
自動車界の頂点に立つブランドといえば数あれど、フェラーリほど確固たる存在感を放つブランドはない。F1グランプリの初年度から現在に至るまで参戦を続け、ロードカーでも数々の伝説を築いてきた。そのフェラーリが、ときに特別な顧客のためだけに製作するワンオフモデル──「SC40」もそのひとつである。
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フェラーリで“40”という数字を聞けば、誰もが思い浮かべるのはあの「F40」だろう。1987年、フェラーリ40周年を記念して誕生した伝説的スーパースポーツ。SC40は、そのスピリットを現代に蘇らせた一台だ。低く構えたフロントノーズ、ワイドなリアウイング――どこかF40を思わせるフォルムに、誰もが心を奪われる。

ベースとなったのは、現行のプラグインハイブリッド「296GTB」。ミッドシップに搭載される3.0リッターV6ツインターボエンジンは、単体で663psを発揮。さらにモーターを組み合わせることで、システム総出力は驚異の830psに達する。伝統の赤い跳ね馬が、電動化の時代に見せる“新しい情熱”がここにある。

エンジンルームに目を凝らすと、往年のF40への明確なオマージュが見えてくる。緑がかったパネルは、カーボンとケブラーを組み合わせたF40のシャシー構造を彷彿とさせるもの。素材の織りが、時代を超えてフェラーリの哲学を語る。

インテリアもまた、赤いアルカンターラとファブリックを用いたバケットシート、グレーがかったブラックの空間――F40を愛したファンなら、思わず頬が緩むはずだ。近年のフェラーリは、「12チリンドリ」で“デイトナ”を、「849テスタロッサ」で’80年代の熱狂を現代に再構築するなど、過去の名車へのリスペクトを未来の造形に昇華している。SC40もその流れを汲みながら、“レトロ”という言葉では語れない鮮烈な存在感を放つ。

もちろんSC40は、世界に1台だけのワンオフモデル。白くペイントされたその個体は、特別なオーナーのもとに届けられるのみ。一般販売されることはない。実車以外では、フェラーリ・ミュージアムに原寸大のモックアップが収蔵されるのみだ。手に入れることは叶わなくとも、その存在を知るだけで心が昂ぶる。そんな“手の届かない夢”を具現化するあたりにこそ、フェラーリというブランドの本質がある。

フェラーリ SC40 車両本体価格: 未定
- ボディサイズ | 全長 4700 X 全幅 1975 X 全高 1198 mm
- ホイールベース | 2600 mm
- 車両重量 | 1550 kg
- エンジン | V型6気筒ターボ + モーター
- 排気量 | 2992 cc
- 最高出力 | 663 ps(488 kW) / 8000 rpm
- 最大トルク | 740 N・m / 6250 rpm
- モーター最高出力 | 167 ps(70 kW)
- モーター最大トルク | 315 N・m
- トータル最大出力 | 830 ps
- 変速機 | 8速 DCT(AT)
- 最高速度 | 330 ㎞ / h
Text : Takuo Yoshida








