粋なスタイルに走りは“見た目以上”アバルト「500e」

初めてのBEV(電気自動車)を選ぶとして、最適な一台は果たしてどんなモデルか。最大か最小のどちらかに振り切ってみるという考え方はどうだろう? フルサイズボディで一充電あたりの走行距離が600kmを超えるモデルか、もしくは200~300㎞程度のコンパクトなシティコミューターか、ということになる。

<関連記事>ロータスの新時代が到来 100%電気自動車の「エレトレ」を発表

前者はメルセデス「EQS」やBMW「i7」あたり、後者はフィアット「500e」が順当な選択肢になるだろうか。そこに待ったをかける最新モデルが今回の主役、アバルト「500e」だ。先ごろ上陸したばかりのアバルト500eは、2022年春に登場したフィアット500eのアバルト(イタリアの自動車子会社、主にフィアットのチューニングパーツや改造車の販売を行う)版だ。フィアット500eの最高出力が118psに対し、アバルトは155psとパワフルなスペックになっている。

床下に搭載されているバッテリーの容量はフィアットもアバルトも同じ42kWhだが、アバルトの方が一充電走行距離は少なくなる。WLTCモードで比べると、フィアットが335kmに対し、アバルトは303kmと1割ほど短い。とはいえシティコミューターとして考えれば、300kmほど走ってくれれば十分。例えば、郊外のゴルフ場までの往復でも、行き先に充電設備さえあれば問題ない。BEVというと、どうしても走行距離に注目が集まってしまいがちだが、アバルトの場合はキャラクターがどれくらい凝縮されているか、という点がキーになるはず。見た目は、強烈そのもの。テーマカラーであるアシッドグリーンのボディは特別感に満ちている。またフィアット版では「500」と書いてあるだけの鼻先のエンブレムは「ABARTH(アバルト)」となっているので、一目で分かる。

アバルトらしいのは見た目だけではなかった。スロットルを踏み込むとBEVらしからぬドスの効いた排気音がこだまする。ガソリンモデルのオプションとして有名な「レコードモンツァ(スポーツマフラー)」の音を、「サウンドジェネレーター」と呼ばれるシステムが忠実に再現しているのだ。加速はというと155psというスペックから想像される以上に鋭く、またフィアット版より締め上げられているサスペンションは、その鋭さも負けていない。

フィアット500eとはっきりと異なるアバルトらしさを体感した後では、アバルト500eの615万円という価格にも納得がいく。ちなみにフィアット500eのベースモデルであるポップは473万円なので、その差は142万円だ。だがフィアットとアバルトの関係を、BMWとBMW Mや、メルセデスとメルセデスAMGといったドイツ車に置き換えて考えると、ずいぶんとリーズナブルという捉え方もできるはずだ。

おそらくアバルト500eを指名買いするオーナーのガレージには、航続距離を気にすることのない大き目のクルマがあるはず。だとすれば充電コードをあまり頻繁につなぐ必要はないかもしれない。普段使いのシティコミューターとして割り切れば、これより粋な一台は現在の輸入車市場にはない、というのが今回の結論だ。

アバルト 500e  車両本体価格: 615万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 3675 X 全幅 1685 X 全高 1520 mm
  • ホイールベース | 2320 mm
  • 車両重量 | 1360 kg
  • システム最高出力 | 155ps (114kw)
  • システム最大トルク | 235Nm
  • バッテリー容量 | 42kWh
  • 一充電走行距離 | 303 ㎞(WLTCモード)

お問い合わせ先

Text : Takuo Yoshida

閉じる