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理屈抜きで押しが強い BMW「XMレーベル」

BMWのクロスオーバーSUV「XM」は、前例を思い浮かべるのが難しい一台だ。フロントマスクのインパクトが大きい昨今のBMWのラインアップの中でも、ダントツの強面ぶり。その素性をひも解くには、車名のアルファベット2文字がヒントになる。

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BMWのSUVモデルを示すXとモータースポーツに由来するM。つまり、スポーツモデルを手掛けるグループ会社「BMW M」によってプロデュースされたSUVということになる。といっても「M3」や「M5」のように元々あるベースモデルをチューニングするのではなく、初めからM専用モデルとして製作されている点が目新しい。同様の例は1978年に誕生したスーパーカー「M1」だけだ。XMというモデルはそれくらい、たぐいまれな一台と言える。

今回試乗したのは、パワーを増強した「XMレーベル」。ガソリンエンジン(4.4リッター、V8ツインターボエンジン)の出力を「XM」より96PS(馬力)大きい585psまで引き上げ、電気モーターを合わせたPHEV(プラグインハイブリッド)システムとしての最高出力は748ps(550kW)、最大トルクは1000N・mになる。走り始めると、全長5110mm、ホイールベース3105mm、重量2.73トンという大きさは一切感じさせず、軽々と加速していく。と言うよりも、パワーの掛かり方は冷静に分析する余裕がないほどあまりに唐突。発進の瞬間を電気モーターがカバーし、すぐにターボが加わってこれまで感じたことのないワープ感を演出する。その際の音は見た目から想像される通りのすさまじさだ。

そんな強烈な加速の瞬間でも、リアがほとんど沈み込まないのは電子制御エアサスペンション「アダプティブMサスペンション・プロフェッショナル」のおかげだろう。一方、コーナーリングでは4輪操舵が大胆に介入して巨体を素早く曲げる。これは大きさがほぼ同じSUVで最高出力352psの「X7」だったら少し不自然に感じるくらいの後輪操舵なのだが、そんな動きすら不敵な見た目と整合性が取れている感じがして面白い。

ステアリングには2つの赤いボタンがあり、シャシーやステアリング、駆動システムの設定を一括変更できる。コンフォート寄りのセッティングにすれば、23インチの巨大なタイヤを履いているにもかかわらず柔らかい乗り心地を味わえる。バッテリーが満充電の場合には最長105.6kmのEV走行が可能で、ADAS(先進運転支援システム)も非常に高いレベルでまとめられている。

未曽有(みぞう)のパワーはもちろん、走りも見た目も全てが“トゥーマッチ”と捉え得る存在ながら、それすらウリにもなっている点が珍しい。冷静にライバルたちと比較しながらではなく、直感的に購入を決断するクルマだと言えるが、2420万円という価格はパフォーマンスを体感した後ではお得にすら思える。一般的な評価軸が当てはまらない超ド級モデルの“求心力”に圧倒されるのは必至だ。

BMW XM レーベル  車両本体価格: 2420万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 5110 X 全幅 2005 X 全高 1755 mm
  • ホイールベース | 3105 mm
  • 車両重量 | 2730 kg
  • エンジン | V型8気筒 ツインターボ
  • 排気量 | 4395 cc
  • 最高出力 |  585 ps(430 kW) / 6000 rpm
  • 最大トルク | 750 N・m / 1800 - 5400 rpm
  • モーター出力 |  197 ps(145 kW)
  • モータートルク | 280 N・m
  • システム最高出力 |  748 ps(550 kW)
  • システム最大トルク | 1000 N・m

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Text : Takuo Yoshida

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