BMW 「X6Mコンペティション」は、今年いちばんお薦めしたいモデルだ。モータースポーツ由来のMシリーズで、今をときめくクーペライクなSUVタイプのボディを特徴としている。ハイパフォーマンスがうかがえる筋肉質なボディと、スーパーカーもかくや、というほどの圧倒的なパワー。広々とした室内と、シャープな印象でまとめたインテリアなど、おおよそ弱点が見当たらないモデルである。
ベースとなった「X6」は2008年に初代が誕生し、現行型は3代目で2019年にデビューした。今回試乗したモデルは今年4月に販売がスタートした後期型だ。ワゴンタイプボディを持つ「X5」のルーフ後部を流れるようなラインでテールエンドに導くことで、クーペライクなシルエットに仕上げた派生モデルということになる。実用性を重視したベーシックなX5に対し、同じ5ドアボディでありながら美しさを強調したモデルがX6。そこに外観の美しさだけでなく、圧倒的な動力性能を加味したモデルである。
このスペシャルモデルを手掛けたのは、モータースポーツの頭文字であるMを象徴とするBMW Mモータースポーツ社である。「公道を走れるレーシングカー」をコンセプトに、彼らが手掛けたシリーズは、古くからマニア垂涎の一台として人気を集めている。先に記したように、特徴は「弱点がない」ことだ。具体的にいえば、ヘッドライトが細くなり、より迫力を増したフロントマスクとしたことで、誰にでも「特殊なモデル」であることが伝わりやすくなっていること。さらに、同社が開発した625psを発揮する4.4リッターのツインターボV8エンジンは、新たにMHPV(マイルドハイブリッドユニット)に進化。8速Mステップトロニック・トランスミッションやAWDシステムと併せ、0-100km/h加速はわずか3.9秒という快速ぶりを秘めている。
またSUVらしい高めのアイポイントから広い視界を確保しつつ、21インチタイヤや専用セッティングのアダプティブサスペンションが、並のスポーツカーを軽く凌駕するほどの高いコーナリング性能を持っている点も見逃せない。最新モデルということでいえば、インフォテイメントの操作系も洗練された。12.3インチと14.9インチの2枚のパネルを湾曲させてつないだ「カーブド・ディスプレイ」を新たに装備。もちろん現代のBMWの象徴的なシステムである「ハンズオフ」によるドライブも可能になっている。これは渋滞時、一定の条件下でステアリングアシストを含むアダプティブクルーズコントロールを、ステアリングから手を放した状態で行えるものだ。
ドライブして感じるのは、全体的な性能の底上げである。パワーだけが突出していたり、乗り心地がゴツゴツしていたりという、ハイパフォーマンスモデルによくある「我慢しなければならない部分」が見当たらない。625psものパワーも、誰もが容易に扱えるようにしつけられている。高性能の先にあるまろやかさこそ、最新Mモデルの特徴だ。
早朝に高速道路を飛ばしてゴルフ場に向かう際の手応えあるスポーティな走りと、帰路の渋滞にはまってしまった際の安楽なハンズオフドライブという、両極端のシチュエーションが完璧なかたちで同居している。さらにうれしいポイントとしてもう一つ、ゴルフ場の駐車場で放つ「説明不要の風格」もあるはずだ。
対外的なアピールも十分。実際は驚速だが、それでいて普段使いでも全くストレスがない。以上がこのクルマを今年いちばんお薦めしたい理由だ。
BMW X6Mコンペティション 車両本体価格: 2012万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4955 X 全幅 2020 X 全高 1695 mm
- ホイールベース | 2970 mm
- 車両重量 | 2400 kg
- エンジン | V8ツインターボ+MHEV
- 排気量 | 4394 cc
- 最高出力 | 625 ps(460 kW) / 6000 rpm
- 最大トルク | 750 N・m / 1800 - 5500 rpm
- 変速機 | 8速 AT
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Text : Takuo Yoshida