新型「レンジローバー スポーツ」をあえて選びたい理由

新型「レンジローバー スポーツ」がデビューし、日本の路上を走り始めている。3代目となったスポーティなレンジローバーはどのように進化し、どのような魅力が隠されているのか、実際にステアリングを握って確認してみた。

「レンジローバー」という伝統的なモデルネームに“スポーツ”のサブネームを追加し、落ち着きを払って威風堂々としているだけでなく、アクティブな感性を前面に押し出したモデルを望んでいる人に向けた一台といえる。2005年に初代“スポーツ”がデビューした時の狙いもそこだが、どちらかといえばカタチ優先。車名に相応しいポテンシャルは2代目になってから宿った。

3代目もファーストインパクトはスタイリングにあった。兄貴分のレンジローバーと比べると、鋭く細めのヘッドランプが目を引き、無駄な造形の一切をそぎ落としたようなボディと一体感がある。成功作となった先代の延長線上にあるデザインだが、スパッと垂直に切り落とされたようなボディ側面のカタチによって、ひと目で新型と分かるデザインだ。

プラットフォームはレンジローバーと同じくアルミニウム主体のMLA-Flexを採用。パワートレーンはガソリンとディーゼルともに3.0リッター・直6、MHEVが用意されるが、P400と呼ばれるガソリンモデルはファーストエディションのみで完売しており、現在はD300、つまりディーゼルMHEVのみ選択できる。

直線基調で颯爽としたエクステリアのデザインはインテリアにも通じている。ダッシュパネルから浮き上がったように見える13.1インチのモニター内と、センターコンソール付近に集約された操作系は直感的で非常に扱いやすい。シートはレンジローバーらしくゆったりとして豪奢な感じがするが、実際に腰掛けてみるとホールド性の高さに驚かされた。また試乗したクルマの表皮はウルトラファブリックと呼ばれる人工皮革だったが、いつもの高級皮革よりも滑りにくく、レンジローバーに相応しい質感の高い素材だと感じられた。

フロントシートのみならずリアシートも足元スペースを含め、充分な空間が確保されていた。とはいえ、だだっ広いというより、静かさも含めたストレスのない快適な室内になっているあたりはレンジローバーらしいといえるだろう。リアゲートは上下2分割のレンジローバーとは違い、1枚もののゲートが上方に開く。広々としたラゲッジスペースは側面もしっかり抉(えぐ)られているので、ゴルファーの期待にしっかりと応えられるはずだ。

ドライブフィールの白眉は乗り心地だった。というと、“スポーツ”の名に相応しくないと感じる人もいるかもしれないが、これは先代オーナーがうらやましがる明らかなベネフィットだと思う。フワフワ感が増したわけでもなく、エアスプリングの設定が柔らかくなった感じでもない。ただ路面の凹凸や車体の動きを非常に繊細に、しっとりと抑えられるようになっている。

現行モデルは最新の骨格を得て確実に進化を果たしているが、得たものは異なる。兄貴分のレンジローバーは、従来の懐の深い乗り心地の良さにスポーティなハンドリングが追加されている。一方のレンジローバー スポーツはこれとは逆で、従来のスポーティさに当たりの柔らかい乗り心地がプラスされている。

フルサイズのプレミアムSUVで、本気でサーキットや山道を攻めるオーナーは稀だと思う。だからスタイリングは飛び切りスポーティで、しかし実際に乗ってみるとドライバーの運転操作に忠実というだけでなく、乗り心地がすこぶるいいという新型レンジローバー スポーツのキャラクターは理想的ではないか。郊外のゴルフ場を目指すゴルファーたちが敢えて選びたい、今最もイケてるランドローバー、そう言い切ってしまいたくなる一台だ。

ランドローバー レンジローバースポーツオートバイオグラフィー   車両本体価格: 1475万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4960 X 全幅 2005 X 全高 1700 mm
  • ホイールベース | 2995 mm
  • 車両重量 | 2450 kg
  • エンジン | 6気筒 ターボチャージドディーゼル MHEV
  • 排気量 | 2993 cc
  • 変速機 | 8速 AT
  • 最高出力 | 300 ps(221 kW) / 4000 rpm
  • 最大トルク | 650 N・m / 1500 - 2500 rpm

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Text : Takuo Yoshida

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