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早世のシンガーがシャウトした伝説のライブ

春の訪れとともに、ゴルフに最適な季節がやってきました。そんな気分に寄りそう音楽を文筆家・青野賢一さんにセレクトいただきました。

編集担当の方から「4月は『マスターズ』があるのでそれに絡めたテーマはどうか」とご提案いただいた。マスターズはゴルフ素人のわたしでもその名を知っているほどだから、ゴルフ愛好家にとっては大注目のトピックに違いない。そうしましょう、と早速リサーチに取りかかった。わたしが興味を持ったのは、大会優勝者にクラブ・ブレザーのようなグリーンのテーラードジャケットが贈られるということ。ゴルフが“紳士のスポーツ”と称されることを考えると、素敵な習わしだと感じた。

よし、グリーンのジャケットをキーワードに音楽を選んでみるか。そう思ったが、もうひと工夫欲しい。いくつか考えて、最終的に大会の開催地オーガスタがあるアメリカ・ジョージア州のアーティストやグループからピックアップすることにした。

音楽の観点から見ると、ジョージア州はアメリカ音楽史の中でも重要な存在だ。ロックンロール黎明期のアイコン、リトル・リチャード、州歌にもなっている「Georgia On My Mind(我が心のジョージア)」を歌ったレイ・チャールズ、早世ながらもソウル、リズム&ブルースの世界に大きな足跡を残したオーティス・レディング、“ミスター・ダイナマイト”などの異名を持つジェームス・ブラウンはいずれもジョージア州出身。サザン・ロックを代表するオールマン・ブラザーズ・バンドは州中心部のメイコンを拠点に活動していた。1990年代に入ると、TLCやアウトキャストなどがアトランタからヒットを飛ばしたことでヒップホップ/R&Bの要所として注目され、現在に至るまでニューヨークやロサンゼルスと並ぶ重要な発信地となっている。

ジョージア州出身のアーティストやグループを挙げればキリがないのだが、ここに“グリーンのジャケット”というキーワードを加えるとこれが思いのほか少ない。ようやくたどり着いたのが、オーティス・レディングの『Live at the Monterey International Pop Festival』(2019)だ。

OTIS REDDING
『Live at the Monterey International Pop Festival』(2019)

本作は1967年に南カリフォルニアで開催されたチャリティ・イベント「モンタレー国際ポップフェスティバル」でのステージを録音したもの。同フェスティバルにはジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ザ・フー、ラヴィ・シャンカールなどが出演し、3日間で延べ20万人以上の観客を動員したという。4Kレストアを施し5.1chとなって昨年公開されたドキュメンタリー『Monterey Pop モンタレー・ポップ』(1967)では、その模様をたっぷりと楽しめる。

ブッカー・T & ザ・MG’sにマーキーズのホーン・セクションを加えたバンドのキレのいい演奏をバックに、のちにアレサ・フランクリンが取り上げヒットした「Respect」やローリング・ストーンズ「(I Can’t Get No) Satisfaction」のカバーを熱くシャウトする。彼がステージでまとっているのはグリーンのダブルブレスト・スーツで、褐色の肌にとてもよく似合っている。

フェスティバルに出演した半年後、彼は飛行機事故により帰らぬ人となる。享年26。あまりにも早い死であるが、本作はそんな不幸な未来を少しも感じさせない意気の良さ、精いっぱいのエネルギーが感じられ、聴いているこちらまで力が湧いてくるようだ。

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青野賢一(あおの・けんいち)/文筆家、選曲家、DJ

1968年東京生まれ。セレクトショップ「ビームス」にてPR、クリエイティブディレクター、〈ビームス レコーズ〉のディレクターなどを務め、2021年秋に退社独立。ファッション、音楽、映画、文学、美術などを横断的に論ずる文筆家としてさまざまな媒体に寄稿している。2022年に『音楽とファッション 6つの現代的視点』(リットーミュージック)を上梓。

Edit : Yu Sakamoto

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