旅する写心 〜Wonderful World

桜が咲いたコース撮影のため
東へ西へと飛び回る。
僕にとってはマスターズ期間と重なり
開花時期で撮れたり撮れなかったり。
最近では地球温暖化の影響なのか
マスターズ前に撮れることが
多くなってきた。

日の出前にコースに到着するため
午前3時に起きて天気をチェック。
その日は「嘘でしょ?」と思うほどの
ざあざあ降りの雨だった。
予報は晴れだったのにと
お天気キャスターの顔を思い出す。

迷った挙句にとりあえず
東京ゴルフ倶楽部に向けて出発。
まだ辺りは真っ暗のなか
ワイパーは最速で仕事中。
私の心模様は乱れていた。

埼玉県に入り雨がやむと
前方に大きな満月が顔を出した。
バックミラーで東の空を見ると
ブルーの中に赤みが混じっている。
アクセルを踏む足に力が入った。

コースに到着すると
慌ただしく準備を始める。
気温が高いなか激しい雨が降ったせいで
コースには霧が立ち込めていた。
10番グリーン奥に満月が沈む。
夢中でシャッターを切った。
そして振り返って東の空を見ると
一年に一度、いや十年に一度
カメラマンを驚かせるような
想像を絶する美しい世界が広がっていた。

Wooooow!!
東京ゴルフ倶楽部を撮り始めてから一年。
刹那の光景に感謝。
悪いことばかりじゃないナ、世の中は。

東京ゴルフ倶楽部
埼玉県狭山市

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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