旅する写心~Long Train Runnin’

約125年前、世界的に有名な
パインハースト・リゾートが
なぜこの地に誕生したのか。
際立って景色が良いわけではなく、
大都市圏に隣接しているわけでもなく、
一般的には面白みのない、
人里離れた土地といえるだろう。

この辺一帯はサンド・ヒルと呼ばれる砂地。
食物を栽培するには適していないが、
長葉松が生息し、空気中のオゾンが多く、
脳と神経が疲れた人々には、
癒しの場所として愛された。
19世紀後半、鉄道が北から南に伸び
急速に注目されるようになった。
そしてこの砂地がゴルフ場の造成には最適で
ゴルフリゾートとして発展していった。
この地に誕生したのは
偶然ではなく必然だったのだ。

日本のゴルフの歴史においても
パインハーストは重要な道標となった。
1902年、日本人として
初めてゴルフをしたと言われている一人、
新井領一郎はここでのゴルフを楽しんだ。
1924年には、赤星六郎が
ここで行われた春季大学競技会で優勝した。
1932年、宮本留吉がボビー・ジョーンズとの
エキシビションマッチで勝利した。
列車での旅を楽しみながらゴルフをした時代。
あの特別な空気はこうして作られたのだ。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Clubほか、国内数々のオフィシャルフォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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