KEN OKUYAMA CARSを主催し、世界的なカーデザイナーのケン・オクヤマ(奥山清行)氏が手がけた1台限りのスーパースポーツ「Kode 0」が、アメリカで開催された「モントレー・クエール・モータースポーツギャザリング」において発表された。イタリアのカロッツェリア、ピニンファリーナのデザインディレクターを務めた経験を持つケン・オクヤマ氏は、これまでエンツォ・フェラーリ、マセラティ・クワトロポルテをはじめ、数々のショーモデルのデザインも担当した経験を持つ。今回発表されたKode 0は、昨年の同イベントで公開された2シーターオープンKode 57に続くフォーリセリエ(ワンオフ)モデルとなる
Kode 0のデザインは、1969~1970年に登場したランチア・ストラトスゼロ、ランボルギーニ・カウンタック、フェラーリ・モデューロといった数々のスーパースポーツを、現代のテクノロジーで蘇らせることをコンセプトとしている。特にWRCで活躍したランチア・ストラトスのコンセプトカーとして登場したストラトス・ゼロのウェッジシェイプの影響は、Kode 0から強く見て取れる。スタイリングテーマは、低いノーズからAピラー、Cピラーを経てリヤエンドまで至る一本の線でつながったワンモーションフォルム。ブランドのスタイリングによる差別化や、昨今のレギュレーションに縛られたレーシングカーの空力デバイスへの迎合など、現在のデザイントレンドに対するアンチテーゼとなることを目指したという。
フロントセクションは、左右のAピラーに繋がるカーボンフェンダーに高輝度LEDヘッドライトを溶け込ませことで、かつてのリトラクタブルヘッドライト時代の“顔のない”スーパースポーツ思い起こさせる表情を演出。また、ブレーキクーリングエアダクトを支えるノーズウィングにより、ノーズからアンダーボディへの整流を行い、充分なダウンフォースを得ている。
ベルトラインに沿ったドア内蔵エアインテークは、前面投影面積を増やさずにカーボンファイバー製ルーバーからメインラジエターに十分なフレッシュエアを効率的に送り込む。冷却後のエアは、ボディーサイドとリヤのアウトレットから効率良く排出。さらにウィング形状のCピラーと共に、フロントからリヤへと流れる整流の最適化を実現した。このエアインテーク位置は、今後スーパースポーツの新たなトレンドとなると、KEN OKUYAMA CARSは自信を覗かせる。
リヤフェンダーとリヤセクションには6基の冷却ファンを搭載。この冷却ファンは、Kode 0のテーマカラーのメタリックグリーンにペイントされており、特にリヤ両サイドの大型ファンは見るものに大きなインパクトを与える存在だ。リヤエンドは短く切り落とされたショートオーバーハングとなり、薄い形状のLEDテールライトが高い位置に配置されている。トライアングル形状の左右エアアウトレットと、エキゾーストアウトレットは歴代「Kode」シリーズのDNAを表す特徴的な意匠。その中央に位置するアルミ削り出し内部放熱リブ付きリヤパネルは、ハンドメイドのステンレス製マフラーと一体化して装着されており、エキゾースト系の放熱板としても機能する。
Kode 0のデザイン・開発が行われたのはKEN OKUYAMA DESIGN青山スタジオ。最高品質のカーボンファイバーボディパネルの製造やアッセンブリ工程は、KEN OKUYAMA CARS山形ファクトリーにおいて、全てハンドメイドで行われた。ベースとなったのはランボルギーニのフラッグシップモデルであるアヴェンタドールで、カーボンファイバーモノコックに700psを発揮するランボルギーニ製6.5・V型12気筒NAエンジンをミッドに搭載。ボディにカーボン製コンポーネンツを多用した結果、1550kgという軽量化も実現。ベースのアヴェンタドールから20kg以上軽くなったことで、ドライビングパフォーマンスも大幅に向上しているはずだ。
今回発表されたKode 0はワンオフモデルであり、価格も公開されていないため、デザインコンセプトの意味合いが強い。ケン・オクヤマ氏が愛する70年代前半スーパースポーツが持つ自由なデザインを持ち、「様々なしがらみに縛られた現在の市販モデルに対すアンチテーゼ」を具現化したとも言えるKode 0は、このまま市販という訳にもいかなそうだ。しかし、KEN OKUYAMA CARSは、Kode7、Kode9という少量生産スポーツカーの開発から製造・販売も行っている。今後、販売される可能性もけして”ゼロ”とは言えないのだ。