ジープ「ラングラー」にプラグインハイブリッド(PHEV)仕様が加わったので、早速試乗した。ほぼすべてのPHEV同様、ラングラーもEV走行が可能で、満充電では約42km走行できると資料にある。ドライバーズシートに座り、このゴツいクルマのEV走行がどんなものかを想像しながら、ダッシュボードの「ELECTRIC」モードのスイッチを押した。ところが、いまの充電量ではEV走行はできないという主旨のメッセージがインパネに表示された。
さっそく、走行しながら充電を開始する。「HYBRID」「ELECTRIC」「E-SAVE」と3つ並んだモードスイッチのうち「E-SAVE」を選択。続いて、液晶パネルの「ハイブリッド エレクトリック」を開いて「バッテリー充電」をタッチした。
さらに強力に充電するために、アクセルペダルから足を離した時の減速Gは強くなるのだが、「Max Regeneration」スイッチをオンにすると、減速エネルギーを電気に変換してバッテリーに蓄える回生ブレーキがギンギンに働くようになる。完全停止とまではいかないけれど、たとえばETCゲートなど、アクセルペダルを戻すだけで充分に減速するので、ブレーキペダルを踏まない“ワンペダルドライブ”が可能。好みにもよるが、右足を移動する必要がないので慣れると実に快適だった。
モーターが駆動に加わらない状態でも、2.0リッターの直列4気筒ガソリンターボエンジンは2350kgの車重に対して充分なパワーがあり、ドライバーが望むだけの加速をもたらしてくれる。ちなみにエンジン単体の最高出力は272ps。
たっぷり充電されたところで、改めて「ELECTRIC」モードのスイッチを押す。すると音もなく、ごく滑らかに発進した。極低回転域から最大の力を発生するモーターの性質から、ほふく前進するようなスピードでも、アクセル操作に対するレスポンスが鋭く、思いのままに走らせることができた。
走るうちに、ラダーフレーム構造の本格派オフローダーと、EV走行の組み合わせは理にかなったものだと思えてきた。というのも、岩場や泥濘地など本気のオフロードを走る時は、低速域でのミリ単位のコントロールが必要になるからだ。過酷な条件下で、エンジンよりも低速域でのレスポンスが素早いモーターの方が、微妙なコントロールが容易になる。エンジン車よりEVの方がオフローダーに向いている、というのは新しい発見だった。
EV走行を堪能した後は、バッテリーの残量や走り方に応じてモーターとエンジンの駆動力を自動制御してくれる「HYBRID」モードを選択した。ラングラーのPHEVは、P1、P2と名付けられた2基のモーターとリチウムイオン電池で構成されている。エンジン部にあるP1は、アイドリングストップからの再始動を素早くスムーズにアシストし、トランスミッションの前方にあるP2は、変速時に滑らかにギアがかみ合うよう調整してくれる。いずれも省エネに貢献するのはもちろん、上質な走行感覚をもたらす役割を果たしている。
省燃費だけでなく、悪路走破性能、オンロードでの快適性も向上し、文字通りラングラーのフラッグシップモデルといえるだろう。悪路走破性能が高いクルマほど大自然に近づくわけだから、騒音も排気ガスも出さないというのは、うってつけのキャラクターかもしれない。
ジープ ラングラー アンリミテッド ルビコン4xe 車両本体価格: 1030万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4870 X 全幅 1895 X 全高 1855 mm
- ホイールベース | 3010 mm
- 車両重量 | 2350 kg
- エンジン | 直列4気筒 ターボ
- 排気量 | 1996 cc
- 変速機 | 8速 AT
- 最高出力 | 272 ps(200 kW) / 5250 rpm
- 最大トルク | 400 N・m / 3000 rpm
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Text : Takeshi Sato