新時代を示唆するクルマメルセデス新型「Sクラス」の注目点

2021年1月28日、メルセデス・ベンツの新型Sクラスが日本でお披露目された。メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルであるSクラスは、いつの時代も最先端のテクノロジーを満載して登場してきた。今回も同様。新しいSクラスを見れば、これからのクルマがどの方向に進むのかがわかるだろう。早速、注目すべきポイントを紹介しよう。

まずは外観。「Sensual Purity（官能的な純粋さ）」というメルセデス・ベンツのデザインの基本思想に基づいたものとなっている。刺激的なラインやエッジでアピールするのではなく、滑らかな曲線を用いることで本質的な美しさを表現するというのがそのコンセプトだ。シンプルでありながらクリーンでインテリジェンスを感じさせるたたずまいとなっている。旗艦モデルでありながら威厳よりも上品さやスマートさを感じさせるあたりが、メルセデスのこれからのデザインの方向性を予感させる。

インテリアデザインのテーマは「デジタルとアナログの調和」。パッと見た印象は非常にシンプルですっきりとしている。センターコンソールからスイッチ類が減ったことが大きく影響しているだろう。シームレスに融合する大型の新時代の12.8インチ有機ELディスプレイはタッチパネル式で、空調やオーディオ、ナビゲーションなど、ほとんどの機能を操作できる。

ナビゲーションの案内表示をフロントウィンドウに投影する「ARナビゲーション」と、ドライバーの視線をモニタリングすることで立体的な映像をディスプレイに表示するという「3Dコックピットディスプレイ」のふたつは、試乗する機会にぜひ試してみたい機能だ。目から得る情報は安全運転で特に重要。ドライビング時の視線に近い場所に映し出される様々な情報が、運転にどのような影響を与えるか、非常に興味深い。

「ハーイ、メルセデス！」でおなじみとなりつつある音声認識機能「MBUX」も前後左右のどの座席からの音声操作なのかを判別する機能が与えられ、進化している。たとえば後席左側の人が発声すれば、そのエリアの空調や照明などをコントロールできる。生体認証によるシートポジションのパーソナライズや、メルセデス・ベンツ初となる後席用エアバッグが装備されることも特記事項だ。

走行性能では、将来の自動運転化につながる予防安全・運転支援システムが大きく進化していることが目をひく。レーダーや360°カメラ、超音波センサーといった各種センサー類が一層充実し、たとえば自動緊急ブレーキは右左折時の飛び出しや巻き込みといった危険にも対応するようになった。衝突の危険を察知した時にドライバーのハンドル操作をアシストして衝突回避を支援する「緊急回避補助システム」は、自車と反対方向に進む歩行者、自転車、車両を検知するようになっている。自動運転への過程というものを強く印象付けられる進化といえるだろう。

日本に導入されるパワートレーンは、3.0リッター直列6気筒ディーゼルターボ（最高出力330ps）と、3.0リッター直列6気筒ガソリンターボエンジン（最高出力435ps）にモーター（最高出力22ps）を組み合わせた48Vマイルドハイブリッドの2種。いずれも9速AT（9G-TRONICオートマチック・トランスミッション）と組み合わされ、全モデルが4輪駆動の4MATICとなる。リア・アクスルステアリングと呼ばれる後輪操舵システムを採用することでEクラスと同じ最少回転半径5.5mを実現している。