角型クラシックウォッチの金字塔　ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・スモールセコンド」

丸型ではなく縦長の長方形ケースの時計は、英語の「rectangle（レクタングル）＝長方形」から、「レクタンギュラーウォッチ（Rectangular watch）」と呼ばれ、製品の数は圧倒的に少ない。さまざまな意味で異端ながら存在感は抜群で、丸型時計に飽きてしまったファッション感度の高い人たちに「お洒落の外しアイテム」として愛されてきた。そしてこのジャンルの最高傑作が、パーソナライズ可能な二重反転式ケースを備えたジャガー・ルクルトの「レベルソ」である。今回はその最新スタンダードモデルを紹介する。

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日本人にはあまり馴染みがないが、イギリス文化圏で人気の高いスポーツといえばポロだろう。騎馬民族が馬術訓練のために始めたという世界で最も古い起源を持ち、最もハードなスポーツのひとつ。１チーム4人のメンバーそれぞれが馬に乗り、サッカーコートの約9倍の広さを駆け回る。手に持った「マレット」と呼ばれるスティックでボールを奪い合い、相手ゴールにボールを叩き込んだ数で勝敗が決まるというわけだ。“人馬一体で戦う格闘技”ともいわれる。日本にも8〜９世紀頃に大陸から伝わり「打球」と呼ばれたが、この競技には多数の馬や広大な場所が必要なことなどから普及しなかった。

レベルソは元々、この競技中に着けるスポーツウォッチとして開発された。1930年代初めにインド駐在のイギリス人将校が、試合中に着けられる時計の開発をジャガー・ルクルトに依頼したことが始まり。そして開発されたのが、ケースを横にスライドし、回転させることで文字盤を保護できる二重反転式ケースだ。

ケースの上下にゴドロン様式の３本線の装飾を施すなど、アールデコ時代を象徴する黄金比に基づいて設計されたこの時計は、スポーツウォッチではなく、ファッションアイテムとして高く評価されることになる。加えて、二重反転式ケースがこの時計を特別なものにした。文字盤側を隠したときに現れるケースの裏側には、持ち主のイニシャルなど好きな文字や絵を彫刻でき、その意匠をさりげなく見せることができる。多彩なサイズが用意され、小柄な女性から大柄の男性まであらゆる人にフィットする。それゆえ、ありきたりの時計では満足できない、個性をアピールしたいという感度の高い人たちから愛される特別な存在となった。

また、この二重反転式ケースの裏側を“もう一つの顔”、つまりもう一つの文字盤として“二つの顔が楽しめる”ダブルフェイスウォッチとして活用するモデルも後に誕生した。表裏に同じ時刻を表示し、カレンダーやムーンフェイズなど情報表示を振り分けたもの。さらに表と裏で別のタイムゾーンの時刻を表示できるデュアルタイム表示機能を持つモデルも登場した。

今回紹介する「レベルソ・トリビュート・スモールセコンド」は、多彩なラインアップの中でも、1931年に誕生したオリジナルモデルのスタイルを受け継ぐスモールセコンド（小秒針）表示の限定モデルだ。その魅力は伝統的なスタイルに留まらず、二重反転式ケースの中に収められたムーブメントも、この時計の魅力の一つとなっている。

ジャガー・ルクルトは1833年に始まる200年近い歴史の中で、常にスイスの時計業界をリードするさまざまな機械式ムーブメントを世に送り出してきた。ハイジュエリーウォッチ用の世界最小サイズのものから、複雑機構をいくつも搭載した超複雑なものまで、多彩な機械式ムーブメントを自社で開発・製造する“スイス最高峰のマニュファクチュール（ムーブメントから時計のほとんどを自社で一貫生産する時計メーカー）”として尊敬を集めている。

このモデルに搭載されている機械式の手巻きムーブメントも、一般的な丸型ではなく、角型ケースに合わせて開発された縦長の楕円形。しかも「マスター・コントロール」と呼ばれる自社内での約1000時間に及ぶ徹底的な品質、精度、信頼性テストに合格している。