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一人でするドライブのように、読書で自分の心と向き合う時間を

友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか? 現実と少し距離を置く“小説の世界”への入り口は、時に不意の方が新鮮で心踊りそう。東京・六本木の本屋「文喫 六本木」のブックディレクター・及川貴子さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。

「女のいない男たち」/村上春樹

今回のテーマは、ドライブシーンが印象的な小説です。どの地点でもない流れる景色の中は、考えを整理するのに向きそうです。車を走らせながら考え、以前とは少しだけ違う自分になって、また日常に戻っていく…そんな物語のひとつが、村上春樹の短編「ドライブ・マイ・カー」です。作品に登場する寡黙で感情を見せない女性ドライバーの滑らかな運転は、いつの間にか主人公の思索を深めていきます。

―――すべてはあまりに滑らかで、秘密めいていた。耳に届くエンジンの回転音が僅かに変化するだけだ。行き来する虫の羽ばたきのように。それは近づき、そして遠ざかる――

――本文より

いつでも日常のどこでもない場所に行って考えることができるという点で、読書とドライブは似ているように思います。ふらりと出かけて自分の心の動きを眺めてみると、慌ただしい日々の中で埋もれていた感情に気が付くかもしれません。

同作品を含む短編集は、タイトル通り『女のいない男たち』という一貫したテーマを持ち、濱口竜介監督による映画「ドライブ・マイ・カー」は、他短編作品の内容を織り交ぜて構成されています。気になった方はぜひ全編を読んでみてください。

「女のいない男たち」村上春樹(文芸春秋)/¥748(税込)

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COOPERATION

文喫 六本木 ブックディレクター 及川貴子

2018年日本出版販売入社。2021年4月より文喫 六本木のブックディレクターとして、企画選書や展示イベント企画、本のある空間のプロデュースなどを行う。

Edit : Hiroto Goda

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