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旅する写心~Once Upon A Time

ゴルフ場になくてはならないものがクラブハウスだ。
場内に佇むクラブハウスには
ゴルフファーが長年にわたって集ってきた
独特の空気感が宿っている。
世界中のゴルフ場を旅しながら
クラブハウスに魅了された想い出も多い。

今年の全英オープン会場である
ロイヤルリバプールもそうだった。
1869年、イングランドで2番目のコースとして開場。
当初はゴルフ場と競馬場を兼ねた
リンクスランドだった。
1885年には第1回全英アマの開催コースに選ばれた。
当時は現在の17番ホールにある
ロイヤルホテルがクラブハウスとして使用され、
今のクラブハウスは1895年に創られたものだ。

ロイヤルリバプール出身のアマチュアゴルファー
ジョン・ボールは全英アマで8回優勝し、
1890年、イギリス人として初めて
全英オープンをも制した。
それから7年後の1897年に、
初めてここで全英オープンが開催された。
そしてロイヤルリバプールが
世界に知れ渡ったのは1930年。
ボビー・ジョーンズが全英オープンを制し、
グランドスラムを果たした時だ。

僕が初めてここを訪れたのは1991年のこと。
ロイヤルバークデールで
全英オープンが開催された年で、
地元メディアから近くに歴史的なコースがあるから
是非プレーをした方が良いと教えられ、
紹介状を書いてもらった。
道に何度も迷いながら、ようやく辿り着いた先に
蔦(つた)が絡まる重厚な建物はあった。
恐る恐る入っていき、セクレタリーに手紙を渡すと
「ウエルカム」と笑顔で迎えてくれた。
あの時はまだクラブハウスも古いままで、
床の軋(きし)む音が建物に響いた。
階段を上がると
ボビー・ジョーンズの肖像画が飾られており
倶楽部にとって
チャンピオンがどれだけ重要かを思い知った。

2006年、39年ぶりに全英オープン開催が決まり
現地を訪れた。
その年の優勝者はタイガー・ウッズ。
最愛のお父さんを亡くした後の勝利だった。
最後に足を運んだのは2014年の全英オープンで、
ロリー・マキロイが念願の大会初勝利を挙げたことも想い出深い。

このコースで素晴らしいチャンピオンが誕生し、
メンバーがそれを誇りとして讃えてきた。
クラブハウスに立つと色々な思いを巡らせる、
そんな空気が大好きだ。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Clubほか、国内数々のオフィシャルフォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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