日本市場に新風を マセラティSUV「グレカーレ」が秘める野心と可能性

2022年5月に、いよいよマセラティ「グレカーレ」の日本受注がスタートした。グレカーレとは、マセラティにとって「レヴァンテ」に続く第2のSUV。“いよいよ”と記したのは、世界的な半導体不足の影響により生産スケジュールが遅れていたからで、首を長くして待っていたファンは多かったに違いない。 日本での発売は2023年以降を予定。試乗できる機会はまだ先になるが、事前情報を見る限り、間違いなく日本で売れるだろうと思える2つの理由を示したい。

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そのひとつは絶妙なサイズ感だ。世界的なヒット作となったレヴァンテは、全長が5000mmを超える威風堂々としたサイズで、ホイールベースも3000mm超だった。一方のグレカーレは、ベーシックグレードである「GT」の全長が4846mmで、ホイールベースが2901mm。レヴァンテとグレカーレの関係をざっくりと例えるなら、ポルシェにおける「カイエン」と「マカン」に近い。 トヨタ「ハリアー」よりもひと回りほど大きいサイズだから、日本の道路事情でも扱いやすいはず。ホイールベースがレヴァンテより100mm以上も短いことから小回りも利くはずで、日本の駐車場環境でも取り回しに困ることはないだろう。

しかも、少しコンパクトなサイズながら、きれいな弧を描くルーフラインなどの伸びやかなデザインは失われていない。また、リアのブーメラン型のテールランプはイタリアを代表するデザイン界の巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロが手がけたマセラティ「3200GT」のテールランプをモチーフにしたもの。こんな遊び心もイタリア車好きやマセラティのファンに刺さるだろう。さらに後席の広さはこのクラスのSUVでトップレベルだというから、ただの“ええカッコしぃ”ではなく、実用面にも期待できる。

もうひとつの理由は、ベース仕様のGTが862万円からという戦略的な価格設定。名門マセラティのエンブレムが付いたSUVにこの価格で乗れるとは、かなりお値打ち感がある。 グレカーレには3つのグレードが用意され、GTは2.0リッター直列4気筒ターボエンジンを軸としたマイルドハイブリッド仕様。ベーシックなグレードとはいえ、最高出力は300psと十分以上だ。その上にはパワートレーンを330psに強化した「モデナ」があり、価格は1046万円からとなる。 最高性能の「トロフェオ」は、最高出力530psの3.0リッターV型6気筒ツインターボエンジンを搭載する。0-100km/h加速3.8秒を誇るスーパーSUVで、価格は1395万円から。ちなみにこのエンジンは、マセラティのフラグシップであるスーパースポーツ「MC20」が積むものをデチューンしたもの。MC20が軽く2500万円を超えることを思えば、この価格はバーゲンプライスといえる。

コンパクトでお値打ち価格だからといって、決して安っぽくしていないあたりは名門のプライドだろう。色艶のいいレザー、美しいステッチなどの豪奢なインテリアは、いかにもイタリアらしい華やかさに満ちているし、クラフトマンシップも感じさせる。 そして伝統のイタリアンラグジュアリーに、2つの液晶パネルを組み合わせたセンターコンソールの近未来感が組み合わされて、ハッとするような新しさがある。ラグジュアリーなブランドにとって、視覚的に驚きを与えることも大切なのだ。 グレカーレという車名は、地中海に吹く北東の風に由来する。風の名前を与えることはマセラティの伝統で、たとえば「ギブリ」はサハラ砂漠に吹く熱風、レヴァンテはスペインから地中海に吹き下ろす風。また、かつて存在した「ボーラ」はアドリア海に吹く風にちなんだものだった。

グレカーレもその名の通り、高級SUV市場に風を吹き込むだろう。ここ数年、日本市場におけるマセラティの販売台数は年間で約1000台と好調に推移している。グレカーレは年間1000台の販売を見込んでいるというから、計画通りに進めば、日本におけるマセラティの販売台数は倍になる計算。グレカーレの戦略的な値付けには、こうした期待と野心が込められているのだ。

マセラティ グレカーレ GT/車両本体価格:862万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4846 X 全幅 1948 X 全高 1670 mm
  • ホイールベース | 2901 mm
  • 車両重量 | 未発表
  • エンジン | 直列4気筒 ターボ MHEV BSG付
  • 排気量 | 1995 cc
  • 変速機 | 8速 AT
  • 最高出力 | 300 ps(221 kW) / 5750 rpm
  • 最大トルク | 450 N・m / 2000 - 4000 rpm
  • 最高速度 | 240 km/h
  • 0-100 km/h | 5.6 秒

Text : Takeshi Sato

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