
最近はあまり使われないが、クルマなどを表現する言葉に「羊の皮を被った狼」がある。一見するとごく当たり前の、ありふれたデザインの大衆車。だがその中身は別物だ。エンジンやボディ剛性、足回りはスポーツカー並みの性能を備えている。そんな実力を秘めたクルマのことだ。
<関連記事>25年目の進化。シャネル「J12 BLEU」がまとう、深く静かなブルー
時計の世界にも、外観からは想像できない性能を秘めたモデルが存在する。今回紹介するボール ウォッチの定番モデル「マーベライト クロノメーター 40」は、まさにそんな一本である。
ボール ウォッチは、アメリカが鉄道王国だった19世紀に誕生した時計ブランドだ。精度へのこだわりは、創設者で時計商だったウエブ・クレイグ・ボール(1847〜1922)が鉄道時計の精度基準を定めた人物だったことに由来する。

1891年、オハイオ州サンダスキー付近で、レイクショア&ミシガン・サザン鉄道の列車正面衝突事故が発生した。運転士の時計の遅れが大きな原因だった。事故の後、クリーブランドで時計店を営んでいたボールは鉄道時計の検定・監督官(Chief Time Inspector)に任命された。
鉄道員が携行する懐中時計に対し、厳格な規格と定期検査制度を導入した。標準時システムとともに運用され、米国中の時計産業の品質基準を築いた。懐中時計の時代、アメリカはこの制度のもとで世界有数の時計王国としての地位を確立した。
マーベライト クロノメーター 40は、一見してごく普通のスタンダードウォッチに見える。しかし、その内部には高い技術が詰め込まれている。
ケースとブレスレットには、ステンレススティールの中でも卓越した耐食性と美しさを持つ904Lを採用した。ムーブメントはスイスのクロノメーター検定協会(COSC)の精度試験をパスしており、日差−4秒〜+6秒以内という高精度を誇る。
さらに、このムーブメントをミューメタル製のインナーケースに収めることで、約8万A/mという高い耐磁性能を実現した。加えて5000Gs、つまり瞬間的に5000Gの加速度がかかる衝撃にも耐える耐衝撃構造も備える。ねじ込み式リュウズの採用により、防水性能は100mを確保した。

放射性トリチウムガスを封入した微細なガラス管を用いた自発光システムで、針やインデックスに組み込まれている。光を蓄える必要がないため、完全な暗闇の中でも常に視認性を保ち、時刻をはっきりと読み取ることができる。
文字盤は落ち着いた上品なゴールドカラー。控えめで端正な外観の中に、精度、耐磁性、耐衝撃性、視認性といった実用時計としての性能が備わる。これだけのスペックを備えながら、価格は40万円台前半に抑えられている。まさに「羊の皮を被った狼」と呼びたくなる一本だ。

Ball Watch / ボール ウォッチ
エンジニア Ⅲ マーベライト クロノメーター 40 Ref. NM9026C-S6CJ-GO 価格:38万5000円(税込)
※2026年3月23日より価格改定予定 新価格:41万8000円(税込)
- SPEC
-
- ケース径:40 mm
- ケース厚:13.2mm 904L SSケース&ブレスレット、自動巻き、パワーリザーブ約42時間、防水性能:10気圧(100m)
お問い合わせ先
- ボール ウォッチ・ジャパン株式会社 TEL : 03-3221-7807
Text : Yasuhito Shibuya








