“プロの計器”に相応しい機能充実と操作性　ブライトリング「エアロスペース B70 オービター」

スイス製の腕時計といえば、時計好きな人ほど「機械式モデル」をまず思い浮かべるだろう。確かに人気のスイス製モデルはほとんどが機械式だが、クォーツ式の名作もある。今回はブライトリング「エアロスペース」の最新モデルを紹介する。

1969年、日本の時計メーカーが世界で初めてクォーツ式の腕時計を製品化して発売し、クォーツ式ムーブメントの基本技術を公開した。その後、1970年代から80年代にかけてクォーツ式が主流になったため、「クォーツ式＝日本製」、「機械式＝スイス製」というイメージを抱いている人が多いのではないだろうか。

当時、クォーツ式時計を開発していたのは日本の時計ブランドだけではなかった。スイスの大手時計ブランドも、機械式より圧倒的に精度が高い「次世代の腕時計」として、クォーツ式の開発に全力で取り組み、製品化する直前だった。

日本にわずかに先を越されたものの、スイスの時計ブランドも翌1970年には、クォーツ式腕時計を発売した。だが半導体技術の進化によってクォーツ式ムーブメントが大量に生産され、安くて高精度なモデルが世界の時計市場を席巻したことを背景に、伝統的な製造体制を維持していたスイスの時計業界はこの価格競争に耐え切れず、一時的に壊滅的な状態に追い込まれた。

だが、この苦境から生まれた「精度という機能ではクォーツ式に劣る機械式時計を、伝統の職人技から生まれるラグジュアリーアイテムとして売り出す」という戦略が、1980年代後半から成功し、スイス時計は再び世界を席巻することになる。つまり「スイス製の腕時計＝職人による手作りの機械式」というイメージは、この戦略から生まれた。

ブライトリングは1980年代初頭からこの戦略をいち早く導入し、機械式時計ブームの立役者となったスイスの老舗時計ブランドだ。1979年に創業家3代目ウィリー・ブライトリングからブランドを引き継いだアーネスト・シュナイダーは、スイス軍の電子工学技術者で、機械式とクォーツ式の両方のモデルを展開した。1984年にリリースした機械式クロノグラフモデル「クロノマット」で90年代の機械式時計ブームを先取りする一方で、革新的なクォーツモデルの開発にも取り組み、1985年にはケースとブレスレットに軽量なチタンを採用したクォーツモデル「エアロスペース」を発売した。

文字盤の上下に液晶ディスプレイを備え、カレンダー、クロノグラフ、アラーム、デュアルタイムゾーン、カウントダウンタイマーといった多彩な機能をリュウズボタンひとつで操作できる。さらに軽い着け心地から、さまざまな分野の目利きたちから絶大な支持を受け、「プロフェッショナル」シリーズの中核モデルとして愛されてきた。

ブライトリング「エアロスペース B70 オービター」は、1999年3月21日に同社が支援した気球「ブライトリングオービター3」による、世界初の無着陸世界一周という偉業達成の25周年を記念して、今年3月に発売されたばかりの新作。

ケースは歴代の「エアロスペース」と同じくチタン製で、文字盤カラーは「オービター3」のカプセルの色と同じ鮮やかなオレンジを採用した。標準クォーツの10倍もの精度を持つ「スーパークォーツ」ムーブメント、COSC認定のブライトリングマニュファクチュールキャリバーB70を内蔵している。

さらにスプリットタイムとラップタイム機能付きの1/100秒計クロノグラフ、カウントダウンタイマー、第2タイムゾーン時刻表示、タイムゾーン表示、2つのアラーム、パーペチュアルカレンダーと、クォーツだから実現できる便利な機能が満載。操作系も一新され、より使いやすくなった。

しかもこのモデルが特別なのは、ケースバックに気球の一部が内蔵されていることだ。中央にはミッションロゴと、「First non-stop flight around the world 25th anniversary（初の無着陸世界一周飛行25周年）」の文字が記されている。

初代モデルからの伝統ともいえるが、製造国を問わずクォーツ式の腕時計で「エアロスペース」ほど、使いやすくて洗練された操作系を持つモデルはほかにない。多機能で使いやすい時計が欲しいとお考えなら、ぜひこのモデルを手に取って操作してみてほしい。きっと、ブライトリングが追求してきた“プロの計器”にふさわしい品格と、使いやすさにびっくりするはずだ。