旅する写心~You Are The Man

 

1927年に始まったライダーカップ。
当初はアメリカ対イギリスの戦いだった。
しかしアメリカの圧倒的強さが続き、
1973年にウォーカーカップ同様、
アイルランドとの共同チームとなったが
屈辱の3連敗を喫した。

その頃、欧州ツアーに一人のスターが誕生した。
スペイン出身のセベ・バレステロスだ。
76年に欧州ツアーで初優勝し、全英オープン2位。
78年にはアメリカPGAツアーでも初優勝を果たし
79年についに全英オープンを制した。

ライダーカップも
この若者を入れたチームで戦うほか
アメリカに対抗する術がなかった。
だが、この欧州チームの結成で、
瞬く間にライダーカップの人気が復活した。
セベの登場によりこれまでゴルフ後進国であった
ドイツ、イタリア、フランス、スウェーデンなど
欧州各地から強い選手が現れ始めた。

そして当然のごとく問題となったのは
開催地の問題だった。
欧州チームが結成されても
それまで開催地はアメリカとイギリスのまま。
そこで、「欧州各地を回るべきだ !」
セベの一言が大きく時代を変えた。

1997年、ついにスペイン・バルデラマで
ライダーカップが開催された。
もちろんキャプテンはセベ。
僕もこれは見ないわけにはいかないと
スペインに飛んだ。

ただでさえ盛り上がるライダーカップ。
この時の盛り上がりは尋常ではなかった。
タイガー・ウッズがマスターズを初制覇して
ライダーカップに初出場した年。

決着は最終日の最終マッチまでもつれ込んだ。
そして欧州ツアーが優勝。
セベは地元スペインの国民に
最高の試合を見せることができた。
ライダーカップが欧州を転戦する意味。
それをセベは「これなんだ」と分からせた。
今年いよいよイタリアで初開催される。
あれから四半世紀が過ぎた。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Clubほか、国内数々のオフィシャルフォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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