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伝統と革新の狭間で ポルシェ「911カレラGTS」が描く新しい調和

ついにポルシェ「911」にも電動化の波がやって来た。GTSというグレードは以前から存在していたが、現行型のパワーユニットは新開発の3.6リッター水平対向6気筒ターボにモーターを組み合わせたハイブリッドとなった。モーターはエンジンとギアボックスの間に収まり、モーター単体での走行はできない。

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外観上の識別点はフロントバンパー両脇に配された5枚ずつの可動フィンと、リアのエンブレム程度。電動化を声高に主張することはなく、911らしい端正さは崩されていない。インテリアもGTSロゴが加わる程度で、仕立ては従来のガソリンモデルと大きく変わらない。ただしメーターパネルにはバッテリー残量や回生状況が表示され、センターモニターには電動システム専用の表示が追加された。

走り出してすぐに感じるのは「ズドン」と響くような加速だ。まるで大排気量エンジンを積んでいるかのような力強さ。標準の「911カレラ」が3.0リッター(394ps)であるのに対し、GTSは3.6リッター(485ps)を搭載しているのだから、速さは当然ともいえる。しかし、この印象は排気量の差だけでは説明できない。

モニターを横目に走らせていると、その理由が見えてくる。発進加速の瞬間やシフトアップ・ダウンなど、エンジンの力が途切れる刹那にモーターが鋭く介入しているのだ。ただし、よくあるハイブリッドのようにモーターが前面に出ることはなく、主役はあくまでもフラット6。モーターはその個性を引き立てる陰役に徹している。

ポルシェ911は、リアアクスルの後ろに水平対向6気筒を置く独自のレイアウトを守り続けて61年。鋭い吹け上がりに魅了されるファンは少なくない。「911に電動化は不要」と考える原理主義者もいるだろう。だが今回のGTSは、その声に対する開発陣の答えのように感じられる。モーターは決してエンジンより目立つことなく、PDK(ポルシェが開発した デュアルクラッチトランスミッション)の変速をさらに滑らかにし、結果として走り始めの「ズドン」とした加速を実現しているのだ。

もちろん電動化により車重は増したが、それも人ひとり分、約60kgにとどまる。しかもモーターは車体中心寄り、バッテリーはフロントに積まれることで、911の特徴であるリアヘビーが助長されることもない。911らしいドライビングフィールは守られたまま、ただ一層滑らかで力強い加速が加わった。

ポルシェは伝統を守りながらも、「タイカン」や「マカン4」といったBEV(電気自動車)を送り出すなど、常に進取の姿勢を崩していない。自動車社会全体として電動化の速度がやや緩やかになっているとはいえ、その流れを止めることはできない。最新の911 GTSは歴史的に見れば過渡期のモデルなのだろう。しかし、その仕上がりに一切の妥協は感じられなかった。

ポルシェ 911カレラ GTS  車両本体価格: 2379万円

    • ボディサイズ | 全長 4555 X 全幅 1870 X 全高 1295 mm
    • ホイールベース | 2450 mm
    • 車両重量 | 1620 kg
    • 排気量 | 3591 cc
    • エンジン | 水平対向6気筒ターボ + モーター
    • 最高出力 | 485 PS(357 kW)
    • 最高トルク | 570 N・m
    • モーター最高出力 | 56 PS
    • システム最高出力 | 541 PS
    • トランスミッション | 8速 PDK
    • 最高速度 | 312 km / h以上T

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Text : Takuo Yoshida

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