シャフトの性能や選び方に関心を持つゴルファーが増え続けている。自分のパワーや最新技術のヘッド性能を最大限に生かせるかどうかは、グリップとヘッドをつなぐ“架け橋”のシャフト性能次第なので当然だろう。シャフトの知識に自信ある? 「N.S.PRO」ブランドで知られる総合シャフトメーカー・日本シャフト株式会社の担当者に、今回はさまざまな質問をぶつけてみた。このQ&Aを読めば、今後のシャフト選びやスコア向上に役立つはずだ。
Q シャフトが変わると何が変わる? 飛距離 or 方向性?
どちらも変わります! ゴルフではスイングしたときに、ヘッドの芯でボールをとらえることが大切なのですが、シャフトの違いによって芯に当てやすさが変わります。ですから、自分のスイングに合っているシャフトを使えば、飛距離と方向性の両方が良くなります。“方向性重視型”なんて言われ方をしているシャフトもありますが、自分に合っているシャフトなら方向性が良くなるのは当たり前なんですよ。
Q どうしてシャフトの種類がこんなにたくさんあるのか?
千差万別さまざまなゴルファーがいるからです。パワー、スイングタイプ、求めるフィーリングや弾道など、いろんなゴルファーに合うように、多種類のシャフトが展開されています。洋服にサイズや種類がたくさん用意されているのと同じだと思ってください。
Q シャフトにトレンドってある?
ヘッド性能のほうにトレンドがあって、最新のヘッドに合うようなシャフトを開発することがありますね。例を挙げると、日本シャフトの「N.S.PRO 950GH neo」は、今どきのストロングロフト化された大型ヘッドの飛び系アイアンに合うように開発されたシャフトです。また、ツアー選手たちのプレースタイルが変わることで、彼らの求める性能のシャフトを開発することもあります。日本シャフトだと「MODUS³」シリーズがそうですね。
「N.S.PRO MODUS³ HYBRID」は、パワーのあるPGAツアー選手たちが使いやすいユーティリティ用シャフトとして開発されたモデル。ヘッドスピードが速めのアマチュアからも高評価を受けている
Q 純正(メーカー標準)シャフトとカスタムシャフトは、なにが違う?
純正シャフトは、クラブメーカーがそのクラブの想定ユーザーやヘッド性能に合うように作っているシャフトです。シャフトメーカーがクラブメーカーから依頼を受けて純正シャフトの製造をすることが多いのですが、クラブメーカーのニーズに合わせて仕上げています。
Q シャフトは、使い続けると劣化する?
スチールシャフトに関しては、月イチゴルファーなら10年ぐらいは性能的に問題ありません。スチールの内側はメッキ処理されていないので多少のサビは発生しますが、濡れたままにしないなど、普通に手入れをしていれば大丈夫です。週イチのゴルファーの場合だと、シャフトよりも先にヘッドが摩耗してクラブを買い替えることになると思います。それよりも注意してほしいのは夏場の車中でのクラブ保管です。これはカーボンシャフトも同じなのですが、シャフトが傷むというよりは高熱でヘッドとの接着が弱くなり、ヘッド抜けなどの問題が発する場合があります。
Q 飛ばしたいなら、シャフトを軽量にしたほうがいい?
シャフト重量だけを変えるのは、あまりオススメしません。最初は飛びますが、すぐに元の飛距離に戻ってしまうと思います。シャフトを軽くするなら長尺化して、体感の重さを従来通りに保っておくのが得策です。同じ長さでもっと飛ばしたいなら、もっとビュンビュン振れるようにスイングウェイトを2ポイントぐらい落としてみるといいでしょう。
Q プロが使っているシャフトのセッティングは、アマチュアの参考になる?
なります! プロはヘッドスピードが速く、ハードスペックなシャフトを使っているのでアマチュアはまったく同じにできません。けれど、クラブセッティング全体でのシャフトの選び方、シャフト重量のフローについては大いに参考にできると思います。
Q 自分に合うシャフトの選び方は?
まず、試打してみてほしいです。自分自身で打ってみて、振りやすく、ボールに当てやすいと思えるものが自分に合うシャフトです。振りやすいというのは、硬さや重さを感じることなく振り切れるという意味。そういうシャフトは、重さやしなり感も合っているはずです。ただし、振りやすさ重視で選ぶと、軽すぎたり、軟らかすぎるアンダースペックを選ぶ傾向になりがち。重さと硬さは、少し背伸びしたスペックも試して頂くと、適正スペックを見つけやすいと思います。
Q よくある試打会って、うまく打てない初心者が行ってもいい?
ぜひ来てください! そして打ってください! たとえ初心者でもいろいろ打ち比べると、振りやすさや打ちやすさの違いが分かるはずです。とくに初心者の場合は、ミスショットを自分のスイングや調子のせいだと思い込みがち。自分に合わないシャフトを使って練習を続けてしまうと、上達を阻害させてしまうおそれもあります。初心者の頃から、シャフトの違いによって当てやすさの感覚が違うことを知っておいてほしいです。シャフトメーカーの試打会では、その場で商品を売りつけられたりすることもありません。安心して来てください。
Q 先調子、中調子、元調子、自分にはどれがいいのかよく分からない
自分に合うタイプを知りたい場合は、真逆のしなり特性を持つ「手元調子のシャフト」と「先調子のシャフト」を打ち比べてみるのがいいと思います。日本シャフトのモデルでいうと、「レジオ フォーミュラ B」と「レジオ フォーミュラ M」を打ち比べて、方向性は度外視してどちらがミートさせやすいかを試してみてください。その際には、しなり特性を感じやすい軽めで軟らかめのスペックを使うのがオススメです。アイアン用シャフトだとしなりを感じづらいので、ドライバー用シャフトで判断するのがいいですね。
ウッド用カーボン「レジオ フォーミュラ」のしなり特性は、「MODUS³」シリーズの各アイアン用スチールシャフトとマッチングさせやすい。昨年発売されたプラス表記が付く「レジオ フォーミュラ B+」と「レジオ フォーミュラ M+」は、フィーリングもスチールシャフトに近づけたモデルとなっている
Q シャフトを変えるタイミングって?
うまく打てなくなったり、当てづらいと感じたらシャフトを見直してほしいです。ゴルフ経験を重ねていくと、ゴルフスタイルやスキルレベルが変わり、加齢によってヘッドスピードも変わってきます。3年に1回ぐらいは、シャフトのチョイスを見直すのがオススメですね。
Q シャフトの重さは、ドライバーからの流れで決める? アイアンから?
現代のドライバーは、ヘッドの大きさや長さが他のクラブとは大きく異なるエクストラなクラブともいえます。ですから、自分に合うアイアンの適正重量を先に決めておいて、そこから長いクラブになるほどシャフト重量を軽く、短いクラブになるほどシャフト重量を重くセッティングします。目安としては、クラブの長さが0.5インチ長くなるごとにシャフト重量を10グラム軽くするといいですね。
Q スライスに悩んでいるなら、球のつかまりがいい先調子シャフトを使うべき?
そうとも限りません。左に飛び出してから右に曲がるスライスが持ち球であれば、先調子のシャフトによって球筋が改善されることもあります。ですが、まっすぐ飛び出して右に曲がるスライスやプッシュしてしまう人の場合は、スイングの切り返しの間が取りやすい元調子のほうがうまく打てる可能性があります。
Q スチールシャフトにステップ(段)が付いているのは、なぜ?
しなり特性を出すためです。カーボンシャフトは、カーボンシートの積層によってしなり特性を出しますが、スチールは1枚の板からできているので、それができません。そのために段差によってしなり特性を生み出しています。実は、日本シャフトではスチールの肉厚をコントロールすることによってしなり特性を出せるため、ステップのないスチールシャフトも製造可能です。けれど、ステップと肉厚調整の両方を取り入れたほうがバリエーションを生み出しやすいというメリットがあります。余談ですが、他社ではできないような緻密な肉厚調整をできるのも日本シャフトの特長なんですよ。
Q プロが使用するアイアンは、いまだにスチールシャフトが主流なのはどうして?
スチールシャフトには、つぶれ(扁平)が起こりやすい特性があります。そのおかげで弾道やスピンコントロールをしやすいのが長所です。球を上げる、つかまえる、まっすぐに打つなどの目的だけであれば、ワンパターンで動いてくれるカーボンシャフトのほうが適しているでしょう。ですが、リリースのタイミングやヘッドの入れ方などを変えて、プレーヤーが意図したとおりに動かしやすいのはスチールシャフトのほうです。それゆえに多くのプロがスチールシャフトを好んで使っています。
Q シャフトの番手ずらしって、どれぐらい効果がある?
番手ずらしというのは、番手別に設計されているシャフトをあえて別の番手に装着する方法です。例えば、4番アイアン用に設計されているシャフトを5番アイアンに装着すると、通常よりもシャフトフレックスを少し軟らかく仕上げることができます。この方法を逆に使えば、少し硬く仕上げることも可能です。日本シャフトの製品だと、1番手ずらすことで1/3フレックスぐらい硬さが違ってきます。フレックスをSとRで迷っているけど、その間の軟らかさのシャフトを使いたい、といった場合には有効な手段です。
Q アイアンとウェッジでは、シャフトを変えるべき?
結論から言うと、変えてもいいし、変えなくてもいいです。グリーン周りでの使用が多いウェッジはフルショットすることが少なく、ヘッドスピードも遅くなります。そのためアイアンショットと同じしなり感やフィーリングを得るために、ウェッジだけは重めで軟らかめのシャフトを好むプロもいます。日本シャフトには「N.S.PRO MODUS³ WEDGE」というウェッジ専用シャフトもラインナップしています。機会があれば、ぜひ試してみてください。
「N.S.PRO MODUS³ WEDGE」は、アプローチでの方向性とスピン量を安定させるように専用設計したシャフト。日本シャフト独自の熱処理技術「MHT」を使うことでフィーリングも向上させている
Q 鉄素材のスチールシャフトは、昔からあまり進化がないのでは?
それがけっこうあるんです。日本シャフトは製品精度に自信を持っているだけでなく、他社にはない独自の製造テクノロジーも持っています。「MHTテクノロジー」(マルチ・ヒート・トリートメントテクノロジー)という技術なのですが、特殊な熱処理によってスチールシャフトの一部分だけに粘りを持たせたり、弾き感を出すことが可能になっています。カーボンシャフトの場合だと、弾性率の異なるシートを使うことでその効果が得られますが、スチールシャフトでも「MHTテクノロジー」によって同じ効果が得られるのです。この技術は、「N.S.PRO MODUS³ SYSTEM3 TOUR 125」などですでに使われています。日本シャフトのスチールは、いろんな可能性とバリエーションをまだまだ持っているんですよ。
Q スチールシャフトでも、モデルによって弾道が変わる?
変わります! 例えば、「N.S.PRO 950GH」と「N.S.PRO 950GH neo」を同条件で打ち比べた場合、後者は打ち出し角が約1度高くなり、スピン量は550回転多くなります。実際に両者の弾道を見比べると違いがはっきりと分かりますし、後者のほうがピタリとグリーンに止められる高い球になります。
「N.S.PRO 950GH neo」は、近年流行している飛び系アイアンに対応すべく開発されたシャフト。ストロングロフトのアイアンでも高弾道を打ちやすくなっている
Q 日本シャフトの読み方は、ニホンシャフト? ニッポンシャフト?
ニッポンシャフトです 。もともと日本シャフトは、日本発条(ニッポンハツジョウ)という金属製バネ製造のメーカーの子会社。1959年に開催された「ゴルフワールドカップ」を見ていた日本発条の当時の社長が、しなってしなり戻るゴルフシャフトはウチが作っているバネと同じだ! と気付いたことがシャフトを作り始めたきっかけです。
日本シャフトは1999年に軽量スチールという新たなカテゴリーのシャフトを生み出し、アマチュアから高い評価を受けた。2011年からはツアープロが求める性能の新時代のスチールシャフトとして「MODUS³」シリーズをリリース。当初、プロトタイプをツアーに持ちこんだ際にはスチールにロゴを印刷する技術がなく、このようなステッカーで対応していたとか
Q 日本シャフトって、日本製?
もちろんです。シャフトの材料から製造機器に至るまで、オール・メイド・イン・ジャパン。すべてのシャフトが長野県駒ヶ根市にある自社工場で製造されています。
日本シャフトの製品は、自社工場で一貫生産することで高品質が保たれている。製品精度の高さはピカイチ!
Q 日本シャフトのいいところは?
スチールとカーボンの両方を作っている総合シャフトメーカーであるところです。もとはスチールシャフト専業メーカーでしたが、ウッド用のカーボンシャフトを開発しはじめたことによって、従来のスチールシャフトにはなかった発想や応用ができるようにもなりました。スチールとカーボンのハイブリッドシャフト「N.S.PRO MODUS³ HYBRID」も、両方の素材のいいところを知っているからこそ開発できたモデルです。
世界的に見ても、スチールシャフトとカーボンシャフトの両方を自社製造しているメーカーは数少ない
Q 日本シャフトの製品は、精度が高いというのは本当?
シャフトの製品精度と品質には自信を持っています! ありがたいことにPGAツアーでも使用率が高まっていて、それはひとえにプレーヤーがシャフト性能を気に入って使ってくれているからなのですが、別の要因としてクラフトマンからの評判がいいという理由もあります。いつでも同じ品質のシャフトでクラブを組めるため、余計なクラブ調整の手間が掛からないのです。日本シャフトの製品であれば、現場でのプレーヤーの急な要望にも対応しやすいと聞いています。
一見するとただの棒のようだが、知れば知るほど深いシャフトの世界。今回のQ&Aから分かるように、シャフトはミート率、飛距離、方向性、弾道、フィーリングに大きな影響を与える。その重要性を理解し、正しい知識で、自分に合うシャフトを探し出したい。まずは、日本シャフトの栗原さんが勧めるように試打会などに参加し、シャフトの違いによる打ちやすさの違いを体感することからだろう。きっとそこが、最適なシャフト探しの旅のスタート地点になる。
- 協力
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日本シャフト株式会社 栗原一郎さん
スチールとカーボンの両方を製造する総合シャフトメーカーである日本シャフトに勤務。
現在の使用シャフトは「N.S.PRO Regio Formula B+ TYPE65 X」
企画開発とマーケティングを長年担当し、フィッティグやモデル選びにも詳しいシャフトの専門家
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- STAFFスタッフ
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- Photo
- Kenji Okazaki
- Illust
- Kengo Gomi
- Text
- Hirotaka Tsuruhara
- Direction
- Ryotaro Ikeda
- Edit
- Risako Okano
お問い合わせ先
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日本シャフト TEL.045-782-2562
https://nipponshaft.co.jp/