1969年の誕生から現代まで、そのスタイルを継承する傑作「モナコ」が、遂に50周年を迎えた。数々の時計を着用してきたBRUDERのスーパーバイザーである戸賀が、トークショーなどの晴れの舞台や、クライアントとまわるゴルフの往来など、あらゆるシーンで10年以上も愛して止まない唯一無二な時計、それがタグ・ホイヤー「モナコ」。半世紀を経ても、なおマスターピースとして高い評価を受けるこの時計の、過去、現在、そして未来を語っていこう。
[ TAG HEUER MONACO HISTORY ]まずは、50年の歴史からモナコを紐解く
「モナコ」が生まれた1969年は、時計史における重要なターニングポイントである。
その当時、時間を計測するクロノグラフは、時代遅れの機構とみなされていた。そこでクロノグラフを得意としていたブランドたちは、起死回生の策として“自動巻き化”を目指した。しかし複雑なクロノグラフ機構に、さらに自動巻き機構を組み込むのは至難の業。そこでタグ・ホイヤーは、他時計ブランドとの共同開発を進める。
様々な意見を出し合った結果、手巻き式クロノグラフに自動巻きモジュールを組み合わせるという方法が最適であるという結論に達し、1969年の3月3日に最新型の自動巻き式クロノグラフムーブメント「クロノマティック(キャリバー11)」と、このムーブメントを搭載した時計「モナコ」が発表されるのだった。
世界初の自動巻き式クロノグラフムーブメントである「クロノマティック」を搭載する時計として、「モナコ」は誕生した。当時から「モナコ」は、アヴァンギャルドなスタイルを持つ時計である。本来エレガントにまとめるのがセオリーである角形ケースを、30m防水(当時)というタフスペックをもつスポーティなデザインにまとめるというのは前例がないことだったのだ。また、自動巻もいわゆる“逆リューズ”(リューズが9時位置)である。しかし結果として、この大胆なデザインが多くの人の注目を集め、メディアでも絶賛される。かくして「モナコ」は、一躍人気モデルになるのだった。
この「モナコ」人気をさらに加速させたのが、モータースポーツとの深いつながりだった。
そもそもタグ・ホイヤーは、車に搭載するダッシュボード計器で名声を築いたブランドであり、レーサーとの親交も深かった。スイス出身のF1レーサー、ジョー・シフェールとはアンバサダー契約を結んでいたのだが、彼はとある映画のアドバイザーも担当していた。
それこそがレース映画の金字塔である『栄光のル・マン』であり、名優スティーブ・マックイーンが、劇中でモナコを着用することになったのだ。“バッドボーイ”でもあった彼の生き様とアヴァンギャルドなモナコのスタイルが組み合うことで、時計はさらに魅力を増していく。ライフスタイルを表現する時計としての地位を確立したことで、50年たった現在でも価値を全く失っていない。
モナコのアバンギャルドなスタイルは、遊びを大切にする、まだまだ勢いのある大人に似合う。また、歴史と蘊蓄を備えたモナコであれば、下心を隠すことができないオヤジの“アク抜き”としての機能も果たし、ほどよく知的なエッセンスも与えてくれる。つまりは、ゴルフをライフスタイルの一つとして楽しむ、ブルーダーのための時計でもあるのだ。
[ TAG HEUER MONACO ANTIQUE WATCHES ]歴史的アーカイブが語るモナコの偉大な功績
近年の時計業界では、復刻時計が作られるとオリジナルモデルも人気を集める現象が起きている。それは「モナコ」でも同じ状況なのだが、他モデルと違うのは、1969年に誕生したオリジナルモデルのスタイルを継承しているため、どの時代のモデルも人気が高く、いつの時代でもアバンギャルドな魅力を存分に味わえるのだ。その証拠に、老舗時計オークションでも、様々なモデルが高額落札されている。
モナコのヴィンテージピースを紹介しよう。どの時代も基本スタイルが変わらないからこそ、ディテールに違いがより明確になる。それがモナコの楽しみ方なのだ。
[ TAG HEUER MONACO 50TH ANNIVERSARY WATCHES ]モナコ50周年で加わった新たな仲間達
変わらない魅力を持つモナコだからこそ、50周年記念モデルでは他にはないユニークな仕掛けを取り入れた。モナコが駆け抜けたそれぞれの時代に合わせて、ダイヤルをデザインするのだ。今後11月には第4弾が発表され、年内に合計5本の50周年記念モデルが発表される。
第1弾 タグ・ホイヤー「モナコ 1969–1979 リミテッドモデル」
「モナコ」限定モデルの第1弾となるこちらのタイムピースは、F1モナコグランプリを開催中のモナコ公国で2019年5月24日に発表された。1969年から1979年までがテーマで、カウンターカルチャー全盛期の時代背景に合わせて、アースカラーやサイケデリックなパターンをイメージしたグリーン系のダイヤルが採用されている。(完売)
第2弾 タグ・ホイヤー「モナコ 1979–1989 リミテッドモデル」
1979年から1989年がテーマ。セナ・プロ時代に代表されるようなモータースポーツ全盛期だったことをイメージし、情熱が漲るレッドアズラージュダイヤルを採用。スティーブ・マックイーン主演の映画「栄光のル・マン」の舞台であるフランスのル・マンで発表。(完売)
第3弾 タグ・ホイヤー「モナコ 1989–1999 リミテッドモデル」
1989年から1999年がテーマで、工業デザインやコンピュータゲームなどをイメージしたソリッドなグレーダイヤルとなっている。グレーのグレインダイヤルに、レッドのエレメントがアクセントになったデザインで、ダイヤルにはきめ細かなロジウムコーティングが施され、今作の発表は、ニューヨークで行なわれた。
- SPEC【各モナコ リミテッドモデル】
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- ケースサイズ:39㎜×39㎜
- ケース素材:ステンレススティールケース
- ムーブメント:キャリバー11(自動巻き)
- パワーリザーブ:約40時間
- 防水性:100M防水
- 価格:¥705,000(税抜)
- 生産本数は各169本で、すべて完売。
Selected BY Hirokuni Toga & Tetsuo Shinoda
スーパーバイザー戸賀が選ぶ2019 現行モナコ
タグ・ホイヤー「モナコ キャリバー11 クロノグラフ」
「メンズクラブ別注モデルのベースにした原点モデル」戸賀
1969年に誕生した初代モナコの特徴である、ブルーダイヤルや逆リューズ、インデックスデザインなどを継承しつつ、防水性能を100mにアップさせるなど現代的に進化した。「一般的に、原点モデルは限定発売されることが多いため入手困難。しかしモナコの場合はレギュラーモデルなので手に入れやすい。それってすごい事ですよ。メンズクラブ編集長時代にタグ・ホイヤーとのコラボで、カーキグリーンモデルを製作したのですが、そちらも原点モデルをベースとしました。逆リューズという独特のフォルムのせいか、服も選ばないし、エレガントで男らしく見えます」と戸賀。
- SPECスペック
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- ケースサイズ:39㎜×39㎜
- ケース素材:ステンレススティールケース
- ムーブメント:キャリバー11(自動巻き)
- パワーリザーブ:約40時間
- 防水性:100M防水
- 価格:¥630,000(税抜)
タグ・ホイヤー「ホイヤー モナコ キャリバー11 クロノグラフガルフエディション」
「車好きの憧れがここに詰まっている」戸賀
映画「栄光のル・マン」にて、スティーブ・マックイーン演じるマイケル・ディレイニーがドライブしていたポルシェ20番は、ガルフカラーと呼ばれる水色とオレンジ色のストライプで塗装されていた。このカラーリングをダイヤルに取り入れたのがこのモデル。華やかなルックスだが、モナコは歴史と蘊蓄を備えているので、腕元に知的なエッセンスを与えてくれるのだ。「昔も今も、ガルフカラーはレース界で大人気。車好きにとっては最強の組み合わせじゃないかな」と戸賀。
- SPECスペック
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- ケースサイズ:39㎜×39㎜
- ケース素材:ステンレススティールケース
- ムーブメント:キャリバー11(自動巻き)
- パワーリザーブ:約40時間
- 防水性:100M防水
- 価格:¥630,000(税抜)
「モダナイズ化された最新版が好みです!」篠田
3時位置にリューズがあり、バーインデックスは標準型という“定番系モナコ”。紺碧の地中海を思わせるブルーダイヤルなどオリジナルのスタイルを継承しつつ、全体をモダンにまとめている。「モナコは逆リューズモデルの人気が高いのですが、そればかりに見慣れてしまったせいなのか、逆に3時位置リューズのモダンな雰囲気が気になり始めた。限定モデルも良いのですが、ここまで完成度が高い定番モデルが揃っている時計は珍しい。選択肢が多いのも、モナコの魅力なのです」と篠田氏。
- SPECスペック
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- ケースサイズ:39㎜×39㎜
- ケース素材:ステンレススティールケース
- ムーブメント:キャリバー12(自動巻き)
- パワーリザーブ:約40時間
- 防水性:100M防水
- 価格:¥575,000(税抜)
- Photographer : Kouki Saotome
- Text : Tetsuo Shinoda
- Direction : Keiichi Moritani
お問い合わせ先
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タグ・ホイヤー TEL.03-3263-9607