近年、日本製の高級機械式時計がアメリカやヨーロッパで高く評価され、人気が高まっている。2021年8月に発売された「ザ・シチズン メカニカルモデル Caliber 0200」もそのひとつで、今回は2年ぶりの新作、デイト表示付き「ザ・シチズン メカニカルモデル Caliber 0210」を紹介する。
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2000年頃、いまでは考えられないことだが日本製の時計は「安い」「クォーツ式」というイメージがあった。これは1970~80年代にかけて、手頃な価格で高精度のクォーツ式時計で世界を席巻したことと、高級機械式時計が日本国内だけで販売され、日本の時計メーカーが海外に低価格で高品質な製品を数多く輸出していたからだ。
だが2010年以降、この状況は大きく変化した。日本の高級機械式時計の海外展開がスタートしたことで、価格をはるかに超えた精度と品質が高く評価され、アメリカやヨーロッパの時計マニアやジャーナリストの間で一躍注目されることになったのだ。
そして2021年、日本とスイスの時計作りの技術とノウハウが融合した高級機械式時計が誕生した。シチズンとラ・ジュー・ペレ社(シチズンが2012年に買収したプロサーという会社の傘下)によって共同開発された機械式ムーブメント「Caliber 0200」を搭載したのがザ・シチズン メカニカルモデル Caliber 0200で、スモールセコンド(センター中央部以外に配置される秒針の事)表示付きのシンプルな機械式ウォッチだ。
ラ・ジュー・ペレ社は時計愛好家なら誰もが知る有名な機械式ムーブメント&モジュール(ムーブメントと組み合わせて機能をプラスするもの)メーカー。トゥールビヨン機構(姿勢差による重力を分散し、精度を保つための機構)を搭載したベースムーブメントを製造して他社に供給するなど、高い技術力でも知られている。
このモデルに搭載された「Caliber 0200」は、シチズンにとって実に11年ぶりの新型機械式ムーブメントで、機械式時計の心臓部である脱進機の部品に「LIGA工法(微細構造物形成技術)」と呼ばれる製造技術を採用し、機械式として最先端の精度と信頼性を実現した。またラ・ジュー・ペレ社が得意とする「サティナージュ」と呼ばれる美しい装飾がムーブメント部品に施されるなど、これまでのシチズンのムーブメントにはない「美しさ」も追求した。この想定外の登場は、時計ジャーナリストの間ではうれしい驚きだった。
なぜならシチズンはそれまで「光発電エコ・ドライブ」、つまりソーラー駆動のクォーツ式時計を会社の看板モデルとして押し出してきたという背景がある。その象徴ともいえるのが、創業100周年の2018年、世界最大の時計宝飾フェア「バーゼルワールド」で発表された「Caliber 0100」は、年差プラスマイナス1秒というクォーツ式ムーブメントとしても世界最高峰の精度で世界を驚かせた。そんなシチズンが、サスティナビリティの視点で機械式に再び力を入れるという、画期的な転換だった。
本題の「ザ・シチズン メカニカルモデル Caliber 0210」は、2021年に発表された「Caliber 0200」に日付表示機構をプラスした新型ムーブメント「Caliber 0210」を搭載している。電鋳(でんちゅう=電気鋳造)と呼ばれる技術を駆使して製造された立体的で視認性に優れた文字盤に、1960年代に確立されたシチズンのスタンダードウォッチのデザイン文法を基本として熟練の技術者の手で美しく仕上げられたケースやブレスレット、ISO(国際標準規格)3159クロノメーターを超える「平均日差マイナス3秒からプラス5秒以内」という高い精度など、前モデルの美点をすべて継承した上で、日常生活に便利な日付表示が付いている。また、このモデルから防水性が10気圧にアップし、どんな場面でも安心して使えるようになった。
シーンを選ばず着用でき、スタンダードで飽きのこない上質な腕時計として。また、世代を超えて受け継ぐことができる日本製の機械式時計として、これほど旬なモデルはない。
CITIZEN / シチズン
ザ・シチズン メカニカルモデル Caliber 0210 88万円(税込)12月9日発売予定
- SPEC
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- ケース径:40 mm
- 自動巻き、SSケース&ブレスレット、10気圧防水
お問い合わせ先
- シチズンお客様時計相談室 フリーダイヤル:0120-784-807
Text : Yasuhito Shibuya