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電動化が磨いたポルシェの完成形 「カイエン ターボEハイブリッド クーペ」

ポルシェのSUVと聞いて注目されるのは、まもなく登場するBEV「カイエン エレクトリック」だろう。しかし、その前にポルシェがひとつの完成形として送り出したモデルがある。それが今回試乗した「カイエン ターボEハイブリッド クーペ」だ。

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3世代目「カイエン」のマイナーチェンジに合わせて2023年に追加され、PHEV(プラグインハイブリッドシステム)を採用することで歴代カイエン最高となる739psを実現した。だが、このクルマの価値はスペックだけではない。電動化によって、速さと静けさ、快適性とスポーツ性能という本来は相反する要素を高い次元で両立させたことこそが最大の進化なのである。

これまでもポルシェはカイエンや「パナメーラ」にPHEVを展開してきた。しかし彼らが目指しているのは環境性能や燃費性能だけではない。ファンがポルシェに求めるスポーツカーとしてのダイナミズムを、モーターの力でさらに引き上げること。その思想は、このモデルにも色濃く受け継がれている。

パワートレーンの中心となるのは、最高出力599psを発生する4.0リッターV8ツインターボエンジン。そこへ176psの高出力モーターを組み合わせることで、システム最高出力739ps、最大トルク950N・mという圧倒的なスペックを実現した。25.9kWhの大容量バッテリーを搭載し、一充電で72km(WLTP)のEV走行が可能。日常の移動であればモーター主体で静かに走り、必要な瞬間だけV8が目覚める。シャシーもそれに合わせて磨き上げられ、アダプティブエアサスペンションが標準装備されるなど、足まわりにも一切の妥協はない。

クーペならではの流麗なルーフラインは、SUVとは思えない伸びやかさを生み出している。21インチホイールがホイールハウスいっぱいに収まり、大柄なボディでありながら重々しさを感じさせない。フロントフェイスは「タイカン」を思わせるシャープなヘッドランプを採用し、ひと目でポルシェと分かる存在感と先進性を兼ね備えている。

室内へ乗り込むと、最新世代のポルシェらしいデジタルコックピットが迎えてくれる。「911」伝統の5連メーターをオマージュした12.6インチのメーターパネルは視認性に優れ、表示内容も自在に変更できる。センターコンソールは物理スイッチを最小限に整理し、ブラックパネルに収められた操作系は軽いタッチで直感的に反応する。高級感を演出するだけではなく、運転中でも迷うことなく扱える操作性の高さは、日常的に使うSUVだからこそ大きな魅力だ。スポーティなコックピットでありながら圧迫感はなく、乗員全員が上質な移動時間を共有できる空間に仕上がっている。

ラゲッジスペースの容量はクーペ形状のリアエンドとハイブリッドシステムの搭載により、標準モデルよりわずかに抑えられている。それでも開口部は広く、リアシートを倒さなくても斜めにすればキャディバッグを2本積載可能。シートバックを倒せば3本積みも難なくこなす。パートナーや友人と2〜3人でゴルフへ出かける使い方であれば、不満を覚えることはまずないだろう。

スタートボタンを押しても、轟音は響かない。まず迎えてくれるのは、驚くほどの静けさだ。アクセルを踏み込むとモーターだけで滑るように走り出し、2.5トン近いボディとは思えない軽やかさで街中を駆け抜けていく。エンジンが始動する瞬間も自然で、切り替わりを意識する場面はほとんどない。高速道路の合流でアクセルを深く踏み込むと、V8ツインターボが静かに目を覚ます。モーターの瞬発力とエンジンの圧倒的なパワーが継ぎ目なく重なり、速度計の針が一気に跳ね上がる。それでいて車内は終始落ち着いたまま。耳に届くのは必要以上に演出されたサウンドではなく、余裕あるパワーが生み出す心地よい高揚感だ。これほど速いのに、これほど穏やか。そんな相反する感覚を違和感なく成立させている。

ステアリングを切れば、大柄なSUVであることを忘れるほどノーズは素直に向きを変える。後輪操舵や電子制御シャシーが緻密に連携し、ワインディングでも車体は終始フラットな姿勢を維持。低速域では路面の凹凸を穏やかに吸収し、高速域では強い横Gを受けてもボディは乱れない。ドライバーは必要以上に身構えることなく、この739psという性能を自然体で引き出せるのである。

カイエン ターボEハイブリッド クーペは、最速のSUVを目指したわけではない。街では静かに寄り添い、高速道路では余裕を生み、ワインディングではポルシェらしさを味わわせる。そして休日には、仲間とのゴルフへ向かう時間まで心地よく彩ってくれる。PHEVは、ポルシェらしさを変えるためではなく、その魅力をさらに磨き上げるためであった答えが、この一台にある。まさに電動化が磨いたポルシェの完成形と呼びたくなる仕上がりだった。

ポルシェ カイエン ターボEハイブリッド クーペ  車両本体価格 2548万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4930 X 全幅 1995 X 全高 1660 mm
  • ホイールベース | 2895 mm
  • 車両重量 | 2495 kg
  • エンジン | V8ツインターボ + モーター
  • 排気量 | 3996 cc
  • エンジン最高出力 |  599 ps(441 kW)
  • モーター最高出力 |  176 ps(130 kW)
  • システム最高出力 |  739 ps(544 kW)
  • システム最大トルク|  950 N・m

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Text : Takuo Yoshida

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