メルセデス-AMGはAMG創立50周年を記念し、フランクフルト・モーターショーにおいてF1グランプリで培ったハイブリッドテクノロジーを惜しげもなく投入した2シータースーパースポーツ、「Project One(プロジェクトワン)」を発表した。このスペシャルモデルは、英国ブリックスワースのメルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインと、英国ブラックリーのメルセデスAMGペトロナスF1チームの協力で開発。生産はメルセデス-AMGによって行われる。
フランクフルトショーのプレスデイで行われたProject Oneのお披露目には、メルセデスAMGペトロナスF1チームに在籍する、ルイス・ハミルトンが実際にステアリングを握って登場。「信じられないマシンだね。F1のテクノロジーをベースとするクルマをこうやって紹介できることを誇りに思う。早くドライブしたい」と語り、ダイムラーのディーター・ツェッチェ会長と共に、このエキサイティングな新プロジェクトの発表を祝った。
ミッドにはF1マシンと同じ1.6リッター90度V型シングルターボチャージドユニットが搭載され、リヤを駆動。さらにF1と同じ、ブレーキの熱エネルギーを回生する「MGU-K」によりリヤに120kwが追加され、電動ターボチャージャーともいえる「MGU-H」によりターボラグを大幅に軽減する。これに加え、左右の前輪には120kwのモーターも内臓され、プラグインハイブリッドユニットシステム全体で1000psという馬力を発揮。このパワーユニット最大の特徴のひとつが抜群のレスポンスにある。ターボチャージャーにも関わらず、その反応スピードは自然吸気V8ユニットよりもクイックだとメルセデス-AMGは語る。気になるパフォーマンスは最高速度は350km/h、0→200m加速が6秒を記録するという。
F1マシンと同じパワーユニットを搭載し、驚くべきパフォーマンスを発揮するスーパースポーツでありながら、昨今の環境負荷にも対応しており、電動モーターのみで約25kmもの走行が可能だ。またV6エンジンと、MGU-HとMGU-Kによる熱効率は40%以上。 従来の市販ガソリンモデルの熱効率が33~38%だと考えると、Project Oneが1リットルの燃料からいかに多くの駆動エネルギーを得ているか分かるだろう。トランスミッションは、メルセデス-AMGが専用設計した8速油圧式「AMGスピードシフト8」を搭載する。
ボディには、F1のテクノロジーがふんだんに投入されたカーボンコンポジット製モノコックボディを採用。低く構えたデザインは筋肉質でありながら、流麗さもたたえており、ドアにはかつてのマクラーレンF1のように前方に持ち上がるバタフライドアが採用された。エンジンフード上部に設けられたエアインテークからは、F1マシンでおなじみのバーティカルウィング(シャークフィン)を採用。カラーリングはシルバーとブラックをベースに、アクセントのペトロナスグリーンが加えられており、メルセデスAMGペトロナスF1チームの意匠が生かされている。
インテリアはシンプルながらも、ふたつの10インチディスプレイが目立つ。F1マシンと見まごうばかりのステアリングホイールには、現代のスーパースポーツらしくエアバッグを装備。ステアリング上のスイッチはサスペンションの調整、ドライブモードの切り替えなどが可能だ。もちろんパワーウィンドウも備えている。
「Project Oneは、F1マシンによって培われたテクノロジーを、市販ユースへと具現化した初めてのモデル。私たちにとってモータースポーツは、参戦して終わりというわけではない。グランプリで熾烈な戦いを繰り広げる中で、生産モデルにつながる技術を磨いてきた。我々がF1においてタイトルを目指す過程によってテクノロジーが磨かれ、このメルセデスAMG Project Oneに持ち込まれたと考えている」と、ツェッチェ会長は胸を張る。
改めて、驚くべきことは”公道を走れるF1”とも言うべきProject Oneが、このまま市販されるということだろう。F1やモータースポーツのイメージを落とし込んだ市販モデル、もしくはレーシングカーをそのまま公道に持ち込んだワンオフモデルは、これまでいくつもあった。しかし、F1直結のパワーユニットを搭載した車両をある程度のボリュームで生産することは、メルセデスだからこそ出来たと言えるかもしれない。気になる価格は227万5000ユーロ(約3億円)、生産予定の275台はすでに予約で終了した。2018年から1日1台のペースで生産され、カスタマーへと供給される。
さて、この3億円というプライス、「高い」と感じるだろうか? だが、所有しているだけで年々価値が上がることが、保証された1台でもあるのだ。
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