旅する写心~Mustang Sally

PGAツアーは今年から
年をまたいだ日程ではなく、
従来の年初始まりのスケジュールに戻った。
さらに“シグネチャー大会”と呼ばれる
トーナメントが設けられ、
「AT&Tペブルビーチプロアマ」も加わった。

この大会には色々な思い出がある。
PGAツアーの撮影を始めた1987年頃は
実はまだクルマの免許を持っておらず、
旅するのに苦労した。
そして一念発起して免許を取得。
挑んだ最初の大会がペブルビーチだった。

当時はもちろんホームページがなく、
予約には直接電話する手段しかなかった。
これが一苦労。
通じたかどうか不安なまま、
サンフランシスコ空港の
レンタカー会社に行った。
用意されたクルマは
黄色のマスタング マッハ1。

なぜこのクルマなの?と思いながらも、
文句も言えず恐る恐るハンドルを握った。
エンジンをかけるとびっくりするほどの爆音。
フロントは恐ろしく長く、視界がめっちゃ悪い。
嫌な汗をたらたらかきながら、ようやく出発。
先輩からアメリカの道は
IQが低い人でも運転できると、
変な励ましを思い出し、
憧れのペブルビーチを目指した。

ハイウェイを降りペブルビーチのゲートで
セキュリティから行き先を聞かれた。
「I am Media」
初めてのペブルビーチは
すっかりハリウッドスター気分。
まさかその後、自分がペブルビーチの
オフィシャルフォトグラファーになるとはね。
人生は不思議だらけ。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Clubほか、国内数々のオフィシャルフォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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