーなどにも通じている。

Edit : Yu Sakamoto

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