2018 バーゼルワールド速報!ラグジュアリーを極めた最新時計を時計業界のご意見番が斬る

スイス北部の都市バーゼルは、ドイツやフランスと国境を接する交易都市。この地で毎年3月に開催されるBASEL WORLDは、世界最大の時計と宝飾品の見本市だ。入場料さえ払えばだれでも入れるため、世界中から時計愛好家が訪れる“お祭り”であり、ロレックスやパテック フィリップ、オメガなどのメジャーブランドが多く出展している。ここで発表された多くの新作の中から、前回に引き続いて日本を代表する正規時計販売店のトップと時計ジャーナリストに、個人的ベスト3モデルを挙げてもらった。

今年のバーゼルワールドは、会期前から「規模縮小」というネガティブな話題で持ちきりだった。バーゼルワールドは巨大なホールの中に、ブランドごとにブースを建て、そこでプレゼンテーションを行う。

その出展料が高騰し続けており、中規模ブランドの出展取りやめが相次いだのだ。スイス時計業界は数年前に売り上げを大きく落としており、体力のないブランドが淘汰されつつあるのだろう。その為やむを得ず会場の一部を閉鎖し、いつもよりもコンパクトなバーゼルワールドとなった。

出展ブランド数が減ったのは事実だが、だからと言ってメジャーブランドの勢いがそがれた訳ではなかったのは朗報だろう。

「新たな体制でスタートを切ったブライトリングが良かった。スポーティさとラグジュアリー感を合わせ持ち、エレガントさもあります」と語るのは、神戸の名店カミネの上根亨さん。

一方、和歌山を中心に7店舗を展開するオオミヤの出水孝典さんは、メインホールの入り口に陣取るLVMHグループに注目。「時計業界の大物経営者ジャン-クロード・ビバーさんが率いるLVMHグループのブランドが面白かった。特にゼニスとウブロは、技術進化のスピードがとても速いですね」と興味をひかれた様子だ。

そして時計ライターの篠田哲生さんは、複雑機構モデルの進化に注目。「どの会社も進化した技術をどう生かすか。という点で頑張っていた。ブランドのオリジリティが明確に出ていて面白いジャンルです」と力説。もはや“機構が複雑である”というだけでは評価されない時代なのだ。

少しずつ強さを取り戻しつつある時計業界。その原動力は、ブランドの個性と強みを生かした時計を作ることのみ。時計を極めたプロ達が「自腹を切ってでも欲しい!」と感じた、信念を感じる秀作たちをご覧あれ。

関西時計業界代表が「自腹を切ってでも欲しい!」最新作BEST3

BEST1 パテック フィリップ 「 アクアノート・クロノグラフ 5968A」 | Selected by Toru Kamine

「人気モデル、アクアノートの“ジャンボ”なだけでない魅力に心酔」上根亨

名門パテック フィリップのスポーティウォッチ「アクアノート」初のクロノグラフ。ケースサイズは昨年ホワイトゴールドケースで登場した“ジャンボ”と同じく42.2㎜と、かなり迫力がある。「大降りケースが、スポーティさとカジュアルさが増しています。オレンジ色の秒針がアクセントになっており、同色のラバーストラップも付属しているのも嬉しいですね。それでいて、垂直クラッチ式のフライバッククロノグラフを搭載しているという、見た目以上の高性能な時計です」と上根氏。こういう時計をさらりとつけて、極上の休日を過ごしたい。

  • SPEC
  • Ref. 5968 アクアノートクロノグラフ
  • ケース径:42.2㎜(10-4時方向)
  • ケース素材:SSケース
  • 防水性:120M防水
  • ムーブメント:自動巻き
  • 予価:¥4,770,000(税抜)
  • 今秋以降発売予定

BEST2 ブライトリング「ナビタイマー8 B01 クロノグラフ43」

「1930年代のパイロット計器を現代的に解釈したブライトリングの渾身作は買い!」上根亨

経営陣を一新したブライトリングは、IWCで辣腕を振るったジョージ・カーン氏を新CEOとして迎え入れた。彼はコレクターと会ってブライトリングの歴史を学び、そして埋もれていた魅力に気が付いた。その結果が新コレクション「ナビタイマー8」である。「1930年代のパイロットウォッチを現代的に解釈した、新生ブライトリングの象徴。航空時計黎明期を彷彿とさせる味わいあるテイストが魅力です。もちろん、ベゼルのノッチやサテン&ポリッシュの仕上げなど、ブライトリングらしさは健在。美しい時計です」と上根氏も絶賛。人気ブランドの新たな旅立ちは、ひとまず視界良好である。

  • SPEC
  • ケース径:43㎜
  • ケース素材:18Kレッドゴールドケース
  • 防水性:100M防水
  • ムーブメント:自動巻き
  • 予価:¥2,280,000(税抜)
  • 6月発売予定

BEST3 ブルガリ「オクト オリジナーレ クロノグラフ」

「昨年ジュネーブグランプリを2部門で獲得し話題となったオクトの最新作に太鼓判」上根亨

ブルガリのアイコンとして成長を続けるオクトの最新作。「モノクロームのスポーティなデザインを、チタンケースを使うことで軽快にまとめている。しかも搭載ムーブメントは、ゼニスのエル・プリメロがベースになっている。ムーブメントの名称は“ベロチッシモ”ですが、これはイタリア語で“最速”の意味。こういうところにもセンスの良さを感じます」と上根氏。人気モデルではあるが、進化を止めない。それがブルガリ躍進の理由なのだろう。

  • SPEC
  • ケース径:ケース径41.5㎜
  • ケース素材:チタンケース
  • 防水性:100M防水
  • ムーブメント:自動巻き
  • 予価:¥1,120,000(税抜)
  • 5月発売予定

上根 亨  Toru Kamine

カミネ代表取締役社長
神戸に5店舗を展開する正規輸入時計宝飾専門店カミネの4代目社長。時計全般のアドバイザーとして世代を超えた顧客の信頼を得る。富裕層の好みを把握した、適切でわかりやすい時計の解説に定評あり。カミネ社長ブログは公式サイト内の人気コンテンツ。新商品入荷情報や海外レポート、機械式時計の魅力などを定期的に更新中。9月はハリー・ウィンストンやピアジェなど男女問わずに人気を集めるラグジュアリーブランドのフェアを開催予定。フェア期間中のみの商品紹介や特典などが満載。ぜひカミネ公式サイトにアクセス!

www.kamine.co.jp

真価を見極める和歌山の雄が「自腹を切ってでも欲しい!」最新作BEST3

BEST1 ゼニス「デファイ ZERO-G」 | Takanori Demizu

「特許機構がゼニスの技術力の高さを感じさせます! これは売れますね」出水孝典

すでに高い評価を受けているデファイコレクションが充実。クロノグラフだけでなく、三針モデルや複雑機構もラインナップされた。「こちらは、ゼニスが特許を取得した『グラビティ コントロール』を搭載しています。重力による精度への影響がないこの機構は、常に水平位置を保つよう小気味良く動くので、飽きずに眺められますね。極小の部品で構成されており、ゼニスの技術力の高さを伺うことができます」と出水氏。マニュファクチュールとしての誇りが見える時計だ。

  • SPEC
  • ケース径:44㎜
  • ケース素材:チタンケース
  • ムーブメント:手巻き(エル・プリメロ8812S)
  • 防水性:10気圧防水
  • 予価:¥10,800,000(税抜)
  • 7月発売予定

BEST2 ウブロ「ビッグ・バンMP-11 14デイ パワーリザーブ サファイア」

「時計業界が注目するサファイアクリスタルは、ウブロを主張する素材でもある」出水孝典

2005年にデビューした「ビッグ・バン」は、時計業界を代表する傑作となった。現在はそのデザインコンセプトを取り入れながら多彩に進化を続けている。今年は素材と形状で驚愕の新作が登場した。「ただでさえ加工するのが非常に難しいサファイアクリスタルを、3Dケースに採用した意欲作。香箱が連なるインラインシリンダーに沿って曲線を加えられたケースは、完璧な透明でありながら存在感のあるサファイアクリスタルの美しさを一層引き立たせています」と出水氏も絶賛。ダイヤモンドに次ぐ硬さを持ち、クリアで美しいサファイアクリスタルは、時計業界が注目する素材。その最先端モデルがこれだ。

  • SPEC
  • ケース径: 45㎜
  • ケース素材:サファイアクリスタル
  • ムーブメント:HUB9011手巻きパワーリザーブ
  • 防水性:3気圧防水
  • 予価:¥11,030,000(税抜)
  • 11月発売予定

BEST3 ベル&ロス「BR 03-92 DIVER BRONZE」

「マロンレザーストラップ仕様! ベル&ロスからも街ダイバーズが登場」出水孝典

昨年、大きな話題となったベル&ロスの角型ダイバーズウォッチが、早くもバリエーションを追加。「ケースに使用しているブロンズ素材は、着用で年数を重ねることにより独特の風合いと色味に変化してくのが魅力。すこし小さめのBR 03 は腕乗りも良く、エージング加工が施されたストラップとの相性も抜群です。ダイバーズウォッチらしく、交換用のラバーストラップが付属するのも嬉しいですね」と出水氏。ちなみにブロンズ素材は、かつて潜水士の道具にも使われていた。つまりこのモデルは、歴史にも深い敬意をもっているのだ。

  • SPEC
  • ケースサイズ:42㎜
  • ケース素材:ブロンズケース
  • ムーブメント:自動巻き
  • 防水性:300M防水
  • 予価:¥520,000(税抜予価)
  • 世界限定:999本
  • 6月発売予定

出水 孝典  Takanori Demizu

オオミヤ代表取締役
関西に6店舗、2015年には鹿児島に新店舗をオープン。オフィシャルサイトやブログ、SNSが充実。長年の経験を武器に富裕層に刺さる時計を厳選。

www.jw-oomiya.co.jp/

オールジャンルの時計の知識を持つジャーナリストが 「自腹を切ってでも欲しい!」最新作BEST3

BEST1 ブルガリ「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター カーボン」

「私の先入観を突き崩した驚異のリピーターに大興奮!」篠田哲生

世界最薄のミニッツリピーターとして登場した「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」の進化版は、ケースがカーボン素材に。「懐中時計の時代から愛されているクラシックな機構をモダンなデザイン&素材でまとめたモデル。まずは外見のカッコよさに惹かれたが、音を聞いて更にびっくり。音自慢の某ブランドに匹敵するほど大きな音で時刻を奏でてくれた。これはぜひ聞いてほしい」と篠田氏は大絶賛。大きな音の理由はカーボンとピークの混合ケースにあるようだ。ピークという素材は、NASAやボーイング社などが用いている非常に優れた樹脂で軽量かつ熱や衝撃に強い特徴があるらしい。

  • SPEC
  • ケース径:40㎜
  • ケース素材:CTP(Carbon Thin Ply)&peek (ピーク)ケース
  • ムーブメント:手巻き
  • 防水性:50M防水
  • 予価:¥18,210,000(税抜予価)
  • 5月発売予定

BEST2 パテック フィリップ「永久カレンダー搭載ノーチラス」

「複雑&タフデザインなのに、抜群のプロポーション」篠田哲生

人気のラグジュアリースポーツウォッチに、ついにパーペチュアルカレンダーモデルが誕生。「ノーチラス愛用者としては、このモデルの魅力は薄さにあると思っています。ですから複雑機構を積むのは難しいと思っていたのですが、やってくれましたね。ケースの厚みは8.42㎜しかないのですが、これはパテック フィリップの全ての永久カレンダーモデルで、最も薄いのです。これで防水も万全なのですから驚異的です」と篠田氏も驚きを隠せない。ちなみにダイヤルカラーは、40周年記念モデルと同じくブルー。ここに愛好家を刺激するポイントだ。

  • SPEC
  • Ref.:Ref.5740/1
  • ケース径:40㎜(10-4時方向)
  • ケース素材:18KWG
  • 防水性:6気圧
  • ムーブメント:自動巻き
  • 予価:¥12,970,000(税抜)
  • 発売予定:2018年秋以降

BEST3 ブランパン「ヴィルレ フライング トゥールビヨン ジャンピングアワー レトログレードミニッツ」

「超複雑機構のトゥールビヨン搭載で、もっとも心に残ったモデル」篠田哲生

トゥールビヨンは複雑機構の花形。それゆえ多くのブランドが工夫を凝らしているが、今年はブランパンに注目。「機構の下側を支えるブリッジの代わりに、サファイアクリスタルガラスを使用しており、パーツが浮遊しているように見える。しかも時刻表示も振り幅の大きなレトログレードミニッツとジャンピングアワーの組み合わせという独自スタイル。クラシックだけどモダンさもあって好感が持てます」と篠田さんも納得のでき。ちなみにダイアル素材は、職人が手作業で仕上げるグラン・フー・ エナメル。しかも自社の工房で作っている。

    • SPEC
    • Ref.:66260-3633-55B
      • ケース径:42㎜
        ケース素材:18KRG
        ムーブメント:手巻(6日間パワーリザーブ)
        防水性:30m防水
        予価:14,590,000円(税抜予価)

篠田 哲生  Tetsuo Shinoda

時計ジャーナリスト
ラグジュアリーウォッチに関する特化した知識を有するジャーナリスト数多くの媒体で時計記事を担当。時計学校を修了した実践派で、複雑機構を備えた高級機械式時計を熟知した敏腕ライター。ラグジュアリーとは、なんたるかを日々探求中。

BRUDER編集部&スーパーバイザー戸賀が選んだ一本

パテック フィリップ「ゴールデン・エリプス」 | Selected by Hirokuni Toga

「理論的に生まれたデザインには説得力が。 いま、ゴールデン・エリプス! 有りですねぇ」戸賀 敬城

今年、誕生50周年を迎えた「ゴールデン・エリプス」は、ケースな針のデザインに、全ての人が美しいと感じる“黄金比”を取り入れている。今年はラージサイズモデルに、ローズゴールドケースが加わった。「シンプルなのに心に響く絶妙なデザインは、このモデルだけの特徴ですよね。ゴールド×ブラックの艶っぽい色の組み合わせも綺麗ですし、ドレスアップする時に使ってみたいな」と戸賀も一目置く。ちなみにケースデザインを踏襲したカフリンクスも用意しているので、手元のコーディネートも楽しめる。

  • SPEC
  • Ref.:5738
  • ケース径:34.5×39.5㎜
  • ケース素材:ローズゴールド
  • 防水性:非防水(湿気・埃にのみ対応)
  • ムーブメント:自動巻き
  • 予価:¥9,880,000(税抜)
  • 発売予定:2018年秋以降
  • Text : Tetsuo Shinoda
  • Direction : Keiichi Moritani

 

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