プレミアムなクルマが欲しいと考えた場合、ミドルサイズ以上のモデルならそれほどクルマ選びで悩むことはないだろう。難しいのはコンパクトカーの場合だ。特に実用的かつ“気の利いた” Cセグメントサイズの5ドアハッチバックとなると、選択の幅は極端に狭まってくる。容易に思い浮かぶのはVW「ゴルフR」やアウディ「RS3」、メルセデスAMG「A35 4MATIC」あたり。つまりドイツ車一辺倒になってしまうわけだ。
だが少し視野を広げると、クルマ好きの感性を刺激するフランス車が入ってくる。それが今回紹介するルノー「メガーヌR.S.」だ。ルノーが誇るホットハッチは、量産前輪駆動車(FF)の世界最速記録を塗り替えるために生まれたようなスペシャルモデル。つまりポルシェで言うところの「911GT3RS」のような存在、と言ったらわかりやすいだろうか。
今年のはじめ、ルノーはメガーヌR.S.のファイナルモデルとして、世界限定1976台の「ウルティム」をリリースした。ウルティムのベースとなったモデルは、メガーヌR.S.の中でもサーキット走行に特化したシャシーセッティングの「トロフィー」と呼ばれるグレードだ。
サスペンションにはロール剛性を高めた専用スプリングを装着。トルセンLSD(旋回時に左右輪もしくは前後輪のトルクを最適配分する駆動装置)によって高いトラクション性能も備えているが、これらは外観からは伺い知ることができないマニアックな装備といえる。
外観上の識別ポイントとしてはFuji Light、19インチホイール(ブラック仕上げ)と、ボンネットやドアに貼られた“ロサンジュ”と呼ばれる黒いひし形のデカール(プラスチックフィルム)の存在が挙げられる。
敢えてウルティムを選ぶ理由は、サーキットアタックを狙った繊細なシャシーセッティングと、5ドアハッチバックならではの実用性の融合にあるといっていい。メガーヌR.S.は3代目から3ドア→5ドアに変更。ギアボックスは6速マニュアルだけでなく、6速EDC(デュアルクラッチAT)も選べるようになったことで、より実用性が高まり人気を集めた。
また、コンパクトモデルに採用されることが珍しい“4コントロール”と呼ばれる後輪操舵システムも、現行メガーヌR.S.を象徴する装備といえる。リムジンのような大型モデルの後輪操舵は小回りを可能にするためのものだが、メガーヌR.S.の場合は少ないステアリング舵角でコーナーをスムーズに抜けるためのギミックなのである。
ポルシェ911GT3RSと同じように、ウルティムはまるで戦闘機のようなスペシャルモデルだ。とびきりの速さと引き換えに、乗り心地は硬めで、ステアリングを通して感じる手応えは重厚な部類に入る。それでも大人5人が乗車できる実用性があり、2人でゴルフに行く場面でもキャディバッグ2本を収納できる使い勝手の良さは、魅力の一つといえそうだ。
プレミアムカーならではのオーラも持ち合わせ、「その手があったか!」とクルマ好きが唸る、気の利いた選択肢だと思う。
ルノー メガーヌR.S.ウルティム 車両本体価格: 695万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4410 X 全幅 1875 X 全高 1465 mm
- ホイールベース | 2670 mm
- 車両重量 | 1693 kg
- エンジン | 直列4気筒ターボ
- 排気量 | 1798 cc
- 変速機 | 6速MT / 6速EDC(デュアルクラッチAT)
- 最高出力 | 300 ps(221 kW) / 6000 rpm
- 最大トルク | 420 N・m / 3200 rpm
お問い合わせ先
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ルノー・ジャポン
www.renault.jp
Text : Takuo Yoshida