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心揺さぶられる!傑作ゴルフ映画‐前編‐

最近、忙しくてゴルフの練習に行けていない…なんとなくモチベーションが上がらない…そんな時にはゴルフをテーマにした映画を観て気分転換してみませんか。映画ライターの圷 滋夫(あくつしげお)さんに2本の傑作映画を選んでいただきました。本記事では、前編と後編に分けて紹介します。

スポーツは映画の題材として相性が良く、昔から多くの作品が撮られてきました。中でもボクシングやテニスなどの対戦型スポーツは個人と個人が対峙する構図が明快で、相手との心理戦や決着がつく瞬間のカタルシスを表現しやすいでしょう。また野球やバスケットボールなどのチーム・スポーツであれば、ライバル同士の対抗心や仲間との絆など熱い要素も加わり、よりエンタメ度が増していきます。

しかしゴルフとなると、対戦相手と一緒にコースは回るものの、順番に一人ずつプレーするので対抗する構図が絵的には見えにくく、どちらかと言えば自分との闘いという側面が大きいのではないでしょうか。それでも本数は少ないながら、ゴルフを題材に描いた映画もいくつかあります。

『バガー・ヴァンスの伝説 』(2001年)

名優ロバート・レッドフォードがメガホンを取った『バガー・ヴァンスの伝説』は、戦争で受けたトラウマによって復帰できなくなった天才ゴルファーのジュナと、突然彼の前に現れた不思議なキャディのバガー・ヴァンスとの交流を描きます。物語はフィクションですが、ゴルフファンにとっては実在する伝説の名選手ボビー・ジョーンズとウォルター・ヘーゲンが、キャラの立った登場人物として活躍する展開にワクワクすることでしょう。そしてこの2人にジュナを加えた3人による手に汗握る白熱の勝負は、ゴルフファンでなくとも興奮させられるはずです。また、この試合を仕組んだ地元の名士の娘でジュナの元恋人だったアデールとの愛の行方も気になるところです。

実は本作の真価は、勝負や愛の行方を追うことではありません。第一次世界大戦から世界経済を陥れた大恐慌まで、社会を覆う深刻な不安の中で生きる術を見失ってしまったジュナが、いかにして自分のスイング(=人生)を取り戻すかを、ゴルフの勝負に重ねて描いているのです。そのための道標になるのがバガー・ヴァンスのスピリチュアルな存在で、彼がジュナに語るユーモアに溢れ、示唆に富んだ言葉は哲学的でもあって、それはむしろ様々な面で不安に満ちた今を生きる私たちの心を、強く揺さぶることでしょう。

ロバート・レッドフォードは数多くの名作に主演し、監督としてもデビュー作『普通の人々』(80)でアカデミー賞監督賞と作品賞を受賞した名匠です。本作でも水と緑が豊かで風光明媚なアメリカ南部の情景を美しい光と影の中に捉え、スポーツの勝負という娯楽性と人間の内面に迫る芸術性を、見事に融合させています。また今や名実ともに押しも押されもせぬハリウッド俳優となったマット・デイモン(ジュナ)、ウィル・スミス(バガー・ヴァンス)、シャーリーズ・セロン(アデール)の、四半世紀前の若々しい姿を堪能できるのも、本作の楽しみの一つでしょう。

『バガー・ヴァンスの伝説 』デジタル配信中(購入/レンタル) © 2024 20th Century Studios.

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圷 滋夫(あくつ・しげお)/映画・音楽ライター

1962年10月3日生まれ。映画配給会社の宣伝担当として20年以上勤務。その後フリーランスになり、主に映画と音楽について執筆するライターとして活動。鑑賞マニアで、演劇や落語、現代美術、コンテンポラリーダンス、サッカーなどにも通じている。

Edit : Yu Sakamoto

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